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私の愛しい婚約者  作者: 華月
本編
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50

少なくなく→少なく(H30.4.13修正)




ニコラス殿下とレオンの魔術──剣術を含む──勝負については、魔術の授業を選択していた生徒たちによりあっという間に学園内に広まった。

そこから、ニコラス殿下とレオンに向けられる視線は、おおよそ二種類にわけられる。

尊敬の眼差しと、恐れの眼差し。

前者は主に、黒騎士団志望者と、白騎士団志望者が多く、後者は一般生徒が多い。

とはいえ騎士団志望者以外にも二人に尊敬の眼差しをおくる生徒は少なくなく、ここ数日は、どこへ行っても視線が付きまとう。

元々視線を集めがちなレオンやニコラス殿下はたいして気にした様子はなく、どちらかといえば、私とミリアの方が気にしている方が多い。

まあ、ミリアは私よりかは視線に慣れているのだろうけれど。


魔術勝負において、レオンとニコラス殿下の実力は周囲の知るところである。

それが本気の勝負であっても、全力の勝負ではないということも、その場で発言を聞いていた魔術の授業を選択した生徒には知られている。

その勝負をみていた生徒たちは、実力差に心が折られる──という者は実は少なく、レオンやニコラス殿下に「ぜひ!」と師事をあおぐほどだ。

もともと魔術師やその気質がある人たちは、“魔術”というものに貪欲だ。

自分の知らない魔術を知りたい、覚えたい、出来れば新しい魔術を生み出したい。

探究心に満ち溢れており、現状で満足、ということはまずありえない。

だからこそ白騎士団には魔術専用の研究棟が設けられているし、白騎士たちはそこに引きこもることは多い。

逆にいえば、圧倒的な実力差を前に、心が折られるようであれば、白騎士団にははっきり言って向いていないそうだ。

そして魔術の授業には現白騎士団団長様のご子息もいらっしゃったらしく、レオンとニコラス殿下の勝負については、白騎士団たちも知ることとなったらしい。

ぜひ!と団長様に懇願され、渋々といった様子で、全ての授業が終わってから白騎士団の研究棟へと向かっていった。

いつもであれば私とミリアも共に向かうのだが、今日はどうしても外せない用事があったのだ。


学園内での、お茶会である。


例えひと月しか学園にいられないとしても、少しでも友好関係を築くことは大切だ。

特にミリアは、もう数週間もすれば、シュタインヴァルト皇国に帰国しなければならない。

アーデルハイドで関係を築けたのが私とレオンだけ、というのは、正直心もとないだろう。

私はマリアンナ様やヴィオラ様に何度かお茶会に誘われたおかげで、多少は友好関係を築いているご令嬢たちはいらっしゃる。

以前マリアンナ様のお茶会で、私にレオンとの婚約破棄を!と迫ってきたご令嬢たちは、次のお茶会の時には招待されていなかった。

……その二回目のお茶会はレオンに大反対を喰らい、出席することが大変だったのは言うまでもなく。


今日はヴィオラ様が主催のお茶会である。

マリアンナ様も出席されるそうで、実はヴィオラ様やマリアンナ様とはあまり会話をする機会のないミリアにとっては、絶好の機会なのではないだろうか。

もちろんマリアンナ様やヴィオラ様にも、ミリアと関係を築くことは重要だと思われるが。

なんせ、マリアンナ様はジークベルト殿下の、ヴィオラ様はアランディア殿下の婚約者で、ミリアはシュタインヴァルト皇国皇太子候補であるニコラス殿下の婚約者。

いずれ彼女たちは、王族、皇族の一員となるのだ。

もちろんジークベルト殿下とアランディア殿下については、どちらかが次期国王となり、もうひと方は臣下に降るはずだが、王族であることに変わりはない。

シュタインヴァルト皇国についてはニコラス殿下の御家族についてはよく分からないのでなんともいえないが、ニコラス殿下の場合は次期皇帝にでも臣下にでも、ミリアが望めばどちらにでも喜んでなりそうだ。

ミリアがどちらを望んでいるかは不明だが、私とレオンもアーデルハイドから応援するとしよう。


さて、お茶会といっても、今日は小規模のものである。

ヴィオラ様、マリアンナ様と数人のご令嬢、ミリアと私といった面子だ。

ご令嬢方は全員婚約者がいらっしゃるらしく、間違いなくレオンとニコラス殿下に懸想する者はいない──というのは、ご招待いただいた時にヴィオラ様に強調された部分である。

どうやら、今日のお茶会は少しでもアーデルハイドとシュタインヴァルトの友好を築くために、あえていずれ国の上層部になるであろう婚約者を持つご令嬢たちが集まったようだ。

お会いしたことのない方もいらっしゃるため、最初に軽く自己紹介を行う。


「──マリエール・ヴィルクラッセと申します」


その中のおひとりである、マリエール様。

ふわりと風になびく桃色の髪に、どこかで見たことがあるような既知感を覚えた。

ヴィルクラッセといえば侯爵家であり、そのご令嬢はあまり社交界に姿を見せないと聞いている。

一瞬目が合った時、さっと顔を背けられたのは、どうしてだろうか?

マリエール様は黒騎士団団長様のご子息と婚約されているそうだ。

確かヴィルクラッセ家にはご令嬢がおひとりだけ……つまりマリエール様しかお子様がいらっしゃらなかったはず。

婚姻後は婿を取るということなのだろう。

確か黒の団長様は伯爵だったので、身分的にも釣り合いが取れていると思う。


「マリエール様はジークベルト殿下やアランディア殿下の幼なじみで。もしかすると、殿下のイトコにあたるレオンハルト様ともお知り合いなのかしら?」


ヴィオラ様の言葉に、先程の既知感の招待を理解した……気がする。

マリエール様の顔色は決して良いとは言えない。


「ええと、確か、お知り合い……でしたわよね?マリエール様」

「は、はい。ですが、まったく、これっぽっちも、レオンハルト様には何も感じていませんので!」


思い出した。

王家主催のお茶会に参加した時に、マリエール様には会っていたのだ。

あの一度きりだったし、それ以来マリエール様のお話を一切聞いていなかったから、記憶の中から忘却されていたようだ。

確かマリエール様はジークベルト殿下とアランディア殿下の幼なじみということもあり、あまりマナーがなっていなくて──かつて、レオンの婚約者候補でもあった方だ。

レオンは否定していたけれど。


「そ、そうですの……」


なるほどマリエール様のお顔色が優れないはずだ。

確かマリエール様はレオンに、魔術か何かで脅されていた。

レオンに対する恐怖心があるのもうなずける。

当然この場にはその時のことを知っている方はいないので、マリエール様のお顔色の悪さについて、皆様が首を傾げるのも納得だ。

当時はデビュー前でも、思わず眉をひそめてしまいそうだったマナー。

今では違和感を覚えることもなく、しっかりと身についているようだ。


「わたくしたち、全員婚約者がおりますし……せっかくなら、皆様の婚約者様についてお話を聞きたいですわ!こういうのを、こいばな、と呼ぶのですわよね!お友達に聞いたことがあって、ぜひしてみたいと思っていましたの。それに……リリア様やミリア様のお話、じっくりお聞かせ願いたいわ」


授業について、学園について。

そんな話をしていた中、ご令嬢のおひとりが提案する。


「そうですわね。私は婚約者ととても仲が良い……というわけではありませんから、ぜひ秘訣を教えていただきたいですわ」

「あたくしも、ぜひ。お二人の中睦まじさは有名ですもの」


それに同意する方もいらっしゃり、雰囲気はまさしく“こいばな”をする方向へ持っていかれる。

それに若干引きつったような顔をするのは、マリアンナ様とヴィオラ様で──。


あら?

そういえばお二人は、ニコラス殿下とミリアとの初めての顔合わせの時にも、似たような表情をしていたような……?

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[気になる点] 『既知感の招待』は、正体 また、『中睦まじさ』は、仲睦まじさ ではないでしょうか?
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