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エル・カダルシアの魔法手帖  作者: ゆうひかんな


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魔法手帖二十八頁 魔法紡ぎと『アリアの花冠』

まず、部屋に防音・遮光結界をはる。

防音はまあ、想像がつきそうなものだが遮光はオリジナルで、こちらの任意でオン、オフ出来るように設定している。

確かに外からの光がない方が糸の動きが見えて紡ぎやすいため意外と重宝している。

ちなみに、この結界をはるだけで、ステータスの魔法防御の数値が上がっていたのは嬉しい誤算だ。


次に、何を紡ごうか考える。

頭の隅にダンジョンに潜ったままの二人のことがよきる。

「場合によっては手助けになるだろうし、広範囲まで攻撃が届くものを。」

頭の中で効果を想像し、状況に合わせた変化を出来る限り細部まで再現する。

それを二、三種類。

残りのMPの値を見ながらそのうちの一つをこれから紡ぐのだ。

その前に魔法手帖のページの余白へ、考えた魔紋様まもんようの構成や効果、作りたい魔紋様まもんようのイメージなどをメモの要領で羽根ペンを使い書き込んでいく。

これを始めたのは、一度うっかりノートに書く要領で余白に書き込みをしてしまったことがあるんですよ。

あの時は焦ったわ〜。

でも、書き込みがあっても魔紋様まもんようの発現には影響がないようなので、以来遠慮なく使わせていただいてます。


「さて、紡ぎますか。」


まず、発動の合図となるキーワードを設定する。


通常、この世界で魔紋様まもんようを発動させるためには何かしらの合図、例えば技の名前とか、呪文が必要になるそう。


そ・う・なんですが。


…技の名前とか、呪文とか間違えずに覚えていられる自信がミジンコ程もない。

えーと、とか言ってる間にやられてしまうなんてイヤすぎる。


なのでスマホのように、キーワードを言い魔素を流すと、魔法手帖が最適と思われる魔紋様まもんようを検索、発現するように設定した。

というか、一番真っ先に考えた魔紋様まもんようがコレ。

魔法手帖に"検索エンジン"みたいなものをを付けたかったんですよね。

しかも手帖を開かずに済むように赤い表紙の柄の一部になるようにカスタマイズしましたよ!


しかし、さすが『魔法紡ぎ:Lv.MAX』様々。

機能をあれこれ想像するだけで出来てしまいましたよ!


「火・攻撃・範囲大。」


キーワードを言った後、魔紋様まもんようを紡ぐ。

紡いだ魔紋様まもんようは一度全容を私に見せたあと、魔法手帖に吸い込まれた。

ちなみに魔紋様まもんようを確認したいだけのときは初めに「検索」という言葉を入れてから魔素を流しキーワードを言うと対象ページが開く。


便利だ。


ただ、今のところ、こういう戦闘用の魔紋様まもんようは紡ぐばかりで実際に使えていないから、ちゃんと効き目があるのか、効果の範囲はどのくらいか、想像と現実の誤差がわからないのが怖いところ。

補助系や生活系の魔紋様まもんようは試しているから調整出来てるのだけどね。

本当はきちんと予測した通りか実験したいんですけど、ここでやったらマズイですよね…



実験できるような、何かいい方法がないかなと考えながら一度結界を解除する。

扉をあけて辺りを伺うけれど、話し合いはまだ続いているようだ。

「…魔法紡ぎの資料でも読んで時間を潰そう。」


再び部屋のベットに横になり、魔法紡ぎの教本に目を通す。

この店にきて初めて知ったのだけれど、魔法紡ぎのスキルを持つ人は、まずこういう教本で紋様と効果を学ぶ。

この世界に魔法紡ぎのスキルを持つ人は一定数いるようで、起点の魔紋様まもんように紐付いた属性や系統を持つ紋様を専門に紡ぐことが多い。

例えば、火属性の起点の魔紋様まもんようを持つ人は火属性を纏う紋様を、治癒系統の起点の魔紋様まもんようを持つ人は、治癒系統の紋様をと。

なぜなら得意分野の魔紋様まもんように紐付いて紡いだ紋様は出来上がりの精度も上がり、紡ぐ時間もかからない上に高く買い取ってもらえる。

得意でない魔紋様まもんようも紡ぐことはできるが、時間が掛かる上に効果が限定的になるらしい。


そうして紡がれた紋様に淀みなく魔素が流れ発現して、初めて商品と呼ぶことが出来るのだそうだ。


そして、私の持つ『アリアの花冠』。

教本の最後の方で紹介されていた。


属性は無属性。

この世界の認識で無属性は『どんな属性とも相性がいい』。

つまり、極めれば何でも紡ぐことが出来るそう。


まさに、魔紋様まもんようの最高峰とも呼ばれるべき創造神からの贈り物。

そして魔法紡ぎにとっては憧れの魔紋様まもんよう、と。


…なんかこう、私ですみませんとか言ってしまいそうだ。



ふと、外を見れば、お昼時を過ぎたあたり。

遠くで時を知らせる鐘が鳴っている。


ならばお昼ご飯を作ろう。

お腹がすいては戦が出来ないと偉い人が言っていた。


うむ、ご飯は正義だ。

異論は受け付けない。


そう、思い扉をあけるとオリビアさんが扉のすぐ近くにいた。


「あ、エマちゃん、丁度よかった。貴女をお誘いに来たのよ。」

ふわりと優雅に笑うが、やはりというか纏う雰囲気に余裕がない。


「どうしました?」


「急なんだけど、ちょっとばかり私達と地下迷宮(ダンジョン)を観光しない?」






昨日連続で投稿しようとしたら、寝てしまいました(泣


前話もの足りなかった方申し訳ありませんでしたー!


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