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千羽鶴はお日さまのにおい  作者: 立川ありす
第3章 体育館の妖精と、小夜子さんの願い
9/12

ゾマのちょっとこまりごと

 それから数日たった、ある日の朝。

 いつもと同じように学校に行こうとしていると、


「チャビーちゃん、小夜子さん、おはよう……」

「ゾマ、どうしたの?」

「そのかちゃん、何かあったの?」

 ゾマがずーんと暗くなっていた。

 なんだか小夜子さんが2人になったみたいだ。そんなゾマは、


「あのね、昨日、体育の後かたづけをしている時に、妖精さんに会ったの」

 しょんぼりした声で話しはじめた。

「妖精さんと!?」

 わたしはビックリした。


「うん。ピカーって光って思ったら、目の前に、絵本に出てきたお花の妖精みたいな男の子がいたの。せなかにちょうちょみたいな羽が生えてたんだよ」

「すごい、妖精なんて本当にいたんだ」

 小夜子さんもビックリした。

 わたしは、ニッコリ笑った。


 ゾマも妖精と会えたんだ。

 っていうことは、ゾマも【白昼夢の世界】に行けるってこと?

 だとしたらステキ! でも、


「その子は『なんでも願いをかなえてあげる』って言ったの」

 あ、その先は知ってる!

 魔法のステージの話を聞いたんだよね?


「からかわれてるのかもしれないって、ちょっと思ったけど、そうなったらいいなって思って『もっと料理が上手になりたい』ってお願いしたの」

「えへへ、ゾマらしいよね」

 わたしは思わずニッコリ笑う。


 ゾマは料理がすごく上手で、おいしい料理でみんなをよろこばせてあげたいっていつも思ってるの。まるで、みんなのママみたい。でも、


「それから家に帰って、夜ごはんを作ったら、作る料理がぜんぶ甘くなっちゃったの。ぜんぜんおさとうとか入れてないのに」

 ゾマは暗い顔で言った。


「つかれていたり病気になったりすると、味の好みがぜんぜん変わっちゃうんだって。わたし、そのかちゃんが病気だったらイヤだな……」

「うん。パパやママは美味しいって言って食べてくれたんだけど、わたしが病気なんじゃないかって心配してるみたい。今日もご飯が甘かったら、どうしよう……」

 小夜子さんも、ズーンと暗くなった。

 ゾマも落ちこんでるから、いつもの2倍どんよりしている。


 それにしても、ゆるせないのは、その妖精だ。

 お願いをインチキなかなえ方をするなんて、ゆるせない!


 そうやって2人はどんよりしながら、わたしははらをたてながら学校に行った。


 そして、じゅぎょうが終わって、家に帰った。


「……でね、その妖精はインチキの妖精だったんだ! ヒドイ! 料理がぜんぶ甘くなっちゃうなんて、呪いじゃない!」

 帰ってから、わたしはポチに妖精のことを話しながらプリプリおこった。

 作る料理が甘くなる呪いがずっと続いたら、ゾマだってゾマのパパやママだってこまるよ!


「その妖精をさがして、ゾマの願いを取り消してもらわなきゃ!」

 でも、

「テスカトリポカさまの前でライブなんてできないよ……」

 わたしは、なやむ。


 するとポチが目の前まで飛んできた。


『それなら、ほかの神さまにおそなえ物をして、お願いしてみるかい?』

「そんなことができるの?」

『うん。神さまに歌やダンスを見せて魔力を得るみたいに、食べる物をあげて力をかりることもできるんだ』

「食べる物って、ケーキとかでもいいの?」

『もちろん。心のこもったものなら、何でもよろこんでくれるよ』

「それなら【シロネン】のケーキで!」

 いい考えかと思ったけど、すぐダメなことに気づいた。


「……でも、わたしのおこずかいじゃ買えないよね。どうしよう?」

『手作りのおかしとかでもいいんだよ』

「でも、おかしの作り方なんて、わたし知らないよ……」

『チカちゃん、お母さんのお手伝いとかしなかったの?』

 ポチはあきれたように言った。

 しかも羽ばたきながら、器用にため息なんかついてる!


「だって! 今まではご飯のこととかぜんぶお兄ちゃんが……あ、そうだ!」

 わたしはテーブルの上のケータイを取って、ゾマにかける。


『チャビーちゃん、どうしたの?』

「ゾマ! あのね、おかしの作り方を教えてほしいんだけど、いい?」

『いいけど、わたしは今、作るものがぜんぶ甘くなっちゃうから……』

「だいじょうぶ! おかしだから甘くってもだいじょうぶだよ!」

『そっか、チャビーちゃん、頭いい! それじゃ、今から家に来る?』

「うん! ありがとう!」

『それじゃ、チカちゃんは作るの初めてだから……クッキーとかどうかな? それならお家であまってる小麦粉とかでできるし』

「さすがゾマ! それじゃー行くね!」

 そしてケータイを切って、


「それじゃ、ゾマの家でおそなえ物を作って来るね」

『話をくわしく聞かないところがチカちゃんらしいね』

「いい子にして待ってるんだよ!」

『いってらっしゃい。そのかちゃんにめいわくかけないようにするんだよ』

「もう、ポチったら、お兄ちゃんみたいなこと言って!」

 そう言って笑いながら、わたしは部屋を出た。


 そしてママに出してもらったエプロンを持って、ゾマの家に行った。


 ゾマはクッキーを作る用意をして待っててくれた。


「チャビーちゃん、がんばろうね!」

「うん! よろしくね!」

 わたしはゾマといっしょにエプロンをつけて、おかし作りを始めた。


 まず、小麦粉をふるいにかけて細かくするんだって。


 ゾマはテーブルの上にザルをならべておいてくれた。

 わたしは、そこに小麦粉を入れて、ボウルの上でフルフルふった。

 そうすると、サラサラになった小麦粉がボウルにたまるんだよ。

 なんだか、ふしぎな感じがして、面白い。


「チャビーちゃん、しっかりボウルの上でふるわないと、こぼれちゃうよ」

「はーい。そうだよね。って、ハ、ハ……ハックション!!」

「きゃっ!」

 思いっきりクシャミが出ちゃった。

 そしたら小麦粉がブワッと広がって、わたしもゾマも真っ白になっちゃった。


「……ゴメンね、ゾマ」

「ううん、ドンマイ!」

 タオルを借りて、顔をふいて気を取り直す。

 それからサラサラにした小麦粉にたまごとおさとうとバターを入れる。

 そして、それをグルグルかきまぜる。

 そうするとクッキーの生地になるんだよ。


「けっこう大変だね、手がいたくなっちゃったよ」

「じゃあ、交代しようか」

 ゾマはわたしより手なれた感じで、ボウルの中の生地をかきまぜる。


 グルグル、グルグル。


 サラサラの小麦粉とヌルヌルのたまごが、グルグルまざる。

 そして、だんだん、やわらかい生地になっていく。

 大変だけど、これも面白い。


「ひょっとして、力持ちのマイがいたらカンタンなのかな?」

「うんうん、そうかも。でもマイちゃんは作るより食べるほうが好きだから」

「あはは。マイって、そんな感じだね」

 ゾマが言ったので、思わず笑った。

 よかった。ゾマが元気になってくれて。


 でも、なんとなくポチに『それは君も同じじゃないか』って言われた気がした。

 だから、まどの外に向かってあかんべーをしてみせる。

 今日からは、わたしだって作る人だもん!


 そうこうしているうちに、生地は、ねん土みたいにほどよくやわらかくなった。

 今度は、それをちぎってクッキーの形にするの。

 わたしはこの作業がいちばん好きかも!


「ゾマはハートの形にしたんだ、かわいい! お花のもあるね」

「えへへ、最近読んでる本が、お花の妖精のお話だったから」

 わたしは何の形にしようかな?

 ケーキの街に住んでる神様におそなえするから、ケーキの形?

 でも、ケーキのクッキーは変だよね。どうしよう。あ、そうだ……!


「……チカちゃんは鳥さんにしたんだ。かわいいね」

「うん!」

「そういえば、ぼうはんブザーも太陽の鳥さんだもんね。鳥好きなんだ」

「うん、そうかも」

 ゾマに答えて、ニッコリ笑う、


 ブザーを選んでくれたのは小夜子さんだ。

 わたしは別に鳥が好きだったわけじゃない。

 でも、ポチと会って、お話したり【白昼夢の世界】に行ったりするうちに、鳥が大好きになっていた。


 そんなことを考えながら、今度は、できあがった生地をオーブンで焼いた。

 焼き時間はゾマがセットしてくれた。

 けど、焼けるのを見るのが楽しくてオーブンの中をのぞきこむ。

 白っぽかった生地が、小麦色のクッキーの色になっていくのが面白い。


 それから、オーブンは熱くてあぶないから、家で子どもだけで使っちゃダメだよって、ゾマに何度も言われたよ。……あれ?


 それはともかく、オーブンがチーンってなって、クッキーが焼きあがった。

 てぶくろをはめたゾマがクッキーを出してくれた。


 キレイな小麦色に焼けたクッキーからは、こうばしい、いいにおいがした。


「あ、鳥さんのクッキーがひとつこげちゃってる。ゴメンね」

「ううん、ゾマのせいじゃないよ。なんかこれだけ形がヘンだったし」

 そして少し冷ましたら、サクサクのクッキーが完成した。


 ゾマはクッキーを皿にのせる。

 これが、わたしが初めて作ったクッキーなんだ。えへへ。

 そう思ったとたん、目の前が白い光につつまれた。


 そして気がつくと、わたしはおかしの街の公園にいた。


「あれ? なんで【白昼夢の世界】にいるんだろう?」

「おそなえ物のクッキーができたみたいだから、ボクがよんだんだ」

「ポチって意外にせっかちだったんだね」

 わたしはポチをじーっと見やる。


「……あ! わかった! つまみぐいがしたかったんでしょ?」

「チカちゃんじゃないんだから、そんなことしないよ」

「わたしだって、そんなことしないもん!」

 言い返されて、ぷぅっと口をとがらせる。

 そして、ふと気づいた。


「まって。作ったクッキーを全部あげちゃったら、ゾマの分がなくなっちゃうよ」 せっかく手伝ってくれたのに。

「だいじょうぶ。元の世界の食べ物はなくならないよ。神さまたちは、おそなえ物そのものじゃなくて、おそなえ物の『おいしい』を魔力にして食べるんだ」

 ポチの説明は相変わらず意味がわからない。

 けど、クッキーをくばってもなくならないってことだよね?

 それなら、ぜんぶくばっちゃってもだいじょうぶだ!


「チカちゃん、心の中で、クッキー屋さんの屋台がほしいって念じてみて」

 言われたとおりにすると、


 ポンッ!


「わ! スゴイ!」

 目の前に、鳥の形をした屋台があらわれた。


 そして、わたしは屋台の中から道行く神様たちに声をかける。

 立ち止まってくれた神さまに、クッキーをくばる。


「手作りのクッキーだ」

 神さまは、クッキーをよろこんで食べてくれた。

 動物の顔をした神さまや、キラキラ光る神さま、耳が長いだけでふつうの人間と変わらない神さまたちが、わたしとゾマが作ったクッキーを受け取って、かじる。


「作った人の、やさしい気持ちがたくさんつまってて、とってもおいしい!」

「このクッキーはお花が好きな子が作ったのね、うれしいわ」

 クッキーを食べた神さまたちは、ニコニコ笑顔になって、魔力をくれた。


「キミ、この前、ステージで歌ってた子だね」

 わたしのステージを見に来てくれた神さまもいた。


「……あの時は、帰っちゃってゴメンね」

「そんなの気にしてないよ! 元気になったら、また歌ってね!」

「うん! ありがとう!」

 えへへ。

 神さまにはげましてもらって、うれしくなった。

 そしてクッキーを全部くばり終わって、魔力がたまったわたしは、


「みんな! お願いを聞いて! 元の世界の体育館の妖精のことを知りたいの!」

「本当に、その願いでいいのかい?」

 どこかの神さまから、この前のときと同じようなことを聞かれた。


 わたしはビックリした。

 ひょっとして、また、わたしはヘンなお願いをしてるのかな?

 しちゃいけない、お願いをしてるのかな?

 ちょっと不安になる。でも、


「そいつなら、そこにいるけど」

 神さまは何食わぬ顔で言った。


「え!?」

 思わず見やる。


 すると、屋台のカウンターの上に、ちっちゃな男の子が乗っていた。

 せなかにちょうちょの羽が生えている。

 ゾマが話していたのと同じだ。


「あなたが、体育館で『願いをかなえてあげる』って言っていた妖精なの?」

「うん、ボクは妖精のパック、チカちゃんの学校の体育館に、たまに遊びに行くんだ。それより、手作りのおいしいおかしをちょうだい!」

「ごめんね。クッキーは全部くばっちゃったんだ」

「ええー!? でも、1まい残ってるよ? それ、ちょうだい!」

 パックが指さしたお皿には、こげてたから残しておいたクッキーがのっていた。


「でも、これ、こげたやつだよ」

 言いながら差し出したのは、ちょっとヘンな形のこげた1まいだ。

 でもパックは、

「平気だよ!」

 言いながら口にほうりんだ。


「すっごく面白い味がする! これを作った人は、お友だちにからかわれた気がしてムッとした気分で作ったんだね!」

 ポチが「?」とわたしを見てきたから、目をそらす。

 もう! そんなことまでわかっちゃうんだ!


「ところで、キミは魔力を集めて、どんなお願いをするつもりだったの? ボクがかなえてあげるよ!」

 いけしゃあしゃあと、そんなことを言った。

 もう、インチキの妖精のクセに!


 それに、わたしの願いは、とりあえずパックに会うことだった。

 でも、そのお願いはもうかなっちゃった。

 ということは、魔力を得したことになるのかな? えへへ。


「願いごとがないなら、自分の得になることをお願いしたらどうかな?」

 パックは、わたしの目の前を飛びながら、そんなことを言った。

「キミは算数が苦手なんでしょ? ならテストの点数を100点にするとか!」

「ええっ!? そんなお願いをしていいの!?」

「いいわけないでしょ!」

 どなり声とともに、パックと同じくらいちっちゃな女の子の妖精があらわれて、


「イタタタタ!」

 パックの耳を引っぱった。


「この子ったら、すっごくイタズラ好きで、人間にお願いごとをさせて魔力をもらっておいて、ヘンなかなえ方ばっかりするんだよ!」

「だって、お願いをふつうにかなえたって、面白くないだろう?」

「だからって、関係ない人間をこまらせたらダメじゃない! ……そっちの人間さん、パックがめいわくをかけてごめんなさい」

「あ、いえ……」

 わたしは、思わず、れいぎ正しく言った。


 ゾマにヘンな魔法をかけたパックには、はらを立てていた。

 けど、この子がカンカンになっておこったので、そんな気もなくなっちゃった。

 だから、


「あ、そうだ。それなら、ゾマのお願いごとを取り消して」

 わたしは、ふつうにお願いした。

 ちょうどいいから、そのお願いで魔力を使おうっと。


「作るものがぜんぶ甘くなっちゃって、こまってるんだよ」

「えーなんでだよ?」

 パックは口をとがらせて、そんなことを言った。

「甘いものはおいしいんだから、料理がぜんぶ甘くなったら、ぜんぶ美味しいってことに――ぐえっ!?」

 あ、女の子におなかをパンチされた。

 しかも本気パンチだ。いたそう……。


 パックは身体をくの地に曲げてクルクル回る。

 そんなパックをほったらかしにして、女の子はわたしの目の前まで飛んできた。


「安心して。パックがかけた魔法なんて、1日もたったら消えちゃうわ。その子にかかった魔法も、今ごろはとけてるわよ」

 そう言って、女の子の妖精はパックを引っぱって飛んでいった。


「……とりあえず用事もすんだし、帰ろっか?」

「うん、そうだね」

 わたしとポチは顔を見合わせる。


 なんだか、すごくにぎやかな2人だった。

 でも、これでゾマの料理が甘くなるのも、なおるんだよね。

 よかった。


 そして気がつくと、ゾマの家の台所だった。

 目の前にはクッキーが、お皿にいっぱいのっていた。

 神さまに配ったはずなのに、もとどおりだ。

 よかった。


 すみっこのほうにはパックが食べた、こげクッキーものっている。


「ハーブティーを入れたよ」

 ゾマがポットとティーカップを持ってやってきた。

「パパやママや、マイちゃんたちにおすそわけするぶんを残して、食べようか」

「わーい!」

 神さまは美味しそうに食べてくれたけど、自分ではまだ食べてないんだよね。


 おすそわけするぶんを、ゾマがくれたかわいいふくろに入れる。

 それから残った分を庭のテーブルに運んで、ハーブティーといっしょに食べた。


 そういえば、神さまはおそなえ物の『おいしい』を食べるってポチが言ってた。

 でも、『おいしい』を食べられちゃったはずのクッキーは、【シロネン】のケーキと同じくらいおいしかった。

 なんだか得した気分だ。エヘヘ。


 パックが食べたちょいこげクッキーも、せっかくだから食べてみた。

 表面がちょっとこげてただけで、ほかのと同じくらい、おいしかった。


 そして、おすそわけのクッキーのふくろを持って、お家に帰った。


 かきねの上から、シャムネコが「ニャーン」と鳴いた。

 ごめんね、このクッキーは、あなたにはあげられないんだ。

 そんなわたしの心がわかっちゃったのか、ネコはフイッとそっぽを向いて行ってしまった。


「ねえ、ポチ」

『なんだい? チカちゃん』

 わたしは、ふとたずねてみた。


「もし、ね、テスカトリポカさまに『いなくなった人をよみがえらせてほしい』ってお願いしたら、どうなるの?」

『その願いはかなわないよ』

 ポチは言った。


『いなくなった人は、もういないんだ。どこにもいない。だから、よみがえりようもないし、よみがえらせられる神さまもいない。ま、そんなお願いをしても、神さまに「できない」って、ことわられるだけだけどね』

「そっか、それもそうだよね」

 ならいいや。

 わたしが安心してすっきりしていると、


『あーでも、【白昼夢の世界】に行かずに、こちら側から魔法を使ってお願いをする場合は気をつけないといけないんだ』

 ポチが思いだしたみたいに言った。


「気をつけるって?」

『自分の魔力を使って、ゼッタイにかなわないお願いをし続けることになるから、どこかであきらめて願うのを止めないと、願った人の魔力がなくなっちゃうんだ』

「えー!? そんなのイヤだよ!」

 魔力っていうのは、楽しかったりうれしかったりする気持ちが集まったものだ。

 それがなくなっちゃうなんて、とんでもない!


『でも、チカちゃんには関係ないことだよ。だって【白昼夢の世界】に行かずに神様にお願いする方法って、すごくむずかしいんだよ。チカちゃんには無理だから』

「もー! そうやって、わたしのことをバカにする!」

 そんなことを話しながら家についた。


 するとパパが早めに帰って来ていた。

 ゾマの家で作ったクッキーをわたしたら、泣きながら喜んでくれた。

 えへへ、パパったら、おおげさだなー。


 そして部屋にもどってから、通学カバンの中に、明日の朝に小夜子さんにあげるクッキーのふくろを入れた。


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