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エル・カダルシアの魔法手帖  作者: ゆうひかんな


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魔法手帖百十一頁 二回目の優しい目覚め、ステータス(その6)と暴走を止める力


「起きろ、エマ。」

優しく名を呼ぶ声が頭上から降ってくる。



ん?


目を向けると、そこには優しい恋人の姿…ではなく、

珍しく焦った表情を浮かべる師匠がいた。

異世界にいる弟妹よ、優しい恋人って、どこに落ちてるのかしら?

お姉ちゃんはこんな状況、最早…二回目。

二回目…、二回目?!



一気に覚醒した。

ソファから起き上がった私を師匠が支えてくれる。

あれ?ここ、作業部屋だ。

あれ?何で?

「何で師匠がここにいるんです?というか、今何時ですか?」

「もう真夜中に近い時間だ。何で俺がいるのかって、覚えがないのか?」

「混乱しててなんかよく思い出せません。」


一度に色々な情報を頭に叩き込まれたような、そんな状態。


「あー、っと。でもちょっとずつ思い出してきました。」

頭の中で時間を遡る。

師匠に教えを受けつつ魔紋様まもんようを紡いでいて。

体力的にも魔力的にも出し切ったな、と思ったところで記憶が途切れている。

限界越えたんだな、きっと。

安堵したような師匠の表情から何かあったのだろうと推察する。状況を尋ねればオリビアさんが戻ったら順序立てて説明してくれるとのことだった。


が、その前に。


「お前、魔力量が爆発的に増えたみたいだから確認してみろ。」

「は?」

「魔力操作はどのくらいの量まで出来そうか?」

「へ?」

「…その間抜けな返事、なんとかならないのか?顔まで間抜けに見えるぞ。」

「…ちょっと確認しますね。」

何か失礼なことを言われた認識はあるが、今はどうでもいい。

魔法手帖を取り出しステータスを確認する。




ーーー


エマ / Age17

HP:10076/16008

MP : 56690/120443

攻撃:18(+)

防御:25(+)

魔法攻撃:102(+)

魔法防御:145(+)

〈戦闘スキル〉

神聖魔法:Lv.4 / 火魔法:Lv.3 / 風魔法:Lv.2 / 水魔法:Lv.3

/ 土魔法:Lv.3 / 闇魔法:Lv.3

〈生活・生産スキル〉

魔法紡ぎ:Lv.MAX / 料理:Lv.4 / 掃除:Lv.4 / 鑑定:Lv.1 /

〈固有スキル〉

完全防御 / 空間魔法(収納)/ 全言語翻訳・全言語通話(全解放)

/ 全能力向上:Lv.4 / チャンス到来:Lv.3 / 魔法手帖:Lv.4 / 女王の魔眼 /

 〈契約精霊〉

精霊(光属性): グレーステレジア・ロザリンド・ウィンザ・オーロスティファール

大精霊(光属性): シロ(一部解放)

〈ギフト〉

魔法手帖(未開封) /



ーーー



「…。」

「エマ、口閉じろ。さすがに女性で、その表情は不味い。」

「…な、の、ん…が?」

「全く意味が通じないんだが。」

「桁、桁が…!!」

「だろうな。そんな増え方だ。言っとくが俺も魔力量が増えた。

というよりも器の使えなかった部分が解放されたとでもいう感じか?」

また昼寝の時間を増やさないとと予定のやりくりをしている師匠。

それよりも、こんな増え方ってどうなんです?


「理論的に可能と聞いたことはあるが、実際にそうなった人間を見たことはない。」


…さようですか。

ああ、これがまたオリビアさんの五段紡ぎへの夢と憧れを増大させるんだろうな。

指導が厳しくなり…課題が増え。

そしてお仕事が増える、と。

三割増しか…生きていられたらいいな。



「一つ聞いてもいいか?」

「はいー。なんでしょうかー。」

魔法手帖を抱え呆然とソファに座る私の横に師匠が腰を下ろす。


「初代女王の魔法手帖にはレベルが存在すると聞いている。

お前の魔法手帖のレベルはいくつなんだ?」

「レベルは…4ですね。」

これは前と変わらずか。


「レベルが上がることによる恩恵のようなものはあるのか?」

「低いときはあまり意識していなかったんですけど…。

レベル4になったときにはありましたね。」

「例えば?」

魔紋様まもんようを発動させた時、

消費する魔力量が十分の一になりましたよ。」

「そんなに?!」

「ええ、結果が数字としてはっきりと現れたので直ぐにわかりました。」

つまり省エネ仕様になりました。

気付いたのははロイさん達と狩りに行く前のことだから、ダンジョンの修繕で使う魔紋様まもんようをあれこれ紡いでいた時に上がったのでしょうね。

檻の魔紋様まもんようを発現させたとき、サリィちゃんが消費魔力を心配してくれたけど、わりと余裕があったのはこの恩恵のおかげ。


一回に使う量が減った分、複数展開も可能になりました。

ただ、維持するには集中力が必要になるので大変なんだけどね。


「レベルの最上位はいくつまで存在するのかわかるか?」

「うーん。予想でいいなら。」

「それでいい。教えてくれ。」

「一番上はレベルMAXだと思いますよ。」

魔法紡ぎ生活・生産スキルの『魔法紡ぎ』に"Lv.MAX"の表記があるのだから、そこまで進化する可能性はあるのかなと。そこに至るまであと何段階あるのかまではわかりませんが。


「なるほど、さらに変動する可能性があるのか。」


暫し考え込む師匠。

何だか随分師匠と呼ぶに相応しい存在になってきたな。上手くコントロールされてる感は否めないけど、それはこの人が腹黒過ぎるからだろう。

…だから睨まないでくださいって、師匠!!

顔に出ましたか?そうでしょうとも!!

貴方が腹黒なのがいけないんです。


コンコン。

作業部屋にノックの音が響く。


「急にごめんなさい、今大丈夫かしら?」

「ああ、今開けますね。」


おや、オリビアさんが戻ってきたようですね。

立ち上がろうとしたところを師匠に止められる。


「俺が開けるからいい。」

「え、いいですよ。もうだいぶ動けますし。」

「いいからそこにいろ。」


私の代わりに師匠が立ち上がり、扉を開ける。

部屋へ入ってきたオリビアさんは安心したように笑みを浮かべる。

おお、菩薩様が微笑まれた。

なんと慈愛に満ちた素敵な笑顔!!

彼女は私の横に腰を下ろし、そっと手を握る。


「良かった、エマさん。体の具合はどうかしら?」

「あ、大丈夫です。何やらご心配をお掛けしたようで。」

「それはこの方が無理させたからでしょう?全く、相手は女の子で、しかも私の店の従業員でしてよ?」


オリビアさんが軽く睨むようにして言うが、師匠は無表情のまま受け流す。


「しょうがないだろう。まさか魔力の循環が新たな能力に目覚める鍵となるとは思わなかったからな。」


ん?新たな能力?


「お前の魔力量が増えたおかげで、俺の起点の魔紋様まもんようが持つ能力の一つが解放された。」


師匠の起点の魔紋様まもんようが司るとされるのは叡智と節制。


「節制、ですか?」

「分かりやすく言うとお前の魔力の管理と、暴走を止める力だ。」


なるほど、私の魔力量が爆発的に増えるという事象が鍵になって新しい力が使えるようになったということか。

ということは。


「…ほごしゃ」

「それ以上言うなよ。すでに寛容な気分で許せる範囲は振り切ってるからな?」


師匠、笑顔で言われると逆に怖いです。

私、まだ何にもしてませ…あれ、もしかしてしてました?


「お前が意識失ってる間に大量の魔力が駄々漏れて、その魔力に反応したダンジョンの魔物達が恐慌状態に陥った。」


…。

何ですと?!


「オリビアさん、随分とご迷惑をお掛けしたようで…。」


深々と頭を下げる。

オリビアさんは苦笑いを浮かべ首を振る。


「大丈夫よ。主様ぬしさまがしっかりと彼らを押さえてくださったから、大きな混乱もなく収まったわ。」


良かった。

ダンジョンに戻ったら主様ぬしさまにもお礼を言おう。


「あれ、でも節制の効果って魔力の暴走を押さえるんですよね?何故に魔力が駄々漏れたのですか?」

「俺もまさか初見で使う羽目になると思わなくてな。紡いで使いこなせるまでにちょっと時間がかかった。」


若干疲れを滲ませ、溜め息をつく師匠。

…いや、ちょっと待て。

貴方が魔力を空にしろって言ったのが切っ掛けですよ。

ということは、師匠に限って言えば自業自得じゃないですかね?

不満そうな私をよそに、師匠は私とオリビアさんを視界に収める。


「先ずは今後のことについて話し合おうか。とりあえず、エマの魔力量が増えたことは喜ばしいことだ。だがその分彼女の価値と危険度が平等に上がった。」


それは…そうだろう。

魔法紡ぎとしては出来る仕事の量が格段に増えたし、今後知識が増えれば更に稀少な魔紋様まもんようを紡ぐことが出来るだろう。私の起点の魔紋様まもんようにはそれが出来るだけの力があり、私自身には、それを紡ぐことが出来るスキルと今回のことで魔力量が備わった。

その一方で、今回のことをきっかけに私自身の危険度が増したともいえる。

私自身に危険が及ぶというだけでなく、この国を滅ぼそうとする存在になるかも知れない、ということも懸念しているのだろうな。

一つ溜め息をつく。


「今まで通り、ダンジョンに住むという対応だけでは駄目ということですね。」

「…そういうことになるな。」


苦笑いを浮かべ、やっぱり気がついていたのか、という表情を見せる師匠。

それはそうでしょうね。

能力の定かでないものを城にも繋がる大事な拠点に放り込むなど理由がなければしませんよ、普通は。たぶん国はシルヴィ様の部屋という安全地帯を利用して私をダンジョン内に隔離した。

ここは力ある魔物達が支配する場所。彼らはオリビアさんの指示がなければ逃がしてくれないし、逃がさないだろう。

その一方で、ダンジョンという場所は私を害しようとする人達が簡単には近付けない領域でもあった。

魔物を倒しながら私を目指して進めば嫌でも目立つものね。

逆に魔物を倒さないで進もうとすれば尚目立つ。

師匠は一つ頷くと話を続けた。


「今までは国が積極的に関与しないことで、お前の存在を暈してきた。公式な場にお前を一切呼ばなかったのはそのためだ。」


公的な場に出れば、記録も残るし、他国の目にも触れる。

私の存在が公になれば…狙われる確率が跳ね上がるということか。


「だがこれからはそういうわけにもいかない。お前の存在は国の行く末を左右するかもしれないからな。だから国は積極的にお前を取り込む方向へと舵を切る。その第一段階が一ヶ月後に開かれる式典だ。」

「あの招待状ですね。」

「本当はお前の意思を尊重したかったのだが。」


断ってもいいと書いてあった、あの部分。

招待状の中でもあの部分は異質だった。

あれは私に対する配慮という訳ですね。


「招待を受けろ。お前がどんな存在かを示す良い機会だ。場で力を示し、他国からの干渉を跳ね返せ。」


直近で用意された機会。

中途半端に目立つだけなら狙われる確率も上がるというもの。

手を出すことを躊躇うくらいに、圧倒的な力を示せということか。

他国に逃げるという手もあるけれど起点の魔紋様が特異過ぎるから、見られたらバレる。

バレるだけだったらまだいいけれど、聖国みたいに利用する気満々の国に捕まったり、助けてくれた人がサナのお父さんみたいに協力するまで害することを躊躇わない人物だったらどちらにしろ命の危機だ。

ラシムさんが受けた伝言にも『そろそろ他国に人物像がバレそうだ。対処した方がいい。』とあるしね。

残念だけど、今後のことを考えたらこれしかないだろう。


「お受けします、と回答してください。」

「わかった。当日までに準備を整えておく。」

その準備の中には私の立場を明確にするもの…地位や呼称も含まれるのだろう。

オリビアさんもいるということは、転居もあるのかも知れない。

でも、恐らく立ち位置が変わるのは師匠も同じだろう。

新たな力を得るということは良いことばかりではないのだな。


「結果の報告が必要だから一度城へ戻る。お前が部屋に帰るのなら送っていこう。」

「あ、大丈夫ですよ。気分も良くなりましたし、体力も戻ったようですし。」

勢いよく立ち上がったけれど足取りはちょっと怪しい。

おっとっと。


掴まるものを求めたところで、ふわっと体が持ち上がる。


「だから送っていくと言っただろうに。」


世に言うお姫様抱っこというものだ。

師匠の熱烈なファンである淑女の皆様が夢にまで見るだろう光景なのだが。


「もーーー少しだけでも嬉しそうに抱っこしてもらえませんかね?」


なんだその、面倒くさいという空気丸出しの仏頂面は。

表情筋がお留守ですよ!!


「安心しろ。普段はもっと愛想がいい。」

「いや、ですからね。一応女子ですよ?私。もっと照れるとか、羞じらうとか、うっかり間違って喜ぶとかないですかね?!」

「ああ、そうか。」

「え、終わり?!」


両手の塞がった師匠を気遣い、作業部屋の扉をオリビアさんが開けてくれる。

すみません、雇用主にそんなことさせてしまって。


「オリビアさん、すみません。扉を開けさせ」

「エマ様?こちらにいらっしゃると聞きまし」


作業部屋の扉を開けると、シロを抱えたグレースが立っていた。

グレースの手がノックしようとした形のまま固まっている。

ん、シロ?!毛が逆立ってるが、どうした?


「あ、お帰り!!シロ、グレース。里帰りとお使いど…」

「え、え、え、え、えまさま、何て堂々と浮気を!!」

「は?浮気?」

「こんな真夜中、個室から殿方と二人きり!!しかもお姫様抱っこ!!もう、アレか、ソレで決まりですね!!」

「何故そんなに中途半端にボカす?というかコレは」

「いやあああああー!!エマがコレとか言った!!」

「は?シロ?!」


シロはふわもこな前足で師匠を攻撃しているが当然全くダメージが入らない。

代わりにシロの方がダメージが蓄積しているようだが、何で?

だから師匠、『頭沸いてるのか?』は口から出しちゃダメなやつですよ!!


「…スゴいわね、こんな目の前にいて、全く私の存在が視界に入らないなんて。」


オリビアさんが笑いを堪えている。位置的には扉のすぐ脇に立っている訳だから部屋の中にいるとはいえ彼女が見えていないはずはないのだが。

もういいですよ、いっそ笑いとばしてください。


「お前が飼い主なんだろう?何とかしろ。」

「いや、飼い主ではないというか、寧ろ飼われてるっていうか?今だけは飼い主だと思いたくないというか?第一、躾したってどれ(・・)


…だけ聞いてくれるか、って言おうとしただけなんですよ?


「「え、ドレ○?」」



イヤ、もう。







何でこう、くだらないやり取りを書くと筆が進むのでしょうね。

お楽しみいただけると嬉しいです。


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