魔法手帖三十四頁 ステータス(その3)と『女王の魔眼』
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エマ / Age17
HP:5520/6523
MP : 12300/12386
攻撃:3(+)
防御:3(+)
魔法攻撃:35(+)
魔法防御:62(+)
〈戦闘スキル〉
神聖魔法:Lv.2 / 火魔法:Lv.1 / 風魔法:Lv.1 / 水魔法:Lv.1
/ 土魔法:Lv.1 / 闇魔法:Lv.1
〈生活・生産スキル〉
魔法紡ぎ:Lv.MAX / 料理:Lv.4 / 掃除:Lv.4
〈固有スキル〉
完全防御 / 空間魔法(収納)/ 全言語翻訳・全言語通話(一部解放)
/ 全能力向上:Lv.2 / チャンス到来:Lv.2 / 魔法手帖:Lv.2 / 女王の魔眼 /
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『女王の魔眼』
魔紋様を読み解くことができる。
隠匿・虚偽・改竄のスキルに惑わされることなく他人の持つステータスを見抜くことができる。
また魅了・意識操作系統の魔法に耐性を持つ。
伝承では初代女王が持っていたという、固有スキルのひとつ。
ダンジョンから帰ってきて、レベルを確認しようとしたら固有スキルが増えていました。
…だんだん人間離れしてきた…。
なんでダンジョンの魔紋様が読めたのか、とか不思議に思ってたんですよ。
これで解決だね!とかその程度に思ってました、それに使うことはないだろうなと。
そう、さっきまでは。
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三人揃ってお店の廊下を移動する。
ディノさんはお店の一番奥にある部屋で現在治療を受けていた。
口数の少ない二人に気を使って黙っていたけど、この際なのでちょっと聞きたいことを聞いておく。
「お二人は魔法や魔紋様の専門家ですよね。
あくまでも使用者の感想なんですが、この国でいうところの仕草や呪文で発動するタイプの魔法って、効果や影響を及ぼす範囲が大雑把な感じがしますね。」
例えば火を点す魔法。
魔力さえあれば誰でも使えるように作られた魔法の仕組みは単純だ。
どの程度の範囲に火がつくかとか、その火にどんな効果があるとかそういう細かい設定が出来ない代わりに、火を簡単に作り出すことができる。
その分、魔法の発動は呪文や仕草で代替されるから使用者の意図は反映されない。
だから注ぐ魔力が多すぎれば本人が意図しないような火力で発現したり、影響を及ぼさなくてもいいような場所まで火がつくことがあるのでコントロールの練習が必要となる。
一方、魔紋様は効果が限定的だ。
紋様に効果を付与するのだから仕方ないのだが、製作者の意図で細かく範囲や効果が指定できる代わりに、製作者の意図に忠実で付与したことしか出来ない。
その分、コントロールの難しい魔法でも魔力量が足りれば必ず発動できるし、ピンポイントでターゲットが指定できる。
そのコントロールしやすい特性を活かして、各種道具類に魔紋様を刻み込む"魔道具"という分野の技術が発達したのだろう。
私の拙い説明にも関わらず、概ね合っているという感想と、補足の知識をいただいた。
オリビアさん曰く、魔紋様の場合、もっと単純な効果を付加するだけならそれこそ魔法と同じ使い方ができるとのことだった。
紙に印字するといった加工は必要だが、後は紙などに魔力を流すことで火がつく。
「そもそも本来魔紋様の役割は、単純な効果を呪文や仕草なしに発現できることなのよ。例えば『燃焼』、『崩壊』あと『凍結』、『風力』とかもそうね。というか、世の中の魔法紡ぎの人はその程度の単純な効果を付与した魔紋様を紡げれば充分収入になるのよ。魔法紡ぎ始めて一ヶ月程度で、効果だの範囲だの言ってるエマちゃんが異常なの。」
多分にあきれを含んだ声でオリビアさんに言われた。
あれ、これが標準じゃなかったですか!?
てっきり皆出来るもんだと…ゲイルさん、「天然だな」とか納得しないでください!?
ふむ、そうだとすれば。
「もし、ディノさんが意図的に何らかの攻撃を受けていた場合、その効果が体内に残っている可能性はないのでしょうか?」
魔法か、魔紋様か。
ピンポイントでターゲットを絞ったことを考えれば私は後者だと思う。
「だが、浄化による治療も体内の魔素を安定させ循環させる治療も受けたぞ?」
「それが、神聖魔法や、光魔法による攻撃だった場合には?」
「「は!?」」
「勘ですけどね。だってそうでもない限り、浄化も効かない、魔素が原因でもない病の理由にはならないかなって。」
ゲームでいうところの、状態異常。
あれって戦闘のターン数とか回復薬や魔法とかで解除できていたけれど、それはゲームの中の話。
現実の場合、適切な治療を受けなければそれがずっと続くわけだ。
「!」
「この考えが正しいかどうか、ディノさんのステータスを確認しようと思うんです。」
ステータスに何らかの異常が表示されていれば、私が治せないにしてもオリビアさんやゲイルさんが解決法を知っているかもしれない。
まさか他人のステータスを覗き見する日が来るとは思わなかったよ。
ディノさんの寝ている部屋につく。
「…おじゃまします。」
返事がないとわかっていても、一応声を掛けてからオリビアさんの後に続いて部屋のなかに入る。
ずいぶん、痩せちゃったな。
辛うじて水分は採っているようだけど、それもいつまで続くかわからない。
絞りだすようなゲイルさんの声が聞こえた。
「医者からは、あと二、三日もつかどうか…そう言われている。」
「ゲイルさん…ゲイルさんは大丈夫なんですか?」
親しい友人の命が目の前で燃え尽きそうになっている。
心の中で様々な葛藤が渦巻いているに違いない。
そこまで気が回らなくて焦ったような私の様子に、ふっとゲイルさんの表情が緩む。
「…ありがとう。それよりディノを…頼む。」
「…わかりました。先ずはステータスを確認します。」
何度も書き直して、とても苦しみながら書いた章でした…
遅くなったのはそれが原因です…。
真面目な話がかけないタイプなんだってことが、嫌でもわかりました(涙)




