#21 第一の町
マリと一晩越えてから3日が経ったが、特に問題もなく森の出口には今日中に出れるだろうという位置まで来ていた。
今コウスケたちはビッグスライムの群れと戦っている。俺と俺の眷属は見ているだけだが。
「............つまらん」
アドバイスをしたあとから今まで、マリとは一度も会話していない。
マリは自分の立場を守るべきだ。その判断は間違っていない。
しかし、そうなると今度は俺が孤独になる。まったく充実していない日々は俺の大きな欲求をさらに大きくしてくる。
だってご飯はみんなに合わせて低いレベルに作っているし、新しい発見とかの知的欲求を満たすものも、娯楽もほとんどない。
唯一の楽しみはフク、ハッチ、レイラの三匹と触れあっているときだけ。
こんなんじゃここにいる意味はない。
帰りたい。しかし約束はまもらなくては。でもこのままじゃ暴走してしまいそうだ。だけどあんなカッコつけてすぐに身体を貸してとマリに言うのは男としてダサい。
俺はどうすればいい? 満たせる欲はなんだ?
「――フェク。ネレフェク。聞いてるか? もう行くぞ?」
「ああ、すいません。考え事をしてました」
俺がそんなこと考えているうちに討伐完了したようだ。
目の前で遊んでいるフクたちにも声をかけてパーティーの一歩後ろをついて行く。
............俺は......何故こんな状態に陥っているのだろうか。
*
無事【木漏れ日の森】を出て、俺等はある町に入っていた。
いろんなところから自分の商品を勧める声や、値引き交渉の声が聞こえてくる。
「ここがトウバラッチか! 王都並みに賑わってるな」
「はい。確かにここの路上市場は観光名所の一つではありますが、この町は強く大人しい馬が沢山いるんです。これからの旅、馬車があった方が便利かと思いまして」
「なるほどね。確かに歩きじゃ何ヵ月かかるかわからないわね」
うん。俺もそれは良い案だと思う。
もし歩きじゃないといけないところでも、コウスケたちはアイテムボックスを使って重さを感じることなく持ち運べるからな。
「まずは宿でしょ? 早く行こ」
マリの言葉に全員が思い出したように歩き出す。
宿のことだが、実を言うと本来俺等には必要なかったのだ。なんせ国が召喚した勇者様だぞ? 本当ならそこに住む貴族やら領主やらの屋敷に無償で泊めて貰えるはずだった。
しかし勇者たっての「自分たちが勇者だからと、足止めされたり優遇されたりするのは嫌だ」という希望によって、コウスケが勇者だと言うことは極力バレないように旅をすることになったのだ。
なので貴族とかからの援助などは期待しない方がいい。宿においても、その他についても。
どうせコウスケは冒険者気分を味わいたかっただけなのだろう。楽できるところは楽して良いだろうに。
「ここ良くない?」
マリが止まったのは【子馬の居眠り亭】という食堂兼宿屋の前だった。
見た感じ外見はキレイにしてある。中は多少煩いい気もするが許容範囲内だろう。
「よし、じゃあ入るか」
コウスケが先人を切って、店の扉を開けて入る。
その後ろを俺等もついて行く。
すると何故かさっきまで騒がしかった店内はしん......と静まり返った。
そんな中コウスケは素知らぬ素振りで店のカウンターに近づいていく。
「こんにちは。宿は空いてますか?」
「は、はい!」
カウンター前で給仕をしていたキレイな女性に話しかけるコウスケ。
カウンターにはちゃんと宿をとる係であろうふくよかな女性だっていたのに。ホントこいつこういうところあるよな。お前もう二人もいるだろ。スゲー美人たちがさ。
そして給仕の娘もまんざらでもないように頬を染めるんじゃない。
そいつ勇者だから魅了の効果持ってますよー! と声を大にして叫んでやりたいぐらいだ。まったく。
「宿ですね! 部屋はどうしますか? 1人部屋から3人部屋までありますよ!」
「......四人部屋はないのかい?」
「すいません。四人部屋はただいま満室です」
「そうか。じゃあどうしよう......」
おい別に3、2部屋で良いじゃねぇか。
そんなに俺と一緒が嫌なのか? それとも恋人たちと居れないのが嫌なのか? もしくは俺がお前のパーティーメンバーと寝ることが嫌なのか?
最悪俺だけ他に行きますよと言おうとしたが、その前にマリが言葉を発した。
「私がネレフェクと一緒の部屋に泊まるよ?」
「え? いや、それは......」
「大丈夫だから。さ、早く」
「......わかったよ。ごめんねマリ」
コウスケは給仕の娘に向き直り手続きを進めて行こうとするが、そんな彼に声がかかった。
「ようあんちゃん。お前、冒険者か?」
「いや、違うけど」
その答えに話しかけて来た男性はニヤリと笑う。
「じゃあここはダメだ。ここは冒険者様専用の宿屋だからな」
「何を言ってるんですか!? ここにはそんな決まりありません!」
「フェイナちゃん。俺等暗黙のルールって奴だ」
「そんなの......!」
「良いのか俺に逆らって。この店潰すぞ」
「っ!? ご、ごめんなさい......」
男は右目に眼帯、筋肉ムキムキ、口はニヤニヤ、頭はツルリンッ。
「――ローブのお前、今失礼なこと考えただろ」
「いえ、気のせいでしょう」
「一応言っておくがこれは俺――ツルバ流オシャレだ。決してハゲではない」
――典型的なハゲが絡んできた。
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