魔法手帖十七頁 土下座と、魔法手帖
「申し訳ない。」
誰が想像しただろうか。
世界を超えてまさかの『ザ・土下座』。
ちょ、強要なんかしてませんよ?!
元の世界で最上級の謝罪があるのかと聞くから、とりあえず土下座という謝罪の文化があって…と問われるがままに解説しただけなんだよ?!
そしたらね、気付いたら目の前でルイスさんが見事な土下座キメてるんだよ?!
私はどこで選択肢を間違えたんだろうか…
「部屋にノックもせずに突入した挙句、女性の着替えを覗くとは…」
え、いや、着替え終わってましたよ?
ただ、クローゼットにしまおうかなと思った寝間着がうっかり足元に落ちただけでね?
って、聞いてます?ルイスさん。
カロンさん、気持ちは分かるが食堂の机バンバン叩きながら爆笑しないでください?!
ルイスさんからライフがどんどん削れてるから!!
結局カロンさんが力技でいつもの姿勢に戻すまでルイスさんの土下座は続いた。
「で、一体何か起きたの、あの時。」
ひとしきり笑って満足したカロンさんから聞かれたので、魔紋様の発現から、繭玉モドキから本が出現するまでをざっくり説明した。
「で、その時出たのがこれなんですけどねー。」
手に意識を集中させると、魔紋様がぼんやりと浮かび上がる。
そして、そこから湧き上がるように本が現れた。
はい、こんなこと出来るようになったんですよ。
渋い赤の表紙に銀糸で花や蝶の舞う刺繍が施された華やかな装丁本。
持ち歩くのはちょっとためらわれる位の重さがあり、どうしようかな〜とか思ってたんですよ。
そんな空気を察した、ルイスさんが持とうとしてくれたのだけど、彼が触れた瞬間、金色の光を発して本は跡形もなく霧散しました。
消えたなーなんて思ったけど、体の中の何処かにあるような、不思議な感覚がしていて。
そういうと、ルイスさんがその場で指導をしてくれまして、練習&試行錯誤の末こうなりました。
「エマは割と器用なんだね。試行錯誤の末とはいえ、即日に出来るなんて優秀だよ。」
褒めてくれるルイスさん。
ありがとうございます!褒められて伸びるタイプなんです!
ちなみにこれができるのは魔紋様の効果のうち、空間魔法(収納)のおかげだとか。
ルイスさんも収納が使えるそうで、容量や性能は集められる魔素の量に比例する。
元の世界で例えるなら冷蔵庫。
買うのにも維持する電気代にもお金がかかる。
そして、容量が大きかったり、性能が良かったりすると、またまたお金がかかる。
このかかるお金が使う魔素の量だと思ってもらいたい。
とはいえ、この世界で収納が使える人はそこそこいるそうなので、たいして珍しくはないらしい。
もちろん、性能の部分は個人差があるようだけど。
あれ、カロンさんが下を向いてプルプルしている。
どうしたのかな、除け者にされたようで寂しかったのか?
…なんて、思っていた時もありました。
「…ほ、本物?エマちゃん!エマちゃんー?!」
カロンさんに拘束され高速でガクガクされました。
あ、やばい、私中身出ちゃいますよ?
「初めて見たわ!それがエマちゃんの魔法手帖なのね!」
はい?まほうてちょう?!
キター魔法手帖!
良かった〜たどり着けて!




