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エル・カダルシアの魔法手帖  作者: ゆうひかんな


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魔法手帖九頁 選択肢と、ゲンゾウモデル十二号

はい、扉を蹴破り飛び込んで来たのは、ゲイルさんでした。


そういえば、さっき会話の中で狩りに行った人がいるって言ってましたよね。

知らない人+手の獲物クマモドキで頭真っ白になってました。


運悪く私が食堂のいり口近くにいたために、初対面にして衝撃的な出逢いをしてしまった結果、ゲイルさんにひたすら謝られた。

それを見たカロンさんが、空気を察して遅めの朝食を作るために席を立ち、ついでにいい笑顔でクマモドキをゲイルさんの手からひったくると、軽々担いでキッチンへと消えていきました。

私の中でカロンさんに対する認識が"アレはヤバイ人"になりつつあるんだが。

うん、怒らせないようにしよう。


とりあえず、朝食が出来上がるまで、昨晩の説明の続きをしてもらうことになりました。

そこで判明したのは、ゲイルさんのフルネームはゲイル=トルスタイフ、そしてルイスさんの上司だという事。

見た目体格が良く登場の仕方がアレなので、てっきり脳筋…ゲフン武闘派だと思っていたら、意外に気遣いを忘れない頭脳労働職でした。

今もディノさんを適当にあしらいつつ、のんびり屋のルイスさんを上手く操縦して、私のこれからについてあれこれ説明してくれましたからね。


それによって、わかったことは大きく三つあった。

まず一つめは、ここがどこかという事。

昨日の説明からエイオーンという世界であることは聞いていたけど、更に情報が追加されて、第三大陸にあるサルト=バルト二ア王国という割と国土の広い国に今私はいるらしい。

ちなみに大陸は、第一から第四まで確認されているんだけど、あまりにも陸同士が離れすぎていて稀に船での行き来があるくらいなんだとか。

私が保護された森は「ヨドルの森」と呼ばれる場所で、王国を中心とすると西側に位置する広大な森林地帯の一画にあり、夜に大型の魔物がウヨウヨ徘徊する恐ろしすぎる場所だった。

過去には保護が間に合わなくて、パクリゴックンされそうになった可哀想な方がいたとか。

ルイスさんやカロンさんがいい仕事してくれてホント良かった。


二つめは、今後の過ごし方について。

まず、衣食住に関しては、一年間国から最低限の費用を賄ってもらえるらしい。

異世界から呼ばれた人が現れるのはひとつの国に対して数年に一人くらいだから、そんなに負担ではないからとのこと。

ただ、その費用を管理するのは本人だから、使いきって暮らし向きに困る事がないようにしてもらいたいらしい。

そのため、その後の暮らしを安定させるという理由もあって、能力や経験にあった職を紹介するなどして働く事を推奨している。

実際、異世界から呼ばれた人は、一部の人を除いて割と優秀な能力や国にとって有益な経験を持つ人が多く、本人が望めばすんなり仕事を手にできるそうだ。

私の場合は未成年だと言ったら、働く気があるならルイスさんかカロンさんが身元引受人になって仕事を紹介してくれることになった。

ちなみにこの国では、十八歳を成人とするようで、十七歳の私は学校に通うという手段もあるらしい。

私より幼い年齢でこの世界に呼ばれた子も僅かだがいたようで、ほとんどの子が一時的に里親の元から国の管理する学校へ通っていたそうだ。


そして、三つめ。

実はこれが一番重要な情報だった。

異世界から呼ばれた人は、一年後に帰ることが出来る、ということ。

というより、選ぶことができるそうだ。


転移した日から一年後・・・の元の世界に戻るか

このままこの世界に永住するか


ちなみに片道切符なので、一旦元の世界に帰ってから、再びこの世界に戻る事はできないそうだ。

そして国からの衣食住の費用負担が一年限りというのも、元の場所に帰るという選択肢があるから。

永住希望の方は費用を負担してもらえる一年の間に、仕事を見つけて暮らしに溶け込めるよう準備をするとのこと。

異世界から呼ばれた人は勤勉な人が多いようですね。

なお、働く気がない人や、一年間に身の振り方が決められなかった方には、ありがたい「神託」という制度があって、元の場所に戻る方法とは別の手段で「全然知らない世界に再び転移ふっとばされる」、「元の場所に戻る」の二択から創造神様の気まぐれで選ばれることになるそうだ。

大概、その話をすると異世界人は「神託」ではなく通常の手順で「元の世界に戻る」を選択するそうだが。

百年くらい前までは、元の世界に戻れる手段がなくて永住一択だったそうなんだけど、なんでもその時期に転移してきた人の中に優秀な人がいて、帰還用の魔道具を開発したらしい。

その名も『ゲンゾウモデル十二号』…うん、間違いなく同郷にほんの人だな。

このゲンゾウさんは凄い人で、魔道具の開発だけでなく、魔紋様まもんようを使って便利グッズを作ったり、ドラゴンと魔法を駆使し戦って辛くも引き分けその結果飲み仲間になったりと。

転移した当時のゲンゾウさん、御年七十八歳。

九十歳で天に召されるまで数々の伝説を築き、異世界人で最も有名な方だそうだ。

…ゲンゾウさん、転移と同時に人間捨てたな。たぶん。


とにかく、一年後に元の世界に戻るかお伺いがくるので、それまでの一年間どう過ごすかを次に会う時までに考えておいて欲しい、とゲイルさんが話を締めくくった。


見計らったかのようにカロンさんが朝ごはんを持ってきてくれる。

これがまたいい匂いでした。

きゅる、と私のお腹の虫が鳴くと皆さんがこちらを一斉に見る。


だって育ち盛りなんですもん。



ゲンゾウさん=源蔵さん

漢字変換するとこんな名前にしました。

太郎さん、もいいかなと思いましたが、年齢重ねたような名前がいいとコレになりました。

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