魔法手帖十九頁 ステータス(その1)と、黒歴史
ーーー
エマ / Age17
HP:2555/2555
MP:1352/3598
攻撃:1(+)
防御:1(+)
魔法攻撃:1(+)
魔法防御:1(+)
〈戦闘スキル〉
神聖魔法:Lv.1 / 火魔法:Lv.1 / 風魔法:Lv.1 / 水魔法:Lv.1
/ 土魔法:Lv.1 / 闇魔法:Lv.1
〈生活・生産スキル〉
魔法紡ぎ:Lv.MAX / 料理:Lv.4 / 掃除:Lv.4
〈固有スキル〉
完全防御 / 空間魔法(収納)/ 全言語翻訳・全言語通話(一部解放)
/ 全能力向上:Lv.1 / チャンス到来:Lv.1 / 魔法手帖:Lv.1 /
ーーー
魔法手帖の背表紙を開く。
手帖なんだから、前半のページに書き込みが増えていく事を考えて、背表紙側にステータス表示出来る仕様にしました。
そして、背表紙を開くタイミングで情報が更新されるように設定してます!
ふむ、概ね予想通りな出来栄え。
ん?見慣れないスキルが、と思ったら、絶対防御ではなくて、完全防御なんですね!次回からはそう呼ぼう。
そして、おお!固有スキルに魔法手帖が追加されてました。
ということは…
エマはちょっと体を捻って左側のシャツの裾をたくし上げる。
「なっ!」
「ちょ、エマちゃん!」
ルイスさんとカロンさんの声が聞こえるが、とりあえず聞こえなかった振りしよう。
脇腹にある魔紋様に触れて確かめる。
おー。やっぱり。
「…模様が変わってる。」
僅かに大きくなって、柄が追加された感じ。
これからも、固有スキルが追加されると少しずつ大きくなっていくのかな?
シャツを戻した私が二人の方に目を向けると、カッと目を見開くカロンさんと目が合う。
…あ、これヤバいやつ。
「エマちゃーん!!あなた何やってんの!」
体感で小一時間程説教&異世界知識をいただきました。
カロンさん曰く、この世界では肌を見せる=はしたない事、という認識なんだとか。
だから女性は丈の長いスカート、胸元は夜会用ドレスでない限り深い襟ぐりの服は着ないそうだ。
もちろん、自分から肌を露出させるなどもってのほか、とのことでした。
あら、やらかしてしまいましたね。
ルイスさんは机の下でカタカタしながら、「俺は何も見ていない」と繰り返し呟いている。
そんなに嫌だったか。本当申し訳ない。
「大丈夫だよ、ルイスさん。私は学習する子だから、次回はないよ!」と言ったら、今度はよく聞こえないが違う言葉を呟いてカタカタしている。
解せぬ。
とりあえずルイスさんは放っといて、これまた何故かルイスさんを見て爆笑しているカロンさんにステータスの仕組みと、体の魔紋様の変化について説明した。
アレ、カロンさん、固まってますよ?
「エマちゃん、無理を承知でお願いするわ。その魔紋様複写させてくれないかしら?」
もちろん断ってもいいのよ?と真剣な表情でカロンさんが言った。
いつの間にかルイスさんも復活していて、成り行きを見守っている。
「え、いいですよ。」
大体、ルイスさんとカロンさんに、ステータスオープン(笑)を見られた時点でこうなることは覚悟してましたし。
しかも私の魔紋様は大量に魔素を使うらしいから、お手軽に使える代物ではないだろう。一先ず、研究素材扱いといったところかな?
私の返事を聞いて、パッと表情を明るくさせたカロンさんは魔法手帖の魔紋様の上に手をかざす。
「エマちゃんの好意に感謝して、私の"とっておき"を見せるわね。」
軽くウインクしてから、カロンさんは軽やかに歌い出した。
その声は低く細く途切れることなく、どこまでも柔らかい旋律に、繊細な抑揚をつけて。
私は美しいカロンさんの歌声に、只々聴き惚れていた。
やがて歌がしみ込むように、ステータスの魔紋様だけが紙の上から浮かび上がる。
キラキラした粒子を振りまき、魔紋様は同じ形を保ったまま薄皮をはがすように上下二枚に分かれ、そのうち下の一枚は魔法手帖に戻り、上の一枚はカロンさんの手に導かれるようにルイスさんが用意した紙の上に写された。
魔法手帖の方はすでに輝きを失っていたが、写された魔紋様の方はまだキラキラした輝きを纏っている。
まるで私が魔法を紡ぐときに纏う光に似ているな、ふとそう思った。
カロンさんは魔紋様を紙に写し終わると、床に音をたてて崩れ落ちた。
ルイスさんの手を借りて椅子に座り、荒くなった息を整えながら言う。
「なんて情報量…」
彼女は随分体力を使ったようで、そのまま椅子に座った状態で暫く休むらしい。
代わりにルイスさんが解説してくれた。
魔紋様を複写する魔法は、ゲルターの人達だけが使える魔法なんだそう。
今回の歌は魔紋様を複写する時に使うもので、解析、消去などの状況により歌う種類が異なるとのこと。
ちなみに専用の魔道具で代用も出来るそうだが、何回かに一度は失敗するようで精度も歌の方が技術的に上なんだとか。
あ、そういえば。
「出来れば発動させる合図、なかったことになりませんか?」
そう、例の『ステータスオープン(笑)』っていうアレですよ。
…往生際が悪いって言うな。
「うーん、ちょっと無理かな?バランスの要だから外すと発動しないかもしれないし。」
すてーたすおーぷん、ね!覚えたわぁとだいぶ復活したカロンさんが怪しい発音で言った。
どうしよう。なんちゃってすてーたすおーぷん、が拡散してしまう。
「便利だし、いつかみんなが使えるように、量産型に改修するわね!」
…エマ、どうする。
黒歴史が拡散した上に、さらに量産されてしまう危機だ。
ステータス作るのが一番難しかったです(汗)




