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エル・カダルシアの魔法手帖  作者: ゆうひかんな


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魔法手帖十一頁 双星と商店黒竜の息吹、金貨の部屋

「さてと。」

ルイス達の家をでてからしばらく歩き、人混みに紛れる辺りまで黙々と歩いてきたが、街の中心部に近づいたところでさり気なくゲイルはディノルゾへ声をかけた。

ディノはゲイルをちらりと見て、視線だけで"まだ話すな"の合図を送る。

「俺はこれからオリビアの店に行くが…」

「ちょうどいいねぇ。私も新しい魔道具を手に入れたから来いって言われてたんだよね。」

さり気なくゲイルが行き先を指定し、ディノルゾもそのままついていく。

たどり着いたのは、入り口に『商店黒竜の息吹(こくりゅうのいぶき)』と書かれた一軒の古い店だった。

商店街から裏道を使って奥に入った辺りに店を構え、割りと広さのある敷地に建てた店舗の一部を家として改装している。

改装した際、商談ため予備の部屋をいくつ他追加した上に、魔道具も扱う店なので、盗聴や盗視を防ぐ仕組みは完璧だった。

つまり密談のためとバレずに出入りができる重宝な店なのだ。


「何かと理由つけて気軽に利用しすぎよ、貴方達。」

通称『オリビアの店』の店主兼販売員であるオリビアは、カウンター越しに二人を見ると顔を顰める。

「あれ、なんか邪魔しちゃった?」

ディノルゾがゲイルの陰に隠れながらカウンターへ近づいてくる。

「見た目ほど暇じゃないのよ。来るときは事前に連絡してって言ってるのに。」

彼女のゆるやかに波打つ赤茶色の髪が揺れ空色の瞳が細められると、表情は呆れた様子へと変わっていく。

「それとも貴方達の耳は飾りなのかしら?そう、飾りなのね?」

「…すまない。」

ゲイルが勢いに押されて謝罪する。

「いや、店主なのにこの対応の方がどうかと思うよ?」

ディノルゾはそう言うと棚の商品を見回していくつか手に取った。

それを見たオリビアはカウンター近くにいたゲイルに一本の鍵を渡す。

「『金貨の部屋』をどうぞ。」

「ありがとう。」

「あ、後でお茶持ってきて〜。華茶のミルクたっぷりのやつー。」

「…」

「そのくらいにしておけ、ディノ。」

引きずるようにディノルゾを連れてゲイルはカウンター奥の通路から商談用の部屋のうち、扉に『金貨』の描かれた部屋へと入る。

そして、オリビアから預かった鍵を使って部屋に鍵をかけた。


その瞬間に。


キン、という僅かな音がして部屋に結界がかかる。

この結界は部屋の鍵をかけると発動するこの店オリジナルの商品のひとつ。

例えば魔道具を試したい客いて誤作動させた場合、この鍵をつかった部屋なら人に対して防御結界が働くと同時に部屋全体を強固な防御結界で覆い、店に被害が及ぶのを防ぐ働きもする。


体外的には(・・・・・・)、そう説明している。

この鍵、実はこの店の特別製なのだ。販売もされていない。

盗聴を防ぐための遮音性能も併せ持ち、更に鍵を壊そうとしたり建物の外側から攻撃を受けると壊せないどころか更に強固な結界が追加され、維持する魔素が不足すれば自動的に吸収する鬼畜仕様。

まさに要塞級といっても過言ではない効果をもたらすのがこの鍵型の魔道具。

「相変わらず、すごいな。流石『盾』を名乗るだけある。」

「いや、実際のところはが気まぐれにいろいろ機能を追加してたら偶然出来ちゃって、使い途に困ったのをオリビアが拾って実用化した感じ?」

「…彼女も優秀な技士だからな。」

気まぐれに鬼畜仕様の要塞級ができるってどうなのよ?と、二人から乾いた笑いがこぼれたところで扉をノックする音が響く。


「華茶持ってきたわよ。」

「君の探しものは?」

金の槌(きんのつち)銀の匙(ぎんのさじ)。」

「はい、どうぞ。」

鍵を刺したままのドアノブを回すと難なく扉が開く。

部屋の内側から招き入れる場合は暗号が決まっている。

ちなみにこの暗号の使用は一度きりのため、次回同じ暗号で入ろうとしても弾かれるようになっているそうだ。

オリビアはさっと部屋に入ると静かに扉を閉めた。

再びキンという、僅かな音をたて結界が張り直される。

彼女は茶器をテーブルに置き、優雅な手つきでお茶を入れ二人にカップを渡す。

そして目線を下げたまま深々と一礼した。


「お待ちしておりました。ディノルゾ様、ゲイル様。」


「…いつも言ってるけど、堅苦しいよ、オリビア。」

さっきまでのしゃべり方でいいと言うディノルゾに向かってオリビアは柔らかく微笑む。

「"双星"であるお二人を支えるのが我々"添え星"の努め。それに引退はしましたが私がゲルターであった頃何度もお二人には助けていただきましたもの。その恩を考えますとなかなか砕けた態度を示すのが難しいのです。ご容赦くださいませ。」

先程までの話し方はあくまでもお二人との関係を誤魔化すための演技なのです、と困ったように言われると二人共何も言えなくなってしまう。


「それで何か私にお話が御有りになるのでしょう?お二人共そんな表情をされてらっしゃいますもの。」

先ずはディノルゾ様からかしら、と二人の表情を見比べオリビアはディノルゾに声を掛けた。

「…うん、そうだねぇ。これはまだ、ゲイルと相談してないのだけど。」


「君に"魔法紡ぎの女王"を預けたいんだ。」




華茶のイメージは、紅茶です。

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