納豆を広めるための拠点
この異世界の茨城県の魅力度を犠牲にしてでも納豆を広めたい。その言葉に俺は軽くショックを受けていた。俺が育った茨城県ではないが、この異世界で納豆を広めることはラーメンの魅力に水を差す気がする。
俺のいた茨城のためにこの茨城を犠牲にしていいのか?そんなことを考えていると……。
「水戸さん。納豆を広めるための拠点に案内します。私についてきてください。」
女神はそう言うとお会計を済ませ居酒屋からスタスタと出て行った。
「どこへ行くんですか?拠点?納豆広めるための店とかあるんですか?」
「そういうものではないです。あくまで拠点です。この異世界の茨城県で私たちが暮らす場所です。」
暮らす場所。たしかに俺は異世界人だから住む場所がない。だが、私たちが暮らす場所というのが少し気になる。
「着きましたよ。ここです。」
女神は水戸駅から数分歩いたところにあるマンションの前で立ち止まった。かなりいいマンションだった。
「このマンションの710号室が私たちの拠点です。」
710、納豆ってことか。
「オートロックなので出かける時は鍵忘れないようにしてくださいね。何かあったら私に鍵忘れた家入れないと念じてくれれば駆けつけます。」
電話とかじゃなくて念じるのか……。さすが女神。
「この部屋に私たちは1ヶ月前から住んでいるとマンションの住人が認識するように催眠をかけてあるので
お隣に挨拶行ったりとかしなくて大丈夫ですよ。」
認識いじる催眠とか使えるのか。この女神すごいな。
その催眠使えば納豆広めるの楽になりそう。
「ごめんなさい水戸さん。この催眠は納豆関連には使えないんです。以前納豆を好きになるって認識を変えるの試したら失敗しました。納豆に関する認識は変えられないんです。」
納豆の認識を変えられないのか。納豆を食べたことない人に納豆食べさせるのは大変なんだけどな。
「とりあえずこの拠点について解説しますね。ここは築30年のマンションです。3LDKで2人で暮らすには少し広いくらいですね。」
「すみません女神さま。2人でここで暮らすんですか?」
「はい。拠点が同じ場所の方が納豆広めるための作戦会議とか、準備とかしやすいですし。」
それはそうだろうけど、突然女神と同居というのはかなり抵抗がある。女神でも女性だから2人暮らしはなんかキツイというのもあるが、家に帰って納豆の話ばかりされる方がつらい。できれば女神と別の場所に住みたい。
「さすがに私も納豆の話ばかりはしませんよ。それに水戸さんは18歳です。この異世界の茨城県で一人暮らしというのは心配ですし、家事と納豆を広めるのを同時にやるのは大変だと思います。」
それもそうか。元いた茨城県で一人暮らししてたわけじゃないし、俺は家事がそんなに得意じゃない。納豆広めてる時に洗濯物が気になったり、夕飯のことを考えてたら納豆広めるのに身が入らないかもしれない。
「じゃあ決まりですね。この710号室が私たちの拠点です。ここから納豆を広めるために頑張っていきましょう!」