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無職聖女ジャンヌダルク

ジャンヌダルクのクソゲーレビュー

作者: 束間由一

私はジャンヌ=ダルク。聖女と崇められたその肉体は、背徳者の業火に焼かれ今は無い。あるのは魂と、それが納められたこの十字まもり(自宅警備員)の肉体のみである。



籠の鳥のような生活を送る私の心の拠り所が、テレビゲームである。人間の子供達の無知幼稚さとそこに潜む餓鬼を連想する利己主義に選民思考、性悪説を肯定するかの如き魔種的残酷さに嫌気がさし、学校に行かなくなってからずっとお世話になっている。



 ゲームのキャラクターは基本裏切らない。実に従順で時に絶対的な正義を見せてくれる。現世はおろか、かつての宗教家であっても曖昧にしか語れぬ始末であった正義を、電脳の中を生きる彼らは貫徹するのだ。それは敬意を表するに値する。ありがとうドラ○エ、ありがとうマ○オ、ありがとうF○、ありがとうロマ○ガ、そして素晴らしい調べをありがとうすぎやま先生他神曲作家の皆さん! 



さて、その感謝の気持ちを胸にして、私が現在プレイしているゲームは「1stサムライ」と言う、発売後20年近く経つ古いスー○ァミのゲームである。割と最近買った液晶テレビに映し出されるドットで描かれたその世界は、この日本という国を冒涜あるいは勘違いした妖怪ハイテクめいたもので、上半身裸のサムライじみた剣士が時に忍者めいた動きで縦横無尽に刀を振り回し駆け回る。かつては腐るほどあった横スクロールアクションゲームである。



 このゲーム、巷ではクソゲー扱いだが、クソゲーと言うのは誉め言葉である。私としては「色々と問題はあるが、それが強いネタ性として昇華しており、楽しめるだけの魅力と強い印象(インパクト)を持つ」ものがクソゲーの定義であり、それすらも無いあるいは相当に薄い全くといって語るところの無いのが「ダメゲー」と位置付ける。このクソゲーとダメゲーの境界は難しいが、必ずしも世間的人気が影響するわけではない。販売数が多くてもダメゲーはダメゲーであるし、悪意すら感じる不親切極まりない駄作でも、皆にクソゲーと崇められ、愛されることもある。



 もっとも、クソゲーはクソゲーでそれ以上では無いわけだけど。


 そんな事を蘊蓄していたら、鬼的な敵からのダメージを受けすぎて侍めいた半裸の持っていた刀がどこかに飛んでいってしまった。



「オー、マイソード!」



なんで英語やねん! とツッ込む気にもならない。クソゲーならこのくらい日常茶飯事だ。回復アイテムを取るとハレルヤが流れるのも大した問題ではない。クソゲーは予想外、時に予想外すぎる予想範囲内が基本なのだ。



「カモン、マイソード!」


そして、一定量刀じみたゲージが溜まり青くなると、刀はまたどこからともなく半裸のところに戻ってきた。それはまるで、私の愛剣フラガラックの如きである。あれも、遠隔操作ができるのは優れているが、こうやって素直に戻ってくるだけでないのが問題である。なまじ意志を持つ聖剣と言うのは面倒なところが多いものだ……本当に、実に、小うるさい輩なので普段は次元の狭間に封印している。緊急時を除いては、たまに目覚まし時計に使うくらいが妥当であろう。



そんな愚痴念を抱き、テレビ画面を再び見ると、半裸の侍は薄ら気持ち悪い妖怪により倒され、画面にはゲームオーバーの文字が表示されていた。レトロゲームなのでコンテニューが何回も出来るわけではないためこれでお粗末様だが、このゲームはステージセレクトができるので、実質何回でも途中からやり直せる仕様なのでそこまで問題は無い。クソゲーにしてはかなり親切な設計と言える。クソゲーはクソゲーなのだが、評価対象と言えよう。


むしろ問題なのは、このやり直しがきかない現実の方であろう。この侍も、未来の妖怪を駆逐して亡き師匠の仇を討とうとしているのだが、正直なところ私の今置かれている現実はそれを越えるレベルにあるのだ。



 隠されし神を見つけだすために三種の神器を探す私の使命は、決して、後戻りができない、コンテニューもステージセレクトも攻略本も無いゲームを遥かに越える困難を極めるものなのである。



追記:ちなみに、このゲームソフトは、ネット仲間の「パクリまく朗(仮名)」から頂いたものである。結構レアなものでプレミアも付き、大須のスーパーポ○トやま○だらけとかなら中堅クラスの値段で取引される……ありがたや……



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