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#19 オーバーキル

 ――氷刀。


 上に向けた俺の(てのひら)に、ピキピキという音をたてながら氷でできた刀が創られる。

 それを冷たいのを我慢して掴み、振りかぶって――投げる。

 びゅんっという音が聞こえた時には、投げられた氷刀は既に水砲狼の眉間に突き刺さっていた。威力はそれだけに収まらず、氷刀は水砲狼を斜めに貫き、その先の地面に深い穴を作った。

 もちろん水砲狼は絶命し、俺の造ったダンジョン上の機械の客となった。


 氷刀。俺の氷魔法だ。

 その名前の通り、氷の刀を創造する魔法。刀と言っても、勇者君に渡したような長刀ではなく、大きく反り、刀身も短い、いわゆる曲刀というやつだ。

 完全な独学なので本当にこんな魔法があるか知らないが、これは魔力消費も少なく、時間もかからない、氷なので証拠も残らない、その上手加減しやすい物理攻撃という、俺にとって最も扱い安い魔法だ。


「お、終わった?」


「うん。僕もちゃんと強いでしょ?」


「いや、ステータス4万って......強すぎ。確実にオーバーキルだよねこれ」


「そうかな。ま、そろそろ帰ろうか」


 俺はステータスを[制御]で抑えてから、再びマリを引き寄せ、テレポートした。

 あ、水砲狼も一緒だよ。


   *


「味見してもいい?」


「いいよ。ちょっとまってね」


 俺はおたまでコンソメスープに似せたスープを少しすくいあげて、マリに手渡す。

 マリは可愛くフーフーしてからスープを口に含んだ。


「んーー♡ おいしぃ!」


「そう? よかった」


 まぁ【銀河料理人】で失敗はあり得ないんだけどね。本気だしたらもっと美味しいんだけどね。

 でもそんなことしたら美味し過ぎて、みんなが最悪1週間使い物にならなくなる。さすがにそんなに立ち止まるのは俺がつまらない。

 ......でも、マリにはいつか本気の料理を食べさせてやりたいな。


 と、そこで俺は後ろでの動く気配に気がつきフードを深く被る。マリも何か察したようで、それに対して何をいう訳でもなく俺との会話を続けてくれる。

 それからワンテンポおいてコウスケがテントから()い出てきた。


「あれ? 今日は早いねマリ」


「あ、コウスケ。うんいい香りが漂ってきたからね」


 なんともあり得そうな嘘がよく出たものだな。いや、最初からこう聞かれると予想していたのかも。


「......そっか。ネレフェク、料理はもう終わるか?」


「そうですね、あともう少しだけでしょうか」


「そうか。ならマリ、久しぶりに二人で散歩しない?」


 散歩か。久しぶりか。

 いや、この二人とあとキソノも入れる転生勇者組は、幼馴染みらしいから久しぶりでも不自然なことはないんだけどさ。

 なんか毎晩発情期なコウスケとマリを二人きりにするのは気が引けるというかなんというか。

 事情的に口をだすことはできないけどね。


 第一にまだマリは俺のものって訳じゃないし。

 俺とマリの関係は確かに深くなった。でも、今のところ俺がマリの称号の指導をする代わりに、マリは俺に尽くすみたいな師匠と弟子の特殊版みたいな関係なので、俺がマリについて強く束縛することはできない。

 世の中には弟子を奴隷みたいに使う師匠もいるらしいが、俺はそんなクソみたいな奴にはなりたくない。


 しかし、マリは俺の自重するために自身に言い聞かせた言い訳も意味がなくなるような発言をした。


「うーん。いいかな。こっちの方が楽しいからさ」


「......そ、そっか。じゃあ1人で散歩してくるよ」


 コウスケは一瞬固まったが、すぐに立て直してテントの後ろの茂みへと向かって行った。


「あんなこと言って良かったの?」


「なんで? 事実だよ?」


「そう。うれしいな」


 その後俺とマリは朝食作りを終わらせ、1人散歩から帰ってきたコウスケに他の二人も起こしてもらい、今日の朝ごはんを食べた。


   *


 今はお昼も食べ終わって軽い一休憩に入ったところ。

 といってもゆっくりしているのは俺だけだが。

 みんなは食後の運動的な感じで二組に別れて、片方は1対1の対人戦闘の訓練を、もう片方は技術力を高める訓練をしている。


 対人戦闘訓練は勇者コウスケと魔導師キソノ。

 やはりステータスの差によりコウスケの方が優勢で、キソノは戦闘と言うよりコウスケの訓練に付き合っているだけのように見える。

 だが、魔導師は技術を高めればステータス差なんて関係ないほど強くなるハズなのだ。

 これが単純にセンスがないからだけならしょうがないと割りきれるのに......。


 まぁ、こっちはどうでもいい。

 俺が気になるのは向こうで仲良くならんで練習している二人。正しく言えば気になるのは一人。

 もちろんマリだ。今マリたちは一緒に魔力を練ってそれぞれの称号の性能を上げようと頑張っている。


「調子はどうですか?」


 練習を手伝う約束なのでそこに混ぜてもらうが、王女もいるので敬語は崩さない。


「難しいよね」


「ええ、中々伸びませんね。......ところで私たちに何か用ですか?」


 まぁ、なんとも分かり易い笑顔だこと。

 社交用だとすぐにわかるぞ。


「いや、王女様には何もないですよ。用があるのはマリさんです」


「......では、マリにどんな用が?」


「いや、アドバイスしてあげようと思いましてね」


「あなたが? 残念ですけどあなたの強さじゃマリに教えることなんてないですよ? みんなが知っているようなことは私から教えられますし......」


 どうやら王女様も俺のステータスが弱いと思っているらしい。俺がそう見せてるんだけどね。

 まぁ、料理人から何を教われば良いんだよとは思うよな。


「第一あなたの眷属(あの子)たちはともかく、あなた自身は料理しかできないんだからもっと他のことに気を回して私たちを助けて下さいよ。意味もなく教えようとする暇があったら――」


「ラーメル、やめて? 私がお願いしたんだよ」


「え?マリが? 何故......です?」


「頼れると思ったから」


「だから!何故頼れると――」


「あっちにいきましょう。マリさん」


「うん」


 これ以上の詮索されるのは危険だ。

 全く。何がそんなに気に入らないんだよ。

 王女ともあろうものがそんなにかっかしちゃって。

 しかも聖女なんだからさ、勇者と俺に違い扱いするのやめようぜ?

 一応割りきってはいるけど、同じパーティーメンバーなんだから仲良くして欲しいものだ。

 そんな日が来ると思えないんだよなー。はぁ。

読んでいただきありがとうございます。

今回はどうでしたか?


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これからもこの作品をよろしくお願いします。

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