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#28 恋

 俺が恋? マリに?

 そりゃマリは可愛いから気に入ってるよ? でも恋って……


「それはないだろ」


「いいや、君は一丁前に恋してるんだよ」


 一丁前って言葉が少し上からな気がする。

 即否定しやがって……。


「お前に何がわかるんだよ」


「確かに僕は君じゃないから確定とは言えない。ただ君が普段のお気に入りと違う行動をしていることはわかっているんだよ」


「普段のお気に入りと違う行動?」


 その言葉が妙に胸に刺さって、口にだして復唱してしまう。


「まず、何故君はあの子たちと旅をしている?」


「それがマリの願いだったからだ」


「そこだ。これまでにそんなことなかったから正しいかはわからないけど、普段の君なら“それは無理”って断っていたはずだ」


「そうだとは限らないだろ」


「君も知っているだろう? 僕たち【貴神】は【信仰神】には敵わない。あの人たち自身は下界に干渉することはできないけれど、自分の子供たちを動かすことはできる」


 つまり全勢力を持って嫌いな奴を潰すことは可能なのだ。

 他神との戦争ゲームがあるからすぐにという訳には行けないが、準備をしっかりとすればその限りではない。


「そうだが、別に俺はコウスケの味方じゃない。マリを守っているだけだ」


「でもその子が勇者パーティーの(かなめ)になってしまったら? それはつまり勇者を守っていることと同じなんだよ。その時君はその子から離れることができる?」


「…………それは」


 もしそうなったらなったら離れるに決まってる、そう言おうとしたがその前にスピラが揚げ足を取ってきた。


「ほらすぐに答えられない。君はあの子を手放したくないって考えているんだ」


「……お気に入りだからだ」


「命よりも大事なお気に入り? なにそれ」


 「僕ら神々は結局みんな自己中なんだよ」そう前置きを置いてからスピラは言い放った。


「それはお気に入りの域を越えてるんじゃないかな」


 文法的には疑問系だが、その言葉に確定の雰囲気が混じっているのがわかった。


「そしてもう一つ。こっちの方が根拠になるんじゃない?」


 これ以上なにがあるのだ。


「君、我慢してるよ」


「そりゃそうだろ」


 俺は我慢しないとあの勇者パーティーにいることはできない。

 我慢していることは色々あるが……


「君が我慢していることを僕が洗い直してあげるよ」


「洗い直したからなんだって言うんだ」


 その言葉には答えず、スピラは指を一本立てる。


「一つ、実力。これは何故我慢しているんだい?」


「高い実力を見せると面倒なことになるからだ」


 スピラは2本目の指を立てて問いかける。


「二つ、正体。これは?」


「同じだ。俺の【貪欲】であいつらの“神”ネレフェクに対して敵意を抱いている。めんどくさい」


 なんだこんな感じか。

 ここからどうやって俺が恋をしている(かもしれない)ということに結びつけるんだか。


「君自分でわかってる?」


「なにがだ」


「あ、わかってないから教えてるんだった」


「だからなにがだ」


「君はどちらにも“面倒だから”と答えたけど、それは少し違う」


 なんで他人(ひと)の気持ちがわかるんだよ。

 本当に面倒だからだ。他意はない。

 それなのにスピラは話を進める。


「だって実力や正体を隠すほうが面倒くさい上にストレスが溜まるだろう?」


「いや、バラした方が面倒だろ。勇者とのいざこざとかさ」


「なんで君は勇者とのいざこざを想像しているんだい?」


「は?」


 いやだってバラしたら勇者が突っかかってくるだろ。

 コウスケのことだ。騙しただったり、マリに手を出しただったりしょうもない理由で殺しにかかって来るぐらいしそうだな。

 しかしスピラから出た言葉はそれ以前の話だった。


「いざこざが面倒なら逃げればいいじゃないか」


 唖然としているうちに「なのに」とスピラが続けた。


「君はそう言う思考に(いた)っていない。いつもの君なら思いついてるはずなのに思い浮かばなかった理由。それは君が【防護術士】ちゃんと離れ離れになるということを無意識に拒否したからじゃないのかい?」


「そんな……ことは……」


「しかもいざこざが嫌で【防護術士】ちゃんと離れたくないならその子だけを連れ出してしまえばいい。それさえ思いつかないのはその子に嫌われたくないからだよね?」


「いや、マリがついて来たがらないだろ」


「連れ出す口実なんていくらでも作れるよね」


 そうかもしれないが……連れ出すとマリが悲しんでしまうだろう。マリはあの2人に執着しているし……。

 あれ? マリが悲しむのを躊躇っている? これもマリが好きだから? いやいやお気に入りが悲しむのを嫌がるのは普通だ。


 そう考えている間にもスピラはラストスパートと言わんばかりの勢いで話しを続ける。


「それに君、欲まで我慢しているよね? いつもの君なら欲に関してはそんなに自重しないよ。食事だって自分が美味しく感じるように作るし、性欲だって手を出せるなら我慢なんてしないはずだよね」


 そういえばよくよく思い出すと今までお気に入りに欲で我慢したことは無かった気がする。


「しかも今回は相手と身体を自由にしていいと許可をもらっている。それなのに君は今日、わざわざここに来て他の欲を満たして暴走を抑えている。これはやっぱり契約上だけであの子に身体を差し出させることによって、君がその子に嫌われてしまうことを防ぐためだろう?」


 確かに契約は身体を自由にだった。何故俺は遠慮をしていたのだろう。

 嫌われたくないから?

 俺がマリに嫌われたくないから気遣っている?

 唸って考えるもののモヤモヤしてはっきりした回答が見つからない。


「いいかい? 今言ったことをまとめると、君は彼女を普通のお気に入りとは違う目で見ている。君は彼女を命よりも大切にしている。君は彼女と離れたくない。君は彼女に嫌われたくない」


 まとめたスピラは少し俺の方へ近づいてきた。


「ここまで根拠が揃っているんだ。君はまだ認めないのかい?」


「…………まだわからない」


 結局俺は逃げることにした。

 と言っても考えることを放棄するわけではない。

 今俺は他から見て恋をしている状況にあるらしい。

 確かにマリは好きだし大切だが、恋愛かと聞かれるとよくわからない。

 俺は前世でも恋人なんていなかったし、今世でも娼館にしか行ったことがない。

 恋愛経験がゼロなのだから今日だけで結論づけることはできない。

 ただ、マリが特別な存在というのは当てはまっている気がする。


 そんなこんなでそろそろコウスケ達のところへ戻る時間だ。


「ありがとよスピラ。じゃあ俺もういくわ」


「はいはい。まぁ相談なんていつでも乗るからね」


「じゃあ少し時期が早いけど、いつもの家にあるから持ってってくれて構わないぞ」


「ありがたくいただくよ。じゃあねー」


 俺はスピラに別れを告げ、家で遊んでいた眷属達にも声をかけてテレポートでコウスケのいるトウバラッチの人影のないところにテレポートした。

読んでいただきありがとうございます。

今回はどうでしたか?


投稿時間を見ていただくとわかるようにタメ書きが尽きました。

もしかしたら立て直すためにしばらくおやすみをいただくかも知れません。その時はご了承ください。


「面白い」「更新ガンバ」「続き読みたい」そう思ってくださった方は下のブックマークと評価ボタンをクリックお願いします。

これからもこの作品をよろしくお願いします。

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