#15 瞬殺
【木漏れ日の森】はその名の通りの森だった。
青々と生える雑草、たまに覗く黄色やピンクの小花、ざぁざぁと揺れる木々の間からは日の光が差している。
一応モンスター出没多頻度な危険区域のハズなのだが、ここで一度眠りに就きたいぐらいにのどやかだ。
そんな雰囲気なのでもちろんパーティーメンバーはゆるゆると森を横断していた。
「モフモフ~!!」
俺が勇者パーティーに入ってから数分。
キツネのフクは早速キソノのおもちゃと化していた。
キソノはフクを抱えて自分の頬にすりすり。フクは手出しはしないものの逃げようとジタバタ。
「次は私ですよキソノ!」
「その次は私!」
「あ、俺も」
美女たちと勇者に予約されるフク。
やめろ、そんなご主人様助けてみたいな視線をこっちにむけるな。お前だって王女に抱きしめられてる時は超幸福そうな顔してたじゃねえか。
ちなみにハリネズミのハッチは俺の前襟に潜り込み、クロネコのレイラは普通に歩いて俺の足下の隣を歩いている。何かされる前に危険を感じてそそくさと逃げ帰ってきた出来る子達だ。
「ん?」
そんな感じで平和に歩いていたとき、少し奥の草むらから音がした。ゴブリンだ。
「ここは俺がひきつk――」ザシュッ
勇者が意気込んでいる間にうちのレイラが自慢の速さを生かして瞬殺。
ついでにそばにあった黄色のパンジー見たいな花を俺の下に咥わえて来てくれた。
「ありがとう」
花を受け取り、頭を撫でてやるとレイラは嬉しそうに喉をならし、俺の足に頭を擦り寄せてきた。
我らがレイラは踏み出した一歩目から最高速度で走り始められるという、チーター顔負けな瞬発力と速度を誇っているのだ!
これは余談だが<建物を壊してはいけない50メートル走>では俺よりレイラの方が速かった。フワッと出発しフワッと帰ってくる、周りに被害を出さない走りは、華麗なフォームで見てて惚れ惚れする。
「あー。とられちゃったか~」
少しの間俺とレイラのやり取りを姿勢そのままで見ていたコウスケだが、少しイラついたようだな。頬が若干ヒクついている。
「すみません。初めてのモンスターに興奮したんだと思います」
「そうか。いや、謝る必要はないよ。倒してくれてありがとう」
実際は【貪欲】を持っている俺がいるこのパーティーはゴブリンに襲われることはないから、それを怪しまれないように、前もってレイラにゴブリンを見かけたらすぐ殺すように俺がお願いしておいたのだ。
常時クールなレイラには悪いけど、ごまかすのに興奮という言葉は使わせてもらう。
「雑魚狩りはこの子に任せて下さい。わざわざコウスケが動くまでもないですよ」
「雑魚......」
今度は大きく頬をひきつらせた。
今の会話でおかしなところは無かったハズだが......なんだろう?
「ネレフェクさん。これ、ジェネラルゴブリンですよ。しかも鋼の剣持ちです」
「え? 前に王女様が『会ったら油断すると私たちでも危ない』って言ってたやつ?」
「ネコちゃん強いわね」
......まあ、これなら俺じゃなくてレイラが凄いってことになるからセーフかな。
俺が強いってバレて正体だとかを問い詰められると面倒だけど、今のはレイラだからセーフ。
レイラの正体? 拾った野良猫。これで完璧。
フクとハッチ? 拾った野良狐と野良針鼠だけどなにか? よし超完璧。
「ねぇ、そのレイラちゃんの正体って――」
「拾った野良猫なので私も知らないんですよ」
「そ、そう。ならしょうがないわね」
ほら。完璧だろ?
あれ、みんなからの警戒心がぐーんと上がったぞ?
やっぱり無理があったか。まぁそのうち警戒心も解けてくれるだr――ザシュッ
音がした方を見てみるとレイラが新たなゴブリンを倒しているところだった。否、倒したところだった。
さすが一撃で仕留める腕前は一流。さらにまた近くの花を咥えてくる。
汚いものを見せたあとに気分を回復させる花を持ってくる気遣いもすばらしい。
ほんと尊敬出来る。出来るのだが......
「今度は2体......」
「また両方ジェネラルです。しかも片方ミスリルの剣ですね」
「計三体ね......本当に何者なの?」
あらら。
でもステータス的にはあなた方と同じぐらいだよこの子も。ただ技術まで一流だから強く感じるだけで。
今日は結局そのあとの襲撃はなく、ただただ俺が警戒と不審の視線を一身に受けながら歩いただけだった。
*
「そろそろ休憩にしようか?」
コウスケが振り向いてそう聞いた。
太陽もそろそろ落ちきって見えなくなってしまう寸前だからちょうどいい時間だな。
誰も疲れていなかったが、初日ということで無理はしないことに決まった。
「じゃあ俺は結界石を置いて来るね」
「あ、私もついていくわ」
「じゃあ私は反対側をやるので、コウスケ様、半分下さい」
勇者たちは囲んだ範囲は魔物の侵入をある程度防ぐという結果石を置きに行った。
眷属たちも勇者たちの護衛役に回ってもらった。
その場に残るのは俺とマリだけ。
とりあえず俺は調理の準備を始める。調理器具一式は勇者がアイテムボックスで持ってきてくれた。
今持っている食材はまだ聞かされていないが、なにをだされても美味しく調理してやろう。
そう俺が張り切っているとマリが声をかけてきた。
「ねえ。顔見せてくれない?」
やはり来たか。
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