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5-6 オレたちが、調査隊!?




 王様、マジで何言ってんの!? 調査隊に入れって、冗談にもほどがあるだろ!

 王国調査隊って、超エリートの集まりなんだろ? 確かにギュス様やリシュリューのおっさんとは顔見知りだけどさ! そんなとこにオレらみたいなポッと出が入れるわけないだろーが! フツーに超キケンそうだし!

 見ればリアが首を左右にブンブン振りまくり、ステラもカッチカチに固まってる。オレも慌てて王様に訴える。

「いやいやムリムリ! ムリですって王様! 調査隊なんてエリートの集まりじゃないっすか! オレらなんかが入るわけにはいかないっすよ!」

 オレらの狼狽振りを不思議そうに見ていた王様だったが、オレの訴えを聞いて「ああ」と何かに気づいたような顔をした。

「ごめんごめん、言葉が足りなかったよ。確かに『調査隊』だと王国調査隊だと思っちゃうよね。そうじゃなくて、ルイ君たちにはこれから新たに作るチームに入ってほしいのです。う~ん、そうだね、特別調査隊とでも名づけようかな?」

 あ、調査隊とは別の部隊なの? おいおい王様、あんま焦らせんなよ。

「私としましては、皆さんに調査隊に入っていただけるなら大歓迎なのですがね」

「だよね~。小隊ひとつくらい任せていいよね~」

 だからやめて! あんまノリでオレらを持ち上げないで! いろいろ体に毒だから!

「あ、あの~……」

 王国調査隊に入るわけじゃないと聞いて少しは落ち着いたのか、おそるおそるリアが手を挙げる。

「特別調査隊って、具体的には何をするんですか……?」

「はい、いい質問です! 特別調査隊には、今回の幽霊の件など、僕が気になった事を中心に臨機応変に動いてもらいます。いろんな組織からいろんな人たちを集めて、その時々に動ける人が動く事になります」

 えー、王様のきまぐれで動くお使い部隊かよー。ヤダよオレー。頼むから、不老不死の薬を探してこいとか、たまたま見たおとぎ話に書いてあったお宝持ってこいとか、ヘンな思いつきで命令しないでくれよ?

「もちろんメンバーには一級の人材を集める予定です。ギュス君はすでにメンバーだし、各ギルドの有力プレイヤーにも声をかけてます」

「シティギルドですと、例えば長槍のマシューや大剣のベン、それに『氷帝』セルヴェリアなどを誘っていますね」

「『氷帝』!?」

 その名を聞いて、文字通り凍りつくリア。なんだ、どうした? 『氷帝』とか、二つ名が中二病こじらせすぎな感じがするんだけど……。

「知ってるのか? リア」

「知ってるも何も! チョー怖いんだよ! ルイなんて絶対チビっちゃうから! 一度アンジェラのところではちあわせした事があったんだけど、メチャクチャ怖かったんだから!」

 そんなにええの? どんな化物なんだよソイツ。てかお前、一応女の子なんだから「チビる」とか言うなよ。

「はっはっは。『氷帝』と言えば、ここ数年で急激に力をつけて女性としてはシティギルド史上最短・最年少でAランク入りした凄腕の槍兵として有名ですね。私も一度、彼女と手合わせしたいものです」

「あはは、ギュス君は武人だね~」

 そうなんだ、そりゃスゴい人だね。てか、女なんだ。チビるほど怖い女ってどんななんだ? 超美人な女王様系だったら、一部の野郎どもにはむしろご褒美なんだけど。どうせモンスターみたいなヤツなんだろうな……。

「その他にも、リシュリュー君やレナード君、テンプルギルドのグザヴィエ君にもいざという時には参加してもらえる手はずです。これだけのメンバーをそろえておけば何があっても大丈夫だよね!」

「いやいやいやいや!」

 豪華すぎんだろ! 軍のナンバー2に『剣聖』『聖騎士』とか、王国調査隊よりヒデえじゃねーか! そんなSランAランの集まりにオレらなんかが入れるか! ほら、ステラの歯がカタカタ鳴ってるし、リアなんか首振りに加えて縦振動まで加わってガクブルしてんぞ!

「ちなみに、このチームは僕の直属で、直接僕の命で働いてもらいます。いわゆる『勅命』ってヤツです。皆さん、期待してますよー!」

 王様がトドメをさす。ああ、リアが背もたれにもたれてビクンビクンエビ反りしながら、白目で盛大にエクトプラズム吐きやがった……。











 急な上にムチャな話で緊張しっぱなしのオレたちに、メイドさんがお茶を注いでいく。どれ、ぐびぐび……。う~ん、落ち着くね。ま、リアなんかはまだカップをカタカタ言わせてるけど。

 少しは落ち着いたところで、王様が話を再開する。

「さっきも言った通り、基本的には動ける人が集まっていろいろと調べてもらいます。皆さんは一つのパーティーなので、普段はいつものパーティーで探索してもらって、たまにギュス君とかが加わったり他のチームと組んだりしてもらう感じです」

「よ、よかったぁ~」

 それを聞いてリアが露骨に安堵する。ま、オレもそんなお偉いさんといっつもパーティー組むとかなったら気が気じゃないしな。いつも通りでよかったわ。

「まあ、だから、僕がみんなに直接クエストをお願いするんだと思ってもらえばいいんじゃないかな? で、たまに助っ人を送るって感じだね」

「確かに、それなら今までとそんなに変わりませんね……」

「でしょでしょ?」

 嬉しそうに言う王様。まあ、そう言われてみればそうかもな……。

 てか、超豪華パーティーに入らなくてすむって事で安心してるけどさ、そもそも「王様に直接クエストもらう」って事がすでにヤバい事なんじゃねえの? さっきも勅命だかがなんちゃらって言ってたけどさ。なんかオレたち、どんどん感覚がマヒしてきてる気がする……。

「そんなわけで、みんなには特別調査隊に入ってもらいたいと思います。みんな、いいかな~?」

 いいかな~? じゃねーよ! いや、まあいいけどさ。

 と、なんだか申し訳なさそうな感じでリアが手を挙げる。

「あの~……」

「ん? なんだい? リアちゃん」

「そのですね……、報酬、とか、どうなるのかな~と……」

 さすが盗賊だね! むしろ王様相手にそれを聞けるのがスゲえよ! そこはカネにはうるさい盗賊の矜持ってモンなのかもしれないね、ぐびぐび……。

 そんな事を思いながらお茶を飲んでいると、王様がニコニコしながら答える。

「ああ、ごめんごめん。そうだね、調査の長さや難易度にもよるけど……。みんな、何万リルくらいほしい?」

「ぶっ!?」

「何万!?」

 ちょっ!? お茶吹いちゃったじゃねーか! リアとステラが声をそろえて前のめりになる。てか、万って何だよ! ケタが一個おかしいだろ!

「あれ? 足りなかった?」

げーよ!」

 思わずツッコんじまったじゃねーか! 何万リルももらったら、丸一年余裕で遊んで暮らせるじゃねーか!

 ギュス様がやや呆れたように言う。

「陛下、クエストには相場というものがございます。それを逸脱してしまっては、あまり健全とは言えません」

「あ~、そうだよね~。どうもつい甘くなっちゃってさ~、テヘッ☆」

 五十過ぎたオッサンのてへぺろはキッツいな……。てか、この人ホントに「賢王」とか言われてるのか……? いっつもその場のノリと思いつきでしゃべってるようにしか見えないんだけど……。

「まあ、そんなわけで多分報酬は相場よりちょっといいくらいには出せるかと思います。それじゃみんな、参加してくれるかな~?」

 ま、いつものクエストと同じってんなら断る理由は特にないし、そもそも仮にも王様相手に断る勇気もないよな。アイコンタクトを取り、お互いにうなずく。

「は、はい。それでは参加させていただきます」

「が、がんばるっす」

「が、がんばりましゅ」

「やったー! みんな、ありがとー!」

 テンション高く王様が喜ぶ。いえいえ、こちらこそ……。てか、相場より「ちょっと」いいくらいとか言ってたけど、王様の「ちょっと」っていったいどのくらいなのかね……。






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