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プロローグ3:いわゆる1つのキャラメイキング ~攻撃魔法はNGです~


「というわけで、あなたには私の管理する世界に転生してもらいます」

「お、おう。まあそれはこの際受け入れるしかないっていうか他に選択肢無いんだろうから納得しておく」


 話を聞く限りこの女神様は世界が上手く発展しないとすぐに洪水とか大災害的な干渉をしてそうだ。となるとまず確認しておくべきは転生に関する条件、いや、【女神の要望】を確認しておかねばなるまい。


「なるほど。転生先で生きていく上で、やって良いこと、悪いことを知らねば転生後にどうすれば良いかなども分からない。そう言いたいのですね?」


 ナチュラルに読心してくれるからいちいち口に出して説明しなくて済んで助かるよ。


「ああ。まずそんなことをするつもりはこれっぽっちも無いんだが、例えばヒトラー並みの弁舌で周囲の人間を丸め込んで権力の座について、レッツ世界大戦。なんてやらかしたらまずいわけだろ?」

「もし本当に出来るのならそれぐらいやってくれてもいいんですよ?」


 いいのかよ!? いやいやおかしくねそれ? だって神様的には世界の生き物の数=魂の数が多いほどお得なんだろ? 世界規模で戦争なんて起こして人口を減らすなんてその真逆の行いじゃねぇか。


「まず勘違いしているようなのでそこを詳しく説明しておきましょう。知性ある生き物の数が増えれば戦争は起こるものです。これ自体は世界を管理する上で避けようがないトラブルというかぶっちゃけよくあることです」


 いや本当にぶっちゃけたな。そりゃ地球の歴史もある意味戦争の歴史っちゃ歴史なんだろうけどもさ。


「文明レベルが大きく後退するような。凄惨な殺戮の上にお互いが倒れるような最終戦争でさえなければ、争いは技術の進歩を促します。より効率的なエネルギーの利用、より高度な医療技術……そしてより総合力に勝る方が勝つことで劣っている側を淘汰していくわけですから、世界全体の文明レベルの平均が上がることの方が多いわけです」


 確かに現在の地球の医療技術なんかも二回の大戦で大きく進歩した、とかって聞いたことがあるな。


「そうやって文明レベルが上がっていくと、戦争から100年200年が経つ頃には前よりも総人口は増えているわけです。神にとってはそれぐらいの期間は本当に僅かな時間ですから、目先の小さい変動にまで一喜一憂してられないのです」

「待て待て待て、ってことはなんだ、どっかの国が領土を広げるために戦争ふっかけるなんてのは神様的には全然OKなの!?」

「むしろバッチコイですね。生まれたばかりの貴重な種族だとか、新しい技術が生まれたばかりの都市国家なんかが、野蛮に踏みにじられ失われるだけ、といった具合の不毛な争いでなければ問題は何もありません」


 シビア! 異世界思ってたよりシビア! っていうかその理屈だとよっぽど何か大きな問題が無い限りは女神様が世界に介入する必要なくね?


「天才的な死霊術の使い手が大陸全土を制覇するような勢いでアンデットを増やしたりとか、極めて感染力・致死性の高いウイルスが広範囲にばら撒かれたりとか、魔物が増え過ぎてある地域の知的生命が全滅しかけたりとか、看過できないレベルの問題が起きたら介入するのが当然でしょう?」


 シビア! 剣と魔法のファンタジー、一歩間違えると超シビア! 魔法なんつうもんのせいでむしろ難易度上がってるんじゃないか? あんたの世界って。


「なのでもし貴方が能力を悪用し、世界の文明レベルを後退させるようなことになれば大陸ごと海に沈むことになります」


 ちょっ!? デッケェ! 天罰のスケールでっけぇ! いやほんと無駄にスケールデカイな!? っていうかそれ巻き添えどんだけ出てんだよ!? 目先のことで一喜一憂しないとか言った傍から大洪水しちゃうぞ、とか脅しのスケールおかしいだろ!?


「あ、待て待て待て待て、ってことはあれだ、たまたま俺とは何も関係ない所で、世界を発展どころか後退させるようなガッチガチの原理主義の宗教国家が力を付けたりしたら、俺が何も悪いことしてなくても天罰的な災害の巻き添え喰らうことがあり得るってことじゃねぇのか!?」


「…………」


「おいそこで黙んなよ!?」

「そこに気づくとは、さすが地球産の魂」

「いやそこ褒めるとこか!? っていうか今までどんだけ杜撰な介入してきたんだよ!?」

「うぅ、だって世界がなかなか発展しないとイライラするじゃないですか!」

「そうやって短気にスケールデカイ介入してばっかりいるから世界が発展しねぇんだよ!?」


 ダメだこの女神早くなんとかしないと。主に俺の第二の人生のために。


「と、とにかくですね、今私の管理している世界は文明レベルがここ600年という単位で停滞してしまっていまして、外からの刺激というか新しい知識を増やしたいんですよ」

「つまりはそれが俺を転生させる目的ってわけか?」

「ええ。ですのでぶっちゃけて言ってしまえば好き勝手に生きて下さって構いません。貴方が暮らしていた地球との文明レベルの格差に、勝手にいろいろと生活環境を改善しようとするでしょうからね」

「でもってお隣の宗教国家のせいで天罰の巻き添えを喰らうわけだな」

「まあ介入に値する悪影響があれば仕方ないですよね。まとめてドボンです」

「だから止めろよそれぇ!?」


 なんて乱暴な管理してんだこの女神は。他人の巻き添えで天罰なんてまっぴらごめんだぞ本当に。とはいえ割と好きにやっていい、っていう言質はデカイな。さすがに口八丁手八丁で独裁者コース。なんてのを目指すつもりはないが、勇者として魔物を倒して周れみたいなのも勘弁だからな。


「まあ世界の方はそうやってここの所停滞気味なので、私の介入はまず心配しなくて良いでしょう」

「頼むよ? 本当に頼むよ?」

「保証はしませんよ?」


 チッ。さすがにそこまで甘くないか。


「……おほん。では貴方には転生時の余剰エネルギーを使って加護を与えましょう」

「おお、転生物のお約束だな」

「貴方はどういうスキルを望みますか? 魔物と対峙しなくてはならないこともあるでしょうから、ステータスを強化するようなものとか、戦闘用のスキルがやはり人気ですよ?」


 一体それはどこのアンケートで人気なんですかね?


「それはもちろん過去の転生者達の傾向からです」

「存外まともなアンケートだった」

「魔法適性MAXを選んだ転生者は魔法系スキルの大系化と派生技術の発展に大いに貢献してくれました」

「おおー、如何にもファンタジーっぽい!」

「剣技特級を選んだ転生者はそれこそ勇者か何かという感じの英雄譚を残しました」

「ほうほう……ちなみにその剣技特級の勇者様の最期は?」

「伝承ではまだ見ぬ強敵を求めて去った、となっています」

「……伝承では?」

「実際にはあまりに高い実力を恐れた、時の為政者に毒殺されましたね」

「あー……やっぱりそういうオチになる転生者も居るんだ?」

「ちょいちょい居ましたね」

「となるとやっぱり魔法の才能が無難に良さそうだよな」


 剣と魔法のファンタジー世界で現代っ子がわざわざ剣は選ばねぇよ? いい歳こいたおじさんが大剣豪目指すとかちょっとねぇ……? そこ行くと魔法にはロマンがあるよな! 愛読していた漫画の魔法使いも言っていた。魔法使いはデカイ魔法をぶち込む砲台なんだぞって。安全圏から大火力、これだ。それにいろいろな魔法が使えるのなら解毒とか回復魔法っぽいのも用意できるだろう。毒殺の心配もぐっと減る。女神様的にも魔法適正MAXっていう前例あるから簡単だろうし……っておい女神、なんでそこで輪郭ぶれっぶれになってんだよ?


「……実は、今回貴方に与えるスキルや能力は一部制限を掛けようと思っていまして」

「なん……だと……?」

「具体的には攻撃魔法の才能はNGですね」


 WHY? 攻撃魔法ダメです、ってそれどういうことよ? あれか? 平和ボケした日本人に攻撃魔法は使いこなせないとかそういう?


「逆です。先輩の世界の人間達は非常に想像力豊かというか、魔法の才能を与えると物凄く高度なレベルにまで最終的に到達してしまうのです。」

「あ、なんかオチが読めた」

「その結果、以前に転生させた者が迷宮から溢れたモンスターを一掃するはずが、加減せずに大魔法を放って大陸の形を変えてしまったという悲劇がありまして……」

「だからスケール! 被害の大きさ滅茶苦茶だな!? っていうか迷宮からモンスターが溢れるって何さ!?」


 転生後の生活を考えるとそれなりに強力なスキルが欲しいわけだが、剣技特級の勇者様――長いから剣の勇者でいいよね――の二の舞にはなりたくない。そして魔法適正MAXの転生者が派手にやらかしてた過去があるので攻撃魔法は最初から使えないようにしますと。つまり好きに生きるって言っても結構制約があるということだな。これは気を付けないとヤバイ感じか。しかも迷宮(と書いてダンジョンと読むんだろう?)からモンスターが溢れるとか……むぅ、考えれば考えるほどシビアだなファンタジー世界。


「あ、ちょっと待ってくださいね」


 ん? 考えていたら女神様の方から待ったが掛かった。一体何事だよ。今更転生キャンセルとかやめてくれよ?


「さすがにそういうわけではありません。ですが貴方に一つお願いしたいことができました」

「ほう。好き勝手にやっていいよとか言ってた気がするんだが?」

「少し事情が変わりました。……世界の発展に関して予知をしたところ、貴方が転生する予定の時間軸で一つ大きな分岐があることが分かりました」

「なんかいきなり話が大きくなったな。さすが創造神」

「貴方には転生後にその分岐を望ましい方にするためにちょっとした御使いをしてもらいます。それが済んだら後は自由にやってもらって良いでしょう」


 ほんとスケールのデカい話しかしないなこの女神。転生する前から運命改変系クエストを押し付けられるとは。未来を望むように変えるとか、神様視点だと普通の発想なんだ?


「普通ですね。というか先ほども言ったじゃありませんか。世界がヤバそうな時は介入しているって」


 あ、そういうこと? アンデットが溢れてーとか宗教国家が文明後退させてヤバいーとかってのも一応その先の未来がどうなるかを予知して、それがアウトだったなら介入って形だったんだ?


「その通りです。そして今回予知した分岐を良好な結果に誘導できれば数十年後の王国の人口が本来より2、3割増しで増えそうなのです。あ、王国というのは貴方に転生してもらう地域に栄えている国家です」

「それ誘導に失敗したら逆に女神様のスケールのデカい介入来ちゃうやつですよね?」

「そうならないよう頑張ってくださいね」


 うおおおい!? 気ままな転生ライフなんじゃなかったのか!? いきなりちょっとヤバい話になってきちゃってるじゃん!?


「まあ今のは冗談です。失敗しても人口アップボーナスが無くなるだけなので、私からしたらちょっとしたサブイベントですから。なので失敗したら介入、なんてことにはならないでしょう。そもそも失敗した時に貴方が無事か分かりませんから、気にするだけ無駄です」


 ちょっとぉ!? 女神様の大規模介入は無い代わりに俺の命! 俺の第2の人生がヤバイことなってるじゃないの!!


「代わりに、というわけではないですがなるべく希望に沿ったスキルや能力を優遇しますから」

「おう、いやほんとそれはよろしく頼む。失敗したら人生終了のクエストとかハードル高過ぎんぞ」

「さあ貴方はどんなスキルが欲しいですか?」

「いやいやいや、どんなスキルが選べるかまず教えてくれませんかねぇ!? つか分岐! 具体的に俺は転生した後、何をするのかが分からないと必要なスキルや能力選べないから!」

「道理ですね。では貴方にして貰いたいことをこの後で詳しく説明しましょう」


 そんな引っ張るほど面倒な御使いなの? もう今から不安しかないよ?


「ただですね、物凄い数のスキルやギフトがあるので、把握するだけで凄い時間かかりますよ? そして万が一今まで世界に無かったスキルでも、貴方の余剰エネルギーで造れそうならでっちあげますから、まずは希望を出してくれるとこっちとしても手っ取り早いんですよね。もちろん育った時に危険度が高過ぎる感じのはこちらで除外したり制限掛けたりしますから」


 さすが女神。ナチュラルにチートな発言してやがる。とはいえ大雑把に標準的な戦闘職さんのスペックとか、レベル制なのか熟練度制なのか、とかそういうシステム?的なところを補足してくれないとさぁ。うーむ、悩ましいな。とりあえず○○特級、みたいな剣の勇者コースまっしぐらなのはパスだな。それでいて異世界モノの定番かつ絶対に外せないポイント、いや、俺の第二の人生を支えるスローライフの源となるスキル! ここはじっくり考えるべきだな。



…………(女神様、御使いの内容を説明中)……




…………(俺と女神様、相談中)……




…………(俺と女神様、考え中)……




…………(俺、まだまだ考え中)……




…………(俺、まだまだまだまだ考え中)……




「まだ掛かりそうですか?」

「待って、もうちょい待って」




…………(ワレ、決断ス)



「――本当にそんなスキル構成で大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、問題無い」


 っていうか女神にもこのネタ通じんのかよ。



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