表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千羽鶴はお日さまのにおい  作者: 立川ありす
第2章 魔法のステージと、お兄ちゃんの思い出
6/12

魔法のステージ

 気がつくと、おかしの国にいた。


「ねえ、ポチ。本当に歌うだけでお願いがかなうの?」

「うん。歌にはふしぎな力が宿ってるんだ」

 ポチは言った。


「だから、楽しい歌やキレイな歌を聞くと楽しい気持ちになれるし、ヘタな歌を聞くと気分が悪くなるんだ、君も知っているだろう?」

「……うん」

 安倍さんにはごめんなさいだけど、ポチの言うことはスゴくよくわかる。


「神さまは楽しい気持ちになるのが大好きなんだ」

 うんうん。わたしも楽しい気持ちになるのは好きだ。

「だから魔法のステージで楽しいライブをすると、神さまが魔力をくれるんだ」

「魔力って?」

「人間や神さまのうれしい気持ちや、楽しい気持ちが集まって、かたまったものだよ。魔法を使うために使うんだ」

「おもしろそう!」

 楽しい気持ちを集めると、魔法を使えるんだ!

 それって、なんだかステキ!


「その魔力を使って、テスカトリポカに願いをかなえてもらえるんだ」

「そのトリ……って、なに?」

「テスカトリポカ。すっごくエラい神さまだよ」

「そうなんだ」

 ポチがバカにしたみたいな目で見てきたから、ちょっとにらむ。


「ってことは、神さまの前で歌えば、何でもお願いがかなう魔法が使えるの?」

 ステージで歌って神さまを楽しませると魔力がもらえて、それをトリ……なんとかさんが魔法にしてくれるんだもんね。

「まあ、だいぶ話をはしょると、そうなるね」

「そっか! 楽しそう!」

 わたしは思わず笑う。


「それじゃ、ステージへの行き方は――」

「へへーん、知ってるよーだ! この前、行ったことあるじゃない」

 ポチが知ってることを言おうとしたから、あたしはとくいそうに笑った。でも、


「それより、もっと便利な行き方があるんだよ」

「便利な?」

 ポチも、とくいそうに笑った。

「【白昼夢の世界】は魔法の世界だから、行きたい場所を強く願えば行けるんだ」

「そうなの!? スゴイ!」

 ポチに言い返せなかったのはくやしいけど、こっちの行きかたの方がステキ!

 だから目をつむって、ケーキの形をしたステージを心に思いうかべる。


「わたしたちを、魔法のステージに連れてってっ!」

 パステル色のお空に向かって、さけぶ。


 すると、目の前が真っ白に光った。


 気がつくと、わたしはステージのまん中にいた。

 大きな、大きなケーキの形をしたステージだ。


 ほんのりバニラエッセンスの甘いかおりがする。

 ステージのまわりには、たくさんの神さまがいて、おうえんしてくれている。

 ほんとうにアイドルになったみたいでステキ!


 そんなわたしも、いつの間にか、おかしのドレスに着がえていた。


 キレイなたまご色の、なめらかプリンのドレスだ。

 ストラップのシロネンちゃんと、ちょっとにている。


 長いそでとすその先は、こい茶色のカラメル。

 すそにはクリームみたいな白いフリルがついている。


 すそと同じカラメル色のブーツをはいていて、なんだか大人になった気分。

 ブーツにはサクランボのかざりがついている。


 頭にはイチゴのリボンが乗っている。


 おひめさまになったみたいな気がして、思わずクルッとひとまわり。


 すると、ステージの前に、3人の大きなネコの神さまがあらわれた。


「あれがテスカトリポカだよ」

 ポチが言った。

「リーダーのテスカトリポカと、ケツァルコアトル、シペ・トテック」

「はじめまして、えっと……神さまたち!」

 わたしは、ゾマみたいに可愛らしくおじぎをする。


 すると、ネコの神さまたちもニッコリ笑ってくれた。


「ライブで他の神さまから魔力をもらって、あの神さまにお願いをするんだ。あの4人……いや3人なら、たいていの願いをかなえられるからね」

「あ、言いなおした。いつもは4人なの?」

「そんなことはどうでもいいんだ! それより歌える? きんちょうしてない?」

「うん、だいじょうぶ!」

 心配してくれるポチに答えて、ステージのまわりの神さまに手をふる。

 動物の頭の神さまや、キラキラ光る神さまが、手をふり返してくれた。


 ほんとうは、ちょっときんちょうしてる。

 けど、それよりワクワクして、楽しい気持ち!

 さくらちゃんの願いを、わたしがかなえちゃった!


「そなたが、この魔法のステージでライブをする、新たな魔法のアイドルか」

「期待しておるぞ。われらに、楽しい歌を聞かせておくれ」

 ネコの神さまたちも、おうえんしてくれる。

 みんなのおうえんに答えるためにも、がんばって歌わなきゃ!


「はい!」

 わたしは元気に答える。

 すると、わたしの手の中に、イチゴの形のマイクがあらわれた。


 わぁ! かわいい!


 ステージのまわりに乗っているイチゴたちが光って、わたしを照らす。

 スポットライトだったんだ!


 そして、どこからともなく音楽が流れ出した。

 わたしが歌おうとしていた【シロネン】の曲だ。


――たいくつな、にちじょうも、ファンタジーととなりあわせ♪

――うつむいた、しせん上げたら、魔法の世界は、そこにあるよ♪


 曲に合わせて歌う。

 神さまたちは、飛び上がってよろこんでくれる。

 だから、わたしも思わずニッコリ笑う。


――すりへったクレヨンを杖にして、流れる雲をおともにして♪

――ぼうけんに出かけよう♪

――苦しいことも、大変なことも、いっぱいあるけれど♪

――くじけないでね、おそれないでね、前を向いて進もう♪


 歌いながら思い出す。


 お兄ちゃんといっしょに食べたチョコレートケーキの甘さ。

 病気だったわたしのために、お兄ちゃんが買ってきてくれたケーキ。


 お兄ちゃん、今はもう、わたしは元気だよ!

 そんな想いを、歌にこめる。


――勇者様なんていなくったって平気♪

――夢を広げたキャンパスに、魔法の杖をひとふりすれば♪

――どんな願いだって、かなうから♪


 お兄ちゃんは、みんなのヒーローになりたいって言っていた。

 それなら、わたしはさくらちゃんみたいに、みんなのアイドルになりたい。

 わたしが魔法の世界でアイドルになったって言ったら、お兄ちゃんはビックリするかな? 喜んでくれるかな?


――キケンなモンスターだって、楽しいイベントに早変わり♪

――ウサギとおしゃべり♪

――子ネコとおひるね♪

――小鳥に乗って空のおさんぽ♪

――ここはステキな、ぼうけんの世界♪


 最後にポーズを決める。

 すると、ステージがよろこびの声につつまれた。

 神さまたちは、こうふんしてピョンピョン、ピョンピョン飛びはねている。


 そんな神さまたちの中から、キラキラした光があらわれる。

 いっぱいの神さまたちの、いっぱいの光は、わたしめがけて飛んでくる。


「わっ! なにあれ!?」

「あれが魔力だよ」

 ポチが答える。


 そっか。神さまたちを楽しい気持ちにしたから、魔力をもらえたんだ。


「チカちゃん、その魔力で何をお願いするの?」

 ポチはたずねた。


 その答えは、もう決まってるんだ。

 わたしは、大きな声で神さまにお願いをする。


「お兄ちゃんに会いたいな! ちょっとの間でいいから!」

「今のライブでたまった魔力なら、できるけど……」

 お願いを言ったとたん、ポチがむずかしい顔をした。


「本当に、その願いごとでいいの?」

 しんぱいそうに聞いてきた。


 なんで、そんな顔をするの?

 だいたい、お願いをかなえてくれるのはポチじゃなくて3人の神さまなのに。

 わけがわからないから、


「うん!」

 ポチのしんぱいをふきとばすくらい、元気に答えた。


 3人のネコの神さまは、わたしの顔をじっと見つめる。そして、


「「「ならば、そなたの願いをかなえよう」」」

 そう言うと、目の前が白い光につつまれた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ