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エル・カダルシアの魔法手帖  作者: ゆうひかんな


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魔法手帖二十五頁 王の耳と、古代魔法

「これを紡いだのが『女王』だと?」


ひらり、と紙を机上から取り上げしげしげと見つめる。

そこには『ヨドルの森』で保護されたという異世界から呼ばれた人の一人が紡いだ魔紋様まもんようが印されていた。

完全なオリジナルで起点の魔紋様まもんようは確かに『アリアの花冠』。

かつてブレストタリア聖国で"奇跡の聖女"と呼ばれたアリアドネ=ルブレストが発現させた魔紋様まもんようであり、彼女の愛称から名付けられたといわれる。


まさか自分が生きているうちに見る機会があろうとは、な。

喜ぶべきなのであろうが、政治的には面倒な事態が起こりつつあることは間違いない。



ここはサルト=バルト二ア王国、王城にある謁見の間。

謁見の間とはいうものの、現在部屋にいるのはわずか四人。


一人はサルト=バルトニア王国国王アンドリーニ。

一人は王の後ろに控える護衛。


そして、ディノルゾ=カラギーニ騎士爵

ゲイル=トルスタイフ騎士爵。

現『双星』である二人。


二人は今まさに"王の耳"として得た情報を奏上するところだ。


「状況的にみて、本人は無意識に紡いだようですが、だからこそ本物の『魔法紡ぎの女王』である可能性が高いかと。後に受けた報告によると、『魔法手帖』も発現させたとのことです。」

ディノルゾの報告は続く。

「現在、『魔法手帖』に印されている魔紋様まもんようはわかっているだけで二つ。一つは『体内から術者が異物と認識する物を排出』する効果をもち、もう一つは『補助魔法の一種』とでも言うべきでしょうか?」

こちらをご覧ください、というとゲイルが真ん中から二つ折りにされた大判の紙を広げる。

右側には複写された魔紋様まもんようが、そして左側には何も書かれていない真っ白な紙のまま。

そして右側の魔紋様まもんようへ集めた魔素を流しながら、言葉を小さな声で唱え発動させる。


「それは…。」

「紡いだ本人は『ステータス』と呼んでいました。」

やがて左側の白い空間に上から術者本人の名、年齢と、順に情報の記された一覧が現れた。


ーーー

ディノルゾ=カラギーニ / Age32

HP:6652/7868

MP:3865/10925

攻撃:52

防御:61

魔法攻撃:87

魔法防御:76

〈戦闘スキル〉

火魔法:Lv.4 / 風魔法:Lv.4 / 水魔法:Lv.4 / 土魔法:Lv.3 / 

闇魔法:Lv.3 / 魔法抵抗:Lv.3 / 召喚:Lv.1 / 

〈生活・生産スキル〉

構造解析:Lv.4 / 構造分解:Lv.3 / 鑑定:Lv.2 /

〈固有スキル〉

空間魔法(収納・小) / 魅了 / 神託

ーーー


「HPというのが体力、MPというのが魔力という力の値です。我々は魔素を集めることで魔法を発現させている、としていましたが、このステータスをみると魔素を魔力という力に変換してその力を使用し発現していると考えられます。

過去の研究者によって、いろいろな方面から調べた結果、人により集められる魔素の量は違いがあり、多く集められるものが大きな魔法を使うことができると証明されましたから、その考えを更に裏付けるものとなるでしょう。

このステータス表示を発現するために必要な魔素の量を魔力に換算すると、およそ4000から5000。ゲルターの研究者を魔素を集める量の大小で班を二つに分け、魔素を多く回収出来るる者の班は全員問題なく発現させることが出来ましたが、回収量の少ないとされる班の者はステータス表示を発現させることが出来ませんでした。」

「ちなみに他の項目は表示されている数値とレベルの値が高いほど、純粋な戦闘力や使える魔法の種類、規模、精度が上がっていくと考えられています。」

まだ検証中のため全ては解析できませんでしたが、とディノルゾは前置きした上で、

「実際に戦闘や魔法を使用したのちステータス表示で確認すると、HPの値が戦闘行為の時間や対戦手法、MPの値は使用した魔法の規模や練度で減っていくことが確認できました。また、スキル以外の値は習熟度により1〜10ずつ上がっていくようで、この上がり方は元々レベルが低い人間ほど上がりやすいようです。」


「なるほど。使い方によっては今よりも更に国力を上げることができるか。」

王は次にゲイルへと視線を向ける。

「その方からは、何か報告はあるか?」


「…はい。検証にはロイトの組織の人間も参加しましたが、固有スキルの項目にロイトの人間だけの共通点がありました。」

ゲイルは言葉を慎重に選びながら話を続ける。

「参加した者全員が『空間魔法(転移)』のスキルを持っていました。」

「ちなみに、ゲルター側の参加者も同じく『神託』のスキルを持っています。」


「ほう、職に必要な固有スキルを持つ者を効率よく見つけられるという事か。」

「それも(・)ありますね。」

「それも、とは?」

「私の戦闘スキルに『召喚』というものがありました。」

「『召喚』?」

「はい、現在過去の文献を洗い直しているところで、まだ詳細は掴めていませんが。」

「…まさか、古代魔法か(・・・・・・)?」

「魔法は血が伝えるもの、可能性はあります。」

「…調査はいつから始められる?」

「許可をいただければ直ぐに。」


「ふむ…。」

アンドリーニは『双星』の二人を見つめる。

今回は些かこの二人が異世界から呼ばれた少女に肩入れしすぎているように見えなくもないが。

"王の耳"として、誠実に得た情報の検証を行い、奏上してくる彼らの態度は評価している。

たかが小娘、迷子の気まぐれに作った魔紋様まもんように国の長たる王が考えを左右させてはならぬ。

とはいえ、今は情報が欲しいところだ。

外交の武器となる情報が。



「わかった。許可しよう。『初代女王の大書庫』(ダンジョン)への入室を。」






王様きました。

良くも悪くも厳しい人にしたいです。

ヘナチョコな私に書けるか好ご期待…


戦闘スキルの召喚魔法→召喚に名称を変更しました。

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