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エル・カダルシアの魔法手帖  作者: ゆうひかんな


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魔法手帖六十七頁 ござるの呪いと、紹介所


『限定解除(転移)』

ダンジョン内のみ階層に関係なく転移可能。

グレースの固有スキルの一つだった。

発想が目からウロコでした。

自分で紡ぐ魔紋様まもんようがダメで、オリビアさんの転移のスキルが使える理由はわからないけれど、ダンジョン内の階層に関係なく転移できるなら、今回のように入り口まで転移すればいいですよね。

もちろん、逆向きに入り口から他の階層に転移するのも可。


実は紹介所に行った後、しておきたいことがあるんです。

それは。

三十階層の主様ぬしさまにご挨拶。

グレースの転移のスキル使えば三十階層も行けるのではないだろうか。

オリビアさんは管理者という権限を持っているから大丈夫なんだろうけど、私の場合今後各階層を書籍の魔物と戦いながら管理のお手伝いをするってどれだけ労力と時間が必要なんだよ?!って思いますよね。

なので一番偉い人に根回しをして、各階層の書籍管理のお手伝いをさせていただく権利を得ようという作戦だ。

名付けて『許可いただいてますけど?(クスッ)作戦』。

父様、異世界で貴方が涙ながらに語ったサラリーマン悲話(酒の肴)が役に立つ日が来るとは。

大丈夫ですわ!オリビアさん(管理者)にも根回しします!

まあ、行ってみないと許可いただけるかわからないんだけど。

…やっぱり手土産、必要?


「あれ?!うそ!エマちゃんじゃないの!?」

そこにちょうどいいタイミングでサリィちゃんが通りかかる。

そしてそのままぐわっと手を掴まれる。

えと?

サリィちゃん?

顔がスゴいことになってますけど?


「エマちゃん、悪いことは言わないから、このままオリビアさんの所に行こう。」

「あれ?なんかありました?」

「…異世界から呼ばれた人の呪い…。」

「…マジで?」

「あれはいけないよ…エマちゃん。いくらなんでも。」


おや?急に背筋が寒く…。


「サリィ!今すぐエマちゃん連れて逃げ!」

「了解。」

あ、あれ?幻覚か?

幻のゲンゾウモデル『ハリセーン』を握りしめた侍が廊下を疾走してくる。


「エマちゃん、こっち!」

「…ワルイゴハ、イネエカ…でござる。」

「なま○げ?」

「いいからこっち!」

そのまま侍を振り切って、無理矢理狭い窓から外に捻り出された私は、鮮やかに窓から降りたサリィちゃんに引っ張られ、大通りまで走った。

…どうしよう、今見た侍、オリビアさんのような気がする。


「で、何日間あれ続くの?」

「ダンジョンに置き去りにされた日から三日間。」

「あと一日半か。」

「え、そんなに?」

「オリビアさん、帰ってきてからずっと部屋に籠って砂時計ひっくり返しつつ、分単位まで計算してたから間違いない。」

「…随分とご迷惑お掛けしたようで。」


ん?

ということは、私は魔力をごっそり奪われてから丸一日位、意識失ってたということか。

覚えてなさいよ、グレース。

三食抜いた恨みは怖いわよ。

変な方向に震えている私の様子を勘違いしたのだろう。

サリィちゃんが素敵な提案をしてくれた。

「今からお店戻るとオリビアさんが怖いから、紹介所で利用者登録しようか?」

「おお、行きます!行きます!是非に!…でもいいの?」

「元々オリビアさんが変な時間稼ぎしようとしたのが原因なんだから。エマちゃんの呪いは…面白かったから許す!」

サリィちゃん爆笑。

ウケてくれましたか!

「それで、今さらですが確認したいのだけど。」

「うん?」

「その白い子、どうした?」

「わふーん。」

「あ。」

勢い余って連れてきちゃった!

一瞬血の気が失せる。

あれ?でも書籍の魔物ってダンジョン内限定だよね?

「…消えてない?」

「ダンジョンにいたの?」

「んー。そうなんだけど。」

サリィちゃんの案内で紹介所まで歩きながら、シロと出会ってのあれこれを話す。


「そうかー。でもなんかその子魔物っぽくないね。」

「あ、そうなの?」

「負の魔力が随分と薄いよ。どちらかっていうと精霊寄りかなあ。」

「精霊…。」

そうか。グレースに近い生き物っていうことか。

確かに最初から暴れることもなく、今もサリィちゃんに撫でられて幸せそうだ。

サリィちゃんも『なにこれ、ふわふわ~!』と言いながらシロを撫で回している。

わかりますよ!すごく癒されますよね!

交代でシロを抱っこしながら大通りを歩き、街の中心である領館に随分と近付いた辺りで。

周囲の建物より一回り大きい白い壁の建物が見えてきた。

広い入り口から多くの人が出入りする姿が伺える。


「あれが紹介所だよ!」

「へー!人がたくさん出入りしているね!」

服装を見る限り、貴族、商人、そして冒険者と様々な立場の人が出入りしているようだ。

サリィちゃんに続いて紹介所に入る。

右手奥に長いカウンターがあって、そこに一定の間隔を空けた状態で職員さんが座っており、左手にはいくつものテーブルと依頼票を張っていると思われる掲示板があって、空気の動きで紙が時々ふわりと揺れる。


おお、大盛況ですね!

カウンターに座る職員さんの前には受付を待つ人の長い行列が出来ている。

サリィちゃん曰くアサの十一の鐘が鳴った後だから、もう少しすると空いてくるとのこと。

お昼御飯ですね!

左手にあるテーブルの方に向かうと、ちゃんと棲み分けが出来ていて、食事をとっている人の姿が掲示板から離れたテーブルを中心にちらほら見える。

待ち時間の有効活用ということで、サリィちゃんと私は収納から出したお茶とお惣菜で腹ごしらえを。

うん、本日もご飯が美味しいです。

ちなみにシロは足元で…お菓子を食べています。

ダンジョンのシルヴィ様の書庫でお肉を出してみたんですが見向きもせず。

そこで試しにと思ってお菓子を出してみたら大喜びだった。

わりとこじんまりとしたこの体のどこにこれだけのお菓子が収まるんだろう。

そんなに食べて体に悪くないんだろうか。


「あ、その場所空きますか?」

「っと、はい。片付け終わったら空きますよ!」


待つ人の列が短くなってきたので、そろそろカウンターに並ぼうかと片付け始めたところで、物腰の柔らかい男性に声を掛けられた。

カウンターの列が短くなると同時にこちら側が混み始めましたからね。

「君の飲んでいるそのお茶、良い香りだね。どこに売っているの?」

「あ、このお茶はオリジナルで、茶葉を独自に組み合わせているそうですよ。私も知り合いの方に分けてもらったんです。」

キラキラした瞳で聞かれたから思わず答えちゃったけど。

どこのどちら様でしょうか?

「ああ、ごめんね、急に。つい珍しい物を見つけると初対面でも食い付いちゃって。

あ、私は最近こちらで商売を始めたんだよ。市場の近くに露店を出すから、見かけたら是非寄って!お安くするよ。」

「やっぱり商人さんですか!物腰から、そうかなと。こちらこそ寄ったらよろしくお願いしますね!」

お安くしてもらえるなら大歓迎ですよ!

世界を違えても、商売されている方が商魂逞しいのは同じですね。



ーーーーーー



エマとサリィがカウンターに向かった後。

先程エマに話しかけた男の隣に別の男が座る。


「彼女でいいのか?一見、普通の女の子に見えるけど。」

異世界人独特の容姿をしている、そういう意味では目立っていたが。

血を引く子孫には稀に現れる容姿の特長もあるから必ずしも異世界から呼ばれた本人という訳でもない。

正直なところ目立たないし、どうということはない普通の少女に見える。

一方で話しかけた男の方は面白いものを見つけたような笑顔を見せた。


「彼女は特別だよ。縁を結んでおきたい相手だ。」

「それなら依頼の内容を調べておこう。」

「よろしく頼む。」





ーーーーーー




「次の方、どうぞ。」

「はい。よろしくお願いいたします!」


一番人の少ない列に並んだところ、女性の職員さん…レベッカさんが担当となった。

笑顔が素敵な癒し系です。ふんわりした巻き毛がおしゃれさんですね。

「あら、ふふ。こちらこそ!それで本日は…利用者登録と、どんな依頼かしら?」

「はい。私に狩りを教えてくれる方を紹介してもらいたいんです。

あ、こちらが私の紹介状になります。」

レベッカさんは記入済みの利用者登録書と手数料を受け取った後、紹介状にざっと目を通した。

そしてカウンターに並ぶ人がほとんど居ないことを確認すると、私達を奥の打合せスペースへと誘導する。

それからテーブルの上に白紙の依頼票を置いて、簡単に紹介所のシステムについて説明してくれた。

依頼者は、まず手数料を払って紹介所に利用者登録をする。

それが済むと今度は紹介所に依頼票を作成してもらい、掲示板にそれを貼る。

依頼票の内容は、例えば私のように人材の紹介だったり、商品の売買、探し物や人の捜索、街の掃除や買い物等々多岐にわたるとのことだった。

そして依頼を受けたい人は、同じように利用者登録をしてカウンターで依頼票の仕事を受注する。

ちなみにすでに利用者登録を済ませている人は、そのまま依頼票を掲示板から剥がしてカウンターに持って行けばいいそうだ。

ただ契約を結ぶかどうかは依頼者次第なので、気に入らなければ断ってもいいらしい。

そして依頼者と受注者が合意すると当人同士で契約書を交わす場合が多いが、私のように素人の場合は、紹介所が契約書を作成し、間を取り持つような形で契約する方法がお勧めだそうだ。

そうすれば、契約で揉めた場合など紹介所が仲裁してくれるのだとか。

ただし、その分手数料がおまけに掛かるけど。


「エマさんの場合、紹介状の内容から判断して該当する人材が限られるから料金設定は高めの方がいいわね。その代わり月額の契約ではなく、お休みの日を契約日に指定して日額でお給料を支払うようにすればいいわ。そうすれば腕のいい冒険者の人が一日ならと担当してくれるかもしれないし。その方が色々無理しなくていいから貴女も助かるんじゃないかしら?」


確かに。

イメージ的には短日のアルバイトみたいなものか。

「その場合、契約書はどうなるんでしょうか?」

「日付が空欄のものを用意しておくから、カウンターに受注者と来てもらって日付の記入と所定の場所に署名をしてもらえばいいわ。あと、契約金の支払いはその場で現金にするか、事前に預けておいてもらってその都度こちらから払うようにしてもいいわよ。」

「掲示は常時でいいんですかね?」

「そうね、お休みの予定が決まったら二日前までには掲示するようにしましょう。

私も良さそうな人がいたら声を掛けておくわ。」

「ありがとうございます!」

そういうわけで契約に関わる諸々を紹介所に丸投げ、その代わり、予定外の費用が発生する場合は直接本人と私が交渉することにして依頼票を作成した。

オリビアさんの条件含めると、どこの箱入り娘だよ?!って言うくらい過保護な条件になっている気がするが…そこはゴクンします。

だってその方が生き残れる可能性高そうだし。

「さて、依頼票の掲示もしたし、ダンジョンに戻りますね!」

意気揚々と言った私に、サリィちゃんの残念そうな視線が突き刺さる。


「オリビアさん、どうやって突破するの?」

「…気合?」

「ハリセーンの奥義で切り捨てられるよ?」

「え、ハリセーンって、紙で出来て…。」

「切り捨てられるよ。」

大事なことなんで、二回言いましたか!

そんな紙で切れるわけ…オリビアさんなら切れるんだろうな。


「どこかに緊急避難します。」

「ならあそこしかないよね。」


はい。

避難できそうなの、あの場所しかありませんよね。






遅くなりました。

最近タブレットの調子が悪くてよくネットが切れたり、電源落ちたりしてます…。


更新にだいぶ時間がかかるやも知れません。

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