表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エル・カダルシアの魔法手帖  作者: ゆうひかんな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/187

魔法手帖百二頁 禁忌『変幻』と能力の増幅、残された寿命と、あの方の正体

サナに書籍を預けた後。


店へ戻り、台所で夕飯とストックするための料理を作る。何種類かを夕飯のおかずに…と思って皿に取り分けていると、オリビアさんが顔を覗かせた。

今日はお店がお休みのため、オリビアさんと二人きりでお夕飯です。

「エマさん。ダングレイブ商会の頭取と息子さん、明日いらっしゃるそうだけど予定は大丈夫かしら?」

「はい、大丈夫ですよ。」

早々に私と会う予定を組んだらしい。

機を逃さない、そしてこちらに準備をする時間を与えない。

流石商人として第一線にある人達だ。


…一応、サナには連絡を入れておくかな。

ルイスさんにああ言われた手前、何も言わないでと言うのは気が引ける。何か伝えたいことがあれば明日の朝、朝食を食べに来るカロンさんが教えてくれるだろう。


本日は早めの夕食を食べつつ、オリビアさんと情報交換です。

パンに合うものをと思って前もって仕込んでおいた牛肉の煮込みを完成させました。牛肉をにんにくと炒め、その後肉を一度取っておいて野菜を投入。きのこや玉ねぎは鉄板ですね。炒めた後は各種ハーブと共に赤ワインでひたすら煮込んで、柔らかくなったとろで塩コショウで味を整えたら完成です。赤ワインはサナにこっそり分けてもらいました。

おお、お肉が随分と柔らかくなった。

オリビアさんは後でお酒のツマミとして食べたいからと別のお皿に取り分けていた。

気に入っていただけたようで何よりです。


「そうそう、それからもう一つ。…釣れたわよ。」

「おお!!あれですか!!やっぱり模造品は効果絶大ですね。」

オリビアさんがニヤリと笑う。

城内の各所にばら蒔いておいた模造品のいくつかが破棄されたり、破損されたりした気配があるという。これらの模造品は作成者である主様ぬしさまと魔力で繋がっているため、魔力の波を通じて色々と感知できるらしい。

そして今回特に力を入れたのは。


「まさか自己修復するとは思ってもみないでしょうね。」


はい。例の自己修復機能がついた魔紋様まもんようがここに来て大活躍ですよ。しかも私からすればどの程度までの破損に効果が発現するのか魔紋様まもんようの実験し放題だ。

ありがとう、犯人さん達。

ちなみに破損された物は一晩で自己修復する。

捨てられたり、隠されたりしたものも同じく一晩のうちに魔力を辿って主様ぬしさまがもとの場所に戻すようにした。


壊しても、隠しても一晩たてば罪の証が戻ってくる。

眠れない夜を過ごすことになるだろう。

気力が持てばいいけど。


「それで、例の噂の方はどこまで広がりました?」

「下働きの人から広めたから、このぐらい時間が経てば、ある程度上の立場の人まで広がった頃かしら?」

模造品に対する反応もあり、噂も広まった頃。

恐らく、そろそろかな。



ーーーーー




夕刻。

花の日は領内のどこもかしこも賑やかではあるものの明日に備えて客の引けが早く、夕刻には既に大通りであっても人の姿はさほど多くはない。

少年は領館からの帰り道、人通りの少ない場所を選びつつ宿へと足を運ぶ。

心に占めるのは、あのトーアと名乗る人物の事。

違和感は対面したときに感じた。

風貌に記憶はない。

だがかつて会ったことがあるという意識の深層を刺激された。


不可解な現象に困惑する。

だがひとつだけ。

あるとは思いたくないがそれを使えばこの事象を説明できる。

彼はたぶん我々の良く知る人物。

そしてその人物を容姿のみ全く別の人間に生まれ変わらせる魔紋様まもんよう



禁忌『変幻』。



対価と引き換えに本人とは全く異なる容姿を得ることが出来る。

禁異でなくとも体に魔紋様まもんようを刻み己が魔力を対価にすることで同じ効果を得ることも出来るが、魔力が切れれば効果は消えるし、体に浮かぶ魔紋様まもんようを見れば容姿を偽っている事が解ってしまう。その点で考えると禁忌の魔紋様まもんようは非常に出来が良いのだ。

ただ要求される対価がまともではないというだけで。


そんな対価を払ってまで、何故この国に戻ってきたのか。

禁忌が使われた確証を得たわけではないのに気持ちだけが先走る。


「それだけ狼狽えているということか。」

自らの未熟さを嘲笑うような笑みが零れたその時に。


ダンジョンから不快な魔力の揺れを感知した。王国全体に張り巡らされた彼の結界が破られるような感覚はないものの、ダンジョンに張られた結界の一部が不自然に揺らいだような、そんな感覚を覚える。

結界は守りを主軸とする彼の得意分野。

呼吸をするように紡げてしまうもの。

自身の張った結界に対して干渉されればどんなに小さいものでも気がつく。それでも自身の張ったものでない結界の綻びまで探知できたことは未だ嘗てなかった。


一つ溜め息をつく。

こんなこと王都では感じたことがなかった。

否が応でも気付かされてしまう。

この第二領パルテナにあって王都にないもの。


それはエマ(女王)の存在。

女王が傍らになくとも能力を振るうことは出来るのだ。

ただ一方でその存在近くにあることでもたらされる恩恵がある、それは。



「能力の増幅。」



少年は領にあるダンジョンの入り口へと急いだ。




ーーーーーー



王族のみが通ることを許されるダンジョンの秘密の通路。

ダンジョン内の通路の入り口は石化精霊(ゴーレム)によって動かされる女性像が守護するが、王城にある入り口は男性像…騎士が剣を携え守護する。

彼が構えるは本物の剣。

斬り伏せられれば当然のように命を落とす。

その像の間合いから僅かに離れた場所にある杯を象った彫刻には片手で握れる程度の大きさの魔石が大量に納められている。この石造りの杯へ投入された魔石は扉を守る騎士への対価。

今まさに魔石が投じられようとしている。


カツン。


杯へ投じられた魔石は僅かに山から転げ落ちたものの、きちんと杯の内部に収まる。それを感じたのか、侵入者の存在に剣を構えていた騎士は身震いをした後にゆっくりと剣を収め礼の姿勢をとった。

騎士の後ろにあるダンジョンへの入り口が開く。



「本当に気味の悪い。」

「石化精霊を使役するなどこの国の程度が知れましょう。早く戻って文化的な暮らしがしたいものですわ。」

「そうね。でも、そのためには、きちんとあの方からの依頼を果たさないと。」

「ええ、わかっております。」

女性同士の小さな囁きであっても静まり返った通路では思ったよりも音が良く響く。僅かに響く声はやがてダンジョンに通じる出口へと辿り着いた。

ここから先は魔物の跋扈するダンジョン。

うち一人が、ランタンに火を灯す。

魔物は火を嫌う。このダンジョンでも火気は持ち込み不可とされていた。

ランタンの火に一枚の紙を投じる。

ダンジョン内の見取り図を燃やし尽くす炎。

構わずに火を揺らす女性達。


「前回も魔道具なぞに頼らず、ダンジョンごと燃やしてしまえばよかったわね。」

跡形もなく燃やしてしまえば書籍の修復どころではなかっただろう。

そうよ、今回はこの忌々しいダンジョンを建物ごと燃やしてしまえばいい。

そうすれば証拠も何も残らない。


若い女性の意見に年嵩の女性が頷いてから、扉の内側にある窪みに魔石を置いた。

軋む音をたてて扉が開く。


女性像を通り過ぎ、炎の灯るランタンを揺らして魔物を退けつつ各階層を進む。前回は使いきりではあるが魔道具を持っていたからこんな危ない真似をする必要はなかったけれど、今回はこれしか魔物から身を守る術を持っていなかった。

やがて彼女達は何とか二十三階層に辿り着いた。階層の扉に魔力を流して開け、順調に階層の主が納められている書棚へと近付く。



「本当に修復するなんて。」

先日粉砕したはずの書籍が禍々しい気配を放ちながら同じ場所に眠っている。



「あの魔道具は持ってきているわね。」

「ええ、こちらに。」

年若い方の女性が取り出したのは一本の短剣。

真っ直ぐな刃に刻まれた魔紋様まもんようからは鈍い光がこぼれる。


「これで切りつければ魔紋様まもんようの効果が相殺できる。」

「ふふ。これさえあれば魔法紡ぎの女王など、ただの赤子ですわ。」

若い女性が魔紋様まもんように魔力を流す。

そして書籍へと刃を降り下ろした。





「「「はい、そこまでー!!」」」

くうを突いたような短剣の手応えの無さに眉を顰める女性の前で音をたて霧散する書籍。そこから破裂音と共に色とりどりの紙と長さのあるリボンが飛び出す。そして屋内の照明道具へ一斉に明かりが灯った。


「私からの贈り物、無事に受け取ってもらえたようですわね。」

オリビアさんの艶然たる笑みに女性二人が凍りつく。


「貴女、黒龍の息吹の…何故こんなところに?それよりも何でこんな悪戯を仕掛けたのです!!無礼ではないですか!!」

年嵩の女性の怒気にも怯むことなく、手元のランタンを指差す。


「ダンジョン内は火気厳禁でしてよ?ご存じでしょう?持ち込めば…重罪ですわ。」

にっこり笑って反論すれば年嵩の女性は慌てて火を消す。

それからオリビアさんは無言で笑みを深め、今度は若い女性の手元を指差す。


「書籍への攻撃は禁じられておりません!!」

短剣を取り落とし、すかさず言い返した彼女にも同じく笑みを返す。


「ええ、そうね。でもそれは十五階層までの話。そもそも十五階層以下の立ち入りには国の許可が必要なの。それは済ませておられて?」

「私達は王女殿下の許可を得て、このダンジョンにやって来たのです!!それは国の許可を得たのと同じでしょう!!」

「それは違いますわ。」

最初は笑顔で切り抜けようとしていた彼女達だが徐々に余裕をなくしているのがわかる。反対にオリビアさんはそれはいい笑顔だ。

…怒りが突き抜けたか。

すごく恐いんだから、適当なところで切り上げてもらいものだ。

そんな私の願いも虚しく女性二人は憤りを顕にする。


「何ですって!!王女殿下の許可で充分ではないか!!不敬にも程がある!!オリビア嬢、貴女は城の出入りを禁じても足らぬ。営業許可の取り下げも覚悟しておかれよ!!」

「不敬はどちらかしら?」

「は?」

「今は王城の通路からダンジョン内への出入りは禁じられているの。

国王陛下の名において。」

これが布石の一つ。

このダンジョンには管理者権限というものがある。確かに国が許可したものはダンジョン内の十五階層以下に入れるとはいえ、実質にそれを運用するのは管理者であるオリビアさん。なので今回の破損事件を重く捉えた管理者から王へ「王城の通路で破損された書籍の残骸が見つかったんだから、管理の甘いそちらに非があるよ。だから再発防止策を講じるまで暫く出入りを禁じてくださいね。」と伝えてもらったのだ。元々、実力者揃いの十五階層以下に喜んで突入するなんて腕に覚えのあるディノさん達や、師匠位しか居なかったようなので、あっさりと許可された。『大体こっそり十五階層以下に突撃するなんて疚しい事がある人間しか居ないだろう。遠慮はいらないから、さくっと捕まえてこい』という激励を頂けたようです。時間がないと相談したら新しく着任されたという補佐官様がこれまたあっさりと書類に仕立て決裁してくれた。

で、無事に決裁終了。

オリビアさんもビックリのスピードだったらしい。

そのついでに下々の人々に向けて掲示板へ注意書きもひっそりと掲示してくれたらしい。


ダンジョンには行くなよ?刈られるぞ?(意訳)と。


「そもそも、あの通路は王族や申請して許可を得た限られた人間だけが使うもの。貴女達許可を得なくては使用できない側の人間が何故申請もなくここへやって来たのか、理由を教えたいただきたいのだけど。」

オリビアさんの言葉に黙り込む女性達。

まあ、簡単に想像つくけどね。

ダンジョンへ至る通路のセキュリティは、単純に王族の魔力へ反応するように出来ているのだろう。オリビアさんはあまり詳しくは教えてくれなかったけど、あれだけシルヴィ様に似ているのだ。直径の末裔といってもいい立場の人なのだろう。

ならば確実に王家の血が流れている。


だからオリビアさんのように王族の魔力を込めた魔石を対価に捧げれば扉は開く。

そして今回、彼女達が使った魔石を与えたのは。



王女殿下。



彼女達が口にした権力の中枢にある方。

その方がどうしてここまで手を貸すのか分からないけれど、可能性の一つとしては利用されている意識すらないということも考えられる。もしくは本気で権力を握ることを望み、王位を狙っているのか。


それにしても。

手元でじっと彼女達を見つめるシロにそっと声をかける。

「あれが、貴方のつけたしるしなの?」

「そう、光の波紋だよ。美しいでしょう?」

「一目で見て分かるようにしたっていう言葉の意味、分かった気がする。」

ここまでの間、会話で触れられなかった彼女達に起きている異変。

それはここにいる者が皆、シロが仕掛けたことだ知っているから。

むしろ彼女達の方が一切触れられないことの異常さに気が付くべきであろう。ストールである程度隠しているとはいえ、これほどの変容に気付かぬものなど居ないだろうに。


彼女達の肌をびっしりと覆う光の波紋。

鱗のようにも見えるそれは独特の波打つ形を描き、痣のように体の内側から浮かびあがる。波紋は手首や足首、首筋にも及んでいることから、恐らく全身にこの痣が現れていると思われる。確かに、この状態を見れば誰しも手出しすることを躊躇うレベルだろう。


「あの状態から治すことはできるの?」

しるしを外せば直ぐ治るよ。」

今はまだ体調の異変は現れない時期なのだそうだが…女性にとってあれは強烈だな。

私とシロの会話の外では、更にオリビアさんが彼女達を追い詰めていた。


「第一私達が何をしたと言うのです!!ダンジョンには居ても、今この場で悪事を証明できるものは何もないではないですか!!」

年嵩の女性が叫ぶ。

ええと、無許可でダンジョンに入ったというだけで十分に悪事と呼べるとは思うけど。それはまあ脇に置いておくとして、確かに証拠は火の消えたランタンと足元に落ちているだけの短剣。甚だ不審でも火が消えた状態でランタンを持ってはいけないという禁止事項はないし、短剣だって手から離してしまえば『落ちてました』と主張できる。



ニヤリと笑う二人。

…この人達、本当に生きてここから出られるのかな?



「そこまで言うなら例のものを見せてあげて。」

「はーい!了解しました!」

突然の展開に驚く二人を他所に収納から手のひらサイズの魔道具を取り出す。皆さん覚えているでしょうか…先日サナにつくってもらった録画再生機ですよ!!

ああ、こんな最高の舞台で二人の合作がお披露目されるとは…感無量です!!


「エマさん、感動は後回しにして再生してくださる?」

「イエス、マム。」

…今オリビアさんの後ろに何か(閻魔様)いた気がする。

気のせいだな、気のせい。


魔道具に魔力を流すと機体へスムーズに吸収されていく感覚がする。

うん、一回がこの程度で済むなら体の負担にはならなそうだな。気軽に使えるわけではないけれど一日に三回くらいなら余裕で使えそうだ。

サナ曰く魔道具は回路に無駄が多く複雑であるほど消費する魔力が増えるからどれだけ単純化出来るかが腕の見せどころなんだそうだ。確かに、魔紋様まもんようでも複雑な効果を付与すればするほど、紋様も複雑になり消費する魔力が多くなる。そこで魔紋様まもんようで設定できなかった機能を魔道具の回路で補ってもらったのだ。これで紙媒体で魔紋様まもんようを使用するよりも格段に消費される魔力が少なく出来た。

サナ、感謝してますよ!!


壁に向かい拡大され流れる録画画像。

本人の顔も持ち物も行動の一つ一つまではっきりと映っている。

そして映像に重なるように明瞭な音で再生される彼女達の会話。


『前回も魔道具なぞに頼らず、

ダンジョンごと燃やしてしまえばよかったわね。』


…この人達、生きて帰れないだろうな多分。

この台詞を聞いたときはっきりと肌で感じた。

膨れ上がる殺意。

ダンジョンにいる魔物達の意思が定まったような気がする。

そして、それを獲物認定された二人に告げるのは、やはりこの方だろう。


『ご苦労だったな、二人とも。後は我々が処理しよう。』

闇から抜け出るように主様ぬしさまが姿を現す。

何かがごっそり抜け落ちたような無表情のまま。

処理って…うん、処理される前に聞いておかないと。


「彼女達に聞きたいことがあるのですが。」

『構わぬ。』

「貴女達の言う"あの方"って誰のこと?」

「…王女殿下に決まっているでしょう。」

「嘘ですね。」

「な、何を。」

「この状況の中で、本当に忠誠を誓う相手の名を告げるわけがない。だって次は彼女の命が危ないかもしれないのよ?それにあっさりと答えすぎ。交換条件として貴女達の命を助けると言われたわけでもないのに。恐らくこういう状況になったら、そう言うよう指示されていたからでしょう?」

「そんなことはないわ。だってそうでしょう?私達は侍女なんだから王族に忠誠を…。」

「そういえば、貴女は知ってました?」

年嵩の女性が誤魔化すように取り繕うのを無視し、今度は若い女性の方を向く。


「何を?」

「その魔道具の対価。」

「対価って、魔力に決まってるじゃない。」

「それは発動させるための対価です。私が言っているのは魔紋様まもんようの効果を相殺するために必要な対価のことですよ。」

「そんなものないわ。」

「あるんですよ。それが魔紋様まもんように紡がれてますから。」

「…。」

「対価はね、貴女の"寿命"なんです。」

「はっ?」

「対象となる魔紋様まもんようのランクによって何年削られるか決まる仕様のようですね。一年か…ランクによっては十年。もっと多いかもしれませんね。それでその短剣を貴女は何回使いましたか?」



貴女の寿命はあとどのくらい残っているのでしょうね?



「そんなもの、嘘だわ!!あの方は仰っていなかったもの!!」

「あの方って誰のことですか?」

「それは…。」

「言ってはなりません!!」

彼女の言葉に被せるように年嵩の女性が叫ぶ。


「もう一つ、可能性ですけど。その短剣をこちらの方は使いましたか?」

年嵩の女性を指差す。

若い女性の視線が彼女に注がれる。

彼女は…そっと視線を外した。

うん、決まりだな。

「あの方はご存知だったんですよ、対価が貴女の寿命である事を。」

若い女性の目が驚愕に見開かれる。

「まあ確かに、貴女の方があの方より長生きしそうですからね。対価にどれだけ寿命を奪われるかわからないから、敢えて貴女の方を生け贄に選んだのでしょう。もちろん、その対価の事を知っていて、死ぬ覚悟をもってその短剣を使ったというのなら私がとやかく言えることではありません。ですがもし、貴女がその事を知らないのなら。それを知らせずに使わせる主は本当に貴女の事を守る気があったのでしょうか?


残念ながら、たぶん捨て駒だったんですよ貴女は。」



駒扱いされて憤っていた自分がどれだけ甘かったか思い知らされる。こんなにも簡単に命を奪おうとする人達に比べたら、師匠の駒扱いなんて、まだまだ甘い。

さて、捨て駒であることを知らされた彼女が出した答えは?



「…聖女よ。あの女が私に使えと渡したの。」









先に赤い鳥シリーズを更新していまして、こちらは後回しになってしまいました。

お待たせしてすみません…お楽しみいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ