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魔法手帖三頁 新たな思い出と、魔法 

開けた扉から見える外の景色は明らかに森の中ではなく。


「これはね、限られた人だけが使える魔法の一つ。扉を自分の好きな場所へ繋ぐ事が出来る。」

ただし、行ったことある場所だけなんだけどねと言いながら、家の前を通りかかった知り合いらしき人と何事もなかったかのように挨拶をしている。

これ、外に出てみても大丈夫なんだろうか?

「外に出ても大丈夫だよ。」

いつの間にかこちらを向いていたルイスさんが小さく笑いながら答えてくれる。

初めてこの現象を見た時は大体みんな同じ反応だからね、と言いながら扉の向こうにひろがる喧騒を見つめている。

「みんな、ですか?」

あれ、ちょっと引っかかった。

そう尋ねると、ルイスさんはしっかり説明したいからね、と食堂まで戻る事を提案してきた。食堂、という言葉を聞いたからか、お腹がきゅうと鳴る。

早くしないと料理冷めちゃうわよ、というカロンさんのも聞こえてきた。

ふと、ルイスさんの視線を追って外の景色を眺める。


夕方の喧騒、帰り道を急ぐ人々、お腹のなる音と、自分を呼ぶ明るい声。

知らない場所なのに、思い出と重なるなんて。


かつて過ごした幸福な時間は、こんな未知の場所であっても変らずにあることが嬉しかった。

ルイスさんやカロンさんの対応から想像するに、私はたぶん異世界転移、というものをしたのだろう。

突然転移したのに、自分を失うことなくこの世界に辿り着き、見つけてもらえたことは幸運だった。

とりあえず、生きては行けそうな予感に少し安堵する。

もちろん、今はまだ不安しかないけれど。

「エマと申します。いろいろお世話になります。」

改めまして、ルイスさんとカロンさんにご挨拶。

食事をしながら聞いてていいよとのことで、只今鶏肉のような食感のお肉とゴロゴロした大きめサイズのお芋が入ったスープを堪能しています。

カロンさんの味付けは少し濃い目だけど、芋と淡白な味のお肉にはこの位がちょうどいい。

料理上手ですね、カロンさん。

「…そろそろ説明始めてもいいかな?」

私の見事な食べっぷりにルイスさんは落ち着くまで待っていてくれたらしい。

昔からひどく緊張した後でも、食事の量だけは変わらないからな。

あら、笑顔の裏でドン引きしてますか。大丈夫、いつもより遠慮はしてますよ、一応。

「まずは、君がエイオーンに呼ばれた理由から説明しようか。一番知りたいのはそこだろうし。」

静かに皿へスプーンを置いて、ルイスさんを真っ直ぐに見つめる。

…突然に呼びだされて、すべてを奪われるような思いをして、少しの理不尽さも感じないとしたらそれは明らかな嘘だと思う。

少なくとも、私はそんなに人格者ではない。

こうやって親切にしてもらっているけれど、だからといってこの気持ちが相殺されるわけではない。

そういった気持ちを口に出さない代わりに、これから説明すことに嘘偽りは許さない、視線にはそんな思いを込めた。

伝わったのだろうか、少しだけルイスさんの笑顔の質が変わった気がした。

「この世界にはね、君の元いた世界で想像されているような、「魔法」というものが現実に存在する。それは大気に溢れる魔素の力を使って具現化することをいうんだ。」

カロンさんが軽くパチンと指を鳴らすと、指の先に小さく丸い火がついた。


おー、キャンプとかで使えたら便利だね!


「あれは古くからある魔法だね。このあたりは教われば出来る。一方で、学んでも身につかない魔法も存在するんだ」

わかりやすく見本を見せよう、と言ったあとルイスさんは食堂のテーブルの上を軽く叩いた。すると何もなかった机の上に分厚い紙の束が現れた。

「この魔法は魔紋様まもんように集めた魔素を流して具現化するもの。君よりずいぶん昔に呼ばれた人が紡いだ紋様だ。」


え、呼ばれた人、他にもいたの?!


1話2話、題名変えました。

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