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水戸洋一が選ばれた理由1

「ここが異世界なのか?なんかテレビのドッキリとかじゃないのかこれは。」


水戸が目覚めたのはベッドの上だった。異世界というより病院で目を覚ました感じだ。

異世界感がない。変な声が聞こえて意識を失った後病院に連れてこられたのか?


「いいえここは異世界ですよ。水戸さん。」

そこにいたのは女神だった。転生した時に聞いた声と同じ声だったし、何よりその美しさは女神だと一目でわかるオーラを放っていた。


「ここは茨城県民のあなたにとっては異世界なんですよ。日本人の大半が耐えられない異世界です。私も耐えられません。この世界を水戸さんあなたに救ってほしいんですよ。」


耐えられない? 救う? この女神は何を言ってるんだ?そんな大変な世界を救う力が俺にあるのか?


「この世界には納豆がないんです。水戸さん茨城県民ならわかるでしょう?ご飯のお供に納豆がないことの悲しさが、キムチもチーズもあるのに納豆が冷蔵庫にない時のショックが、今日はたれじゃなくて醤油使うかとか、大根おろしを入れて健康を意識したりとか、箸でかき混ぜるときに力が入りすぎて発泡スチロールケースの底に穴が開いたりとか、この世界納豆ないからそぼろ納豆できないのでそぼろ単体で食べることになるのが物足りないとか、納豆をかき混ぜる変なおもちゃ買ってきて遊んだりとかもできなくて、あとお餅に納豆使えないのがつらくて、この世界醤油あるのに納豆ないんですよ。水戸さんならわかるでしょう。お餅に醤油使ったらその次納豆使いたくなるでしょ。なのにこの世界には納豆がないんですよ。カレーのトッピングに納豆がなくて、うどんに納豆を混ぜることもできない。ねばねば食材でうどん作るとオクラと山芋だけになるんですよ。絶対納豆ないとダメじゃないですか。わたしオクラと山芋だけのねばねばうどんはたんぱくだからあんまり好きじゃないんですよ。納豆でうまみを増強することが必要だと思うんですよ。あとは…。」

話が長い。


「というわけで納豆が好きな日本人なら大半耐えられません。だからこの世界を救ってほしいんです。あなたが納豆をこの世界に広めることで。」


たしかに茨城県民の俺が選ばれた理由はわかった。

茨城県民は納豆に詳しい。この女神が言っていた納豆料理や納豆のアレンジは俺もやったことがある。

カレーに納豆入れるのは絶対やるくらいには納豆が好きだし、でも


「俺が納豆を世界に広める意味がわかりません。できる気もしませんし、何より納豆をこの世界に広めても俺にメリットがないです。」


それを聞くと女神は自信たっぷりに答えた。

「メリットならあります。茨城県民のあなたにとって絶対に叶えたい願いを私は叶えることができます。この世界に納豆を広めたならその願いを叶えます。」


茨城県民が絶対に叶えたい願い?

俺は茨城県民だがそんな願いを持っていない気がする。正直俺の願いをなんでも叶えてくれるとかの流れだと思ってたから残念だ。


「俺はそんな茨城県民の願いなんかに興味ないです。女神様元の世界に帰らせてくれませんか?」


「前に転生した茨城県民の方はこの願いのためなら頑張ると行ってられたんですけどね。それでも元の世界に帰りたいですか?」


そう言われると少し気になる。俺が気づいていないだけで茨城県民として叶えたい願いがあるのだろうか?


「女神様その願いの内容ってなんですか?」


女神は

「茨城県の魅力度ランキングを最下位から脱出させます。」


そんなことか。そんな願いが叶ったところで…。

いやすごいな!茨城県の魅力度ランキングを最下位から脱出させるなんてそんなこと不可能じゃないのか?

ドラゴンボールでも叶えられない願いじゃないのか?


「あなたは茨城県民ならこう考えたことが一度はあるはずです。なんで茨城県の魅力度ランキングが最下位なのか。もっと他の県とかと比べたらマシだろうとか最下位だから大変とかの自虐ネタにイラつくとか、牛久大仏があって、大洗水族館とか話題になるものがあって遊園地や動物園に空港、海産物も美味しいし、野菜も美味しい。常陸牛美味しいし、水戸黄門だって茨城なのになぜ最下位なのかと考えたことがあるはずですよ。」


俺はそこまで考えたことはない。

ただ自分の育った県が魅力度ランキング最下位と毎年話題になることに耐えられないのと栃木の芸人が茨城を馬鹿にしていじるのが耐えられなかったり、正直栃木や佐賀とかと比べたら茨城県は魅力的だと考えていただけだ。


女神は突然笑顔になった。

「あなたは最高です。今年の魅力度ランキング確認してますね!だから栃木や佐賀とかと比べて魅力的だと思うんですよ。ワースト5の県を知ってるなんて流石です。」


あまり嬉しくない。あと当然のように俺の考えが読まれていて怖かった。


「でもなぜ徳島県は恨まないんですか?栃木と佐賀はともかく茨城県民なら徳島もなんとなく嫌なんじゃないですか?」


「いや女神様。徳島県は渦潮と阿波踊りがあるじゃないですか。魅力的な県ですよ。茨城県と同じくなぜこの順位なのか納得できないです。」

徳島県は阿波踊りと渦潮という魅力がある。

俺が栃木や佐賀になんとなくイラつく理由は特に魅力を感じないのに茨城県より魅力度が高い扱いを受けているからだろう。


「そうですね。私もその気持ちわからなくないです。

栃木とか佐賀とか言われても魅力思いつきませんからね。茨城の納豆、徳島の阿波尾鶏みたいにわかりやすい食べ物の魅力もなければ思いつく観光地や文化もない。それが栃木や佐賀ですよね。だからあなたはこの2つの県より魅力度が低いと言われるからイラつくんですよね。」


「………。」

俺は言葉を失った。ほぼその通りだったからだ。

しかし女神が言うほどは思ってない。あと阿波尾鶏は水戸の納豆ほど有名ではないと思う。徳島県の人とか行ったことある人とかしか知らないんじゃないか?


「だから茨城県民にとって魅力度ランキング最下位からの脱出は絶対に叶えたい願いのはずです。だからこの世界に納豆を広めるために協力していただけますか?」

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