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エル・カダルシアの魔法手帖  作者: ゆうひかんな


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魔法手帖三十八頁 ドレスと、浴室


真っ黒い空間を抜けた先は豪奢な館の一室だった。

窓はカーテンが締め切ってあり、外の景色は確認出来ないものの調度品の雰囲気が違う。

所謂、西洋風な世界からアラビアンナイトの世界へと迷い混んだ、そう思ってもいいくらい違う。

とはいえ、実は王国内でした、という可能性も捨てきれないからここがどこかは保留だな。

「主は間もなく帰る。それまでに、服を着替えろ。」

渡された赤色のドレスは一目で高級品と判るもの。

ただレースの使い方やデザインが派手で私では衣装に負けるな。

「もう少し地味なのない?」

「…ホント女って着るものにうるさいのな。」

これしかないぞ、そう言って投げて寄越したのは落ち着いたベージュのシンプルな形のドレス。

おお、これいいじゃないですか。


「ありがとう。ついでにお風呂も借りていい?」


お礼を言われたのが意外だったのか、軽く目を見開いた後、ぶつぶつ文句をいいながらも、浴槽のある部屋へと案内してくれる。

しかも、ちゃんとお湯を張り、タオルと石鹸のようなものを用意してくれたのは予想外に親切だった。

「外で待機している。…逃げだそうなんて思うなよ?」

軽く脅しをかけてから、彼は出ていった。

浴槽のある部屋自体は小さな作りで、部屋を入ってすぐの場所にカーテンで仕切りがある。

たぶんそこが脱衣場、その奥に湯を張った浴槽があるらしい。


「…ふふ、チョロいな。」


魔法手帖を取りだし転移の出口用の魔紋様まもんようを脱衣場に設置する。

魔力の量を最大限絞ったから結構時間がかかってしまった。

大量に魔素を使うとゲイルさんみたいに蹴破って来る人いるからね。

しかも浴室だといろんな方向に危機だからな。

あとは彼女(女王)が呼び出した師匠(仮)を待つだけ。

…めんどくさいからもう師匠でいいか。


体感で五分…


十分後…


十五分後…


「おっそいな…師匠。」

二十分待ったところで、アリバイ作りも兼ねてお風呂に入った。

仕方なく、お風呂をお借りするだけですよ(棒読み)

大事なことなので二回言いました。


はー。

二ヶ月近く入ってないからな。湯船には。

日本人はやっぱり湯船でたっぷりのお湯に浸かりたいよねー。

石鹸もどきで体を洗ったところで、さて出ようと浴槽から出た瞬間。

「…そこにいるのか?」

「し、師匠!ちょ、まっ!」

遠慮なく開けられるカーテン。

視界に見覚えのある黒いローブが揺れる。

そこにはカーテンを開けたまま固まる、師匠の姿があった。

それに驚いた私は、そのまま浴室の床を濡らすお湯で足元を滑らせる。

私の姿を視界に収めた師匠が、目を見開くと手を伸ばした。

「!」

「き、…!」

いやー。人間の条件反射って怖いですねー。

こういうベタな状況になるとちゃんと女子らしい悲鳴って出そうになるもんですね。

師匠が体ごとローブで拘束して口元を押さえてくれなかったら、確実に人呼んでましたよ。


「…いいか、こういうときは先ず冷静に状況を把握しろ。今の状況は理解できるな?理解できるようなら声はたてるな。いいか、手を離すぞ。」

「…師匠、遅いです。それからいきなり手を出すの止めてください、怖いです!!」

「足元を滑らせるような状況を作り出したお前が言うな。というか、なんでこんな場所に出口を設置したか、言い訳できるものなら聞いてやろう。内容によってはこのまま沈めてやるからありがたく思え?」

「女子の浴室覗くなんて、黒歴史決定ですね!師匠…っイタイイタイイタイ、暴力はよくないと思う!!」

「この事を漏らしたらお前の存在自体消してやろう。そうか最初から存在しなかったことにすればいいんだな。そうすればお前を取り巻く諸問題が一気に解決する。」

「出来そうで怖いわ!女王様がここにしろって言ったんですよ!城の中で一番警備が緩い場所だからって!」

「だからって拐われた先で暢気に湯へ浸かる馬鹿がいるか!」

「だって久しぶりの湯船ですよ!ドレスも着るし、ちょっとは綺麗にしたいじゃないですか!」

「安心しろ、湯に浸かろうが平凡な顔は全く変わってないぞ。」

「師匠、セクハラです。若干パワハラの香りもします!」

「ぱわは…もういい。帰るぞ。」

「あ、それはダメみたいですよ。彼女(・・)が納得してないので。」

「女王が?」

「『うちのかわいい国民に手を出したバカに嫌がらせしないと気がすまない』そうです。あ、ちなみに師匠にも伝言預かってます。『サボった分しっかり働きなさい』だそうですよ。…なんか後回しにしたアレコレが色々バレてるみたいですね。」

「手が足りてないのだ、仕方がないだろう。」

そう言って師匠は深いため息をついた。

目の下にうっすらと浮かび上がるクマが寝不足を物語る。

「女王に"盾"は逆らえないからな。…策はあるのか?」

「策なんてありませんよ。」

「馬鹿だとは思ってたけど、ここまでとは…。」

「失礼ですね、師匠。」

うふふ、策はなくてもいいんですよ、師匠。

ほんと、女王様は人が悪い。

私はニヤリと笑った。


「大丈夫。今回は、なにもしない(・・・・・・・)のが正解なんですって。」





ちょっと短めです。

※あわてて投稿したので消し忘れありました。

若干文脈が変わります。

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