表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エル・カダルシアの魔法手帖  作者: ゆうひかんな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/187

魔法手帖二十頁 君からは、この世界はどう見えるのか

あの後お昼ごはんを食べ、復活したカロンさんは複写した魔紋様まもんようを握りしめ、うきうきでお仕事に出かけました。


「エマちゃーん、期待しててね!」

ああ、カロンさんの弾ける笑顔が眩しい…。


午後はルイスさんと食材の買い出し、ルイスさんはそのまま自宅でお仕事をするそうなので、私はその間お夕飯の準備をすることにしました。

今晩のお夕飯は王道のハンバーグですよ!

牛と豚の合挽き肉にパン粉…はなかったのでナイフで出来るだけ細かく刻む。

牛乳にパン粉モドキを浸してから、合挽き肉に混ぜてあとはひたすら捏ねる。

手の熱が移る前に捏ねた肉を整形して皿に乗せた。

そして異世界らしさ満点の、空間魔法(収納)へ。


これは便利ですね〜!

ルイスさん曰く時間の経過がないそうなので、生のまま食材を入れておいても大丈夫なんだとか。

あとはトマトベースのソースとコンソメスープを作って同じく収納へ。

そして、今日チャレンジしたいのは…

マヨネーズですよ!

流石に香辛料がないからドレッシングは難しいが、オリーブオイルと卵、ワインビネガーがあるから出来るのではないかと思うのです。

ちなみにワインビネガーは異世界転移仲間である先輩方の頑張りの賜物だそう。

なるほど、発酵食品があるなら、この世界にも食品を発酵させるという概念はあるのね。

もしかしたら、味噌や醤油も…。

うん、今度そんなお店がないかカロンさんに聞いてみよう。

それか魔紋様まもんようで発酵を…

はっ!マズイまた無意識に魔紋様まもんよう創っちゃうところでした。


ルイスさんから注意されたのだけれど、私は魔法紡ぎの能力が欲求に対して忠実で、私が欲しいと思うものは、例えば善悪の判断、体力や精神力の余力ありなしに関わらず、気持ちとは裏腹に体は魔紋様まもんようを紡ごうとしてしまう。


つまり、まだ能力のコントロールが未熟なんだそうだ。


ちなみに以前、二日酔いに効果のある魔紋様まもんようを紡いだ時に、強い気持ちであるほど効果が高いと感じたのは決して的はずれではないそうで、魔紋様まもんようの効果は高ければ高い程良い、という訳でもないそうだ。

例えば薬に副作用があるのと同じなんだろう。


力をコントロールするために、先ずは感情をコントロール出来ないと。

とりあえず、余力があるときに魔紋様まもんようを紡ぐ。

それから魔法手帖に記されたものに魔素を注いで発現させる。

この繰り返しを訓練とすることにしました。


料理の下拵えが済んだので、ルイスさんの様子を見に行く。

すでに外には夕焼け空が広がっていて、行き交う人々の様子も慌ただしさを増している。


「…君からは、この世界はどう見えるのかな?」

いつの間にか後ろにルイスさんが立っていた。

窓から空の朱が少しずつ抜けて、夜の色へと変わる瞬間を一緒に眺める。


「そうですね。語れるほどまだこの世界にはいないですけど。」

まだ三日目ですよ、と言ってから小さく笑うとルイスさんもつられて笑みをこぼす。

「私達異世界から呼ばれた人は『迷い人』とも呼ばれているんですね。」

昨日、今日と買い物に出かけた先で、何度か聞こえた言葉。

あの子迷い人だね、と。

「元の世界で、別に迷子になってこの世界に紛れ込んだわけじゃないんですよ。」

普通に朝、学校に行こうと玄関から踏み出しただけだ。

「…帰れるなら、今すぐにでも帰りたいです。」

この世界には、私のいる理由がない。

私がいなくても、たぶん世界は問題なく廻っていた。

この三日間で私に突きつけられたのは、目を逸らしていたそんな現実だった。

「…本当はすぐにでも帰してあげたいんだけどね。」

少しためらう様子を見せたあと、ルイスさんは言った。

「君のいた世界と、この世界を繋ぐためには大量の魔素が必要なんだ。この世界のシステムに変調を起こすことなく魔素を貯めるには最低でも一年かかる。そして、一年半を過ぎると、この世界と君のいた世界を繋ぐ"しるし"が消えてしまうんだ。だから、両方の限界を摺りあわせると君の帰れるチャンスは一度きり、一年後だけなんだよ。」

大丈夫、ちゃんと扉は繋げるから。

そういうとルイスさんは穏やかな表情で私の頭を撫でた。


それは親しいものから注がれる無条件の優しさ。

家族のなかにある、それに似たもの。

しっかり歳相応に生意気盛りの弟妹が、たまにちょろちょろ私の周りをうろついていたのは、かまってもらいたいだけだと思っていたけど。

どうもそれだけではなさそうだ。


いくつになっても可愛い弟妹を思い出しつつ口元を緩めると、ルイスさんがちょっと安心したように微笑んだ。

「落ち着いた?」

頷くと同時に、安心したのか私のお腹がグゥとなる。

「まずはご飯にしよう。」

そうだ、ハンバーグを焼かなければ。

うん、忘れてたけどマヨネーズ作りは明日にしよう。



異世界でだって、私に出来ることがあるはず。

そう思って簡単に浮上した自分に対し、チョロいなとは思うけど。

先ずはしっかりと生活基盤を作ろう。

一年後に帰れるのなら、それまでに得るものはガツンと吸収してから帰るんだ。

でも、折角の機会だし、のんびり暮らしながら自分のペースで学べるといいな…


なんて思っていたけど、現実はなかなかハードでした。




エマはハンバーグを作りました。

あと何作れるだろう。。

和食派には、味噌醤油酒酢の出てこない料理場面はキツイです

先ずは塩か。

エマちゃん、海沿いに転居させようかな(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ