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5-2 王様の呼び出し





 なんか最近、いっつもここで待ち合わせしてる気がするな……。

 今日は王様のところに行く日という事で、朝からモンベールの前で待ち合わせてる。

 てか、まだ店も開いてないのになんでここで待ち合わせるんだか……。大通りの交差点の噴水とかでよかったんじゃないのか?

「はぁ……」

 隣でリアがため息をつく。コイツ、そんなに城に行くのイヤなのかね。前行った時の一件が相当こたえてるな……。せっかくいつもよりいいジャケットと長ズボンなんだから、そんなに肩落とすなって……。

 どれ、ステラが来るまで少しオレが気分転換でもしてやるか。

「なあリア」

「ん、何?」

「オレたちいっつもモンベールに来てるけどさ、この街って他にはいい店ないのか?」

 それを聞いて、一転してリアがオレを小バカにしたような顔になる。

「ははぁ~ん、キミは本当におしゃれに興味がないんだねぇ……」

 イラッ。わざわざ気を遣ってやったのに、なんでバカにされなきゃなんないんだよ。まあ、いつもの調子に戻ったと言えば戻ったんだけど。

「そうだね、もっと大人の人だとスタバとかが人気だよ」

「スタバ!?」

 スタバってあのスタバ!? スタバってこの世界にまで進出してんの!? グローバル企業スゲー!

「そ、『スタイリッシュ・バロン』。昔どっかのグルメな男爵様が、自分のために作らせた店がルーツらしいよ」

 紛らわしいわ! 『デモグラ』って地味にスタバとタイアップしてたのかとか、一瞬真剣に考えちまったじゃねーか! 

「モンベールは昼はどっちかって言うと若者向けだから、大人はそっちの方に行くみたいだよ。さすがの私も、オシャレな大人ばっかりいるお店は敷居が高くてね……」

「大人って、ステラやギュス様くらいの感じ?」

「その辺からスタートって感じじゃないかな? なんて言うか、二十五歳未満お断り的なオーラが漂ってるんだよ。黒いお茶が名物らしいから、私も一度飲んでみたいんだけどさ。それがまた、お高い上にすっごい苦いらしくてさ……」

 それってコーヒーじゃね? そういやこっちじゃまだ見かけてなかったけど、なるほど高級品だったのね。ああ、コーヒー牛乳飲みたくなってきた……。

「あ、うわさをすればステラじゃない?」

「お、ホントだ」

 向こう側を見ると、まだほとんど人通りのない大通りを駆けながら、ステラがオレたちに手を振っている。まだ全然遅刻とかじゃないから、そんなに走んなくてもいいんだぜ? ま、オレはステラのスイカップが上下運動するのを拝めるから止める気はさらさらないけど。









 ステラと合流し、オレたちは大通りを王城へと歩いていく。モンベールもそうだけど、王城近くの店ってホント高そうだな……。外に出て開店準備する店の人たちもちらほらいるが、いきつけの居酒屋のお姉ちゃんたちとはなんか全然違う……。完全にブルジョワゾーンだな。

「ねえ、ステラはスタバ行った事ある?」

「はい、何度か」

「ホント!? じゃあ今度私も連れてってよ! いっしょに行ってくれる人がいないと入りずらくてさぁ」

「ふふっ、お安いご用ですよ」

 笑顔でステラがうなづく。シャツにタイトスカートのOL風ルックが、幾分子供っぽさのあるツインテールと好対照だぜ。

「ステラとリアじゃ、完全に保護者とお子ちゃまだな」

「はぁ!? アンタだってガキじゃん!」

 そうやってムキになるところがお子ちゃまなんだよ。

 と、だんだん城壁が近づいてきたな。

「てか、ホントデカいな……」

「そ、そだね……」

 城に近づいてきたからか、リアの声か弱々しいものになっていく。それにしてもあの壁、こんなにデカかったっけか……?

「前は馬車に乗っていたからか、今日は一段と大きく感じますね……」

「あ、そっか」

 あの馬車、思った以上に目線高かったもんな。あれだ、メリーゴーランドに乗ってみたら思いのほか高くてビックリした的な。

 それにしても、マジでデカいわ……。城の正門は普段は開け放たれているみたいだけど、これ閉じたら絶対中に入れないだろ……。前見た時はうちの大学の正門より二周りくらいデカいとか思ったけど、これ、もっとデカくないか……?

「ちょ、ちょっとルイ、前に行ってよぉ……」

 ついつい城門を見上げて歩をゆるめていたオレに、リアが苦情を言う。てか、なんかオレの後ろに隠れるようなカッコになっている。コイツ、どんだけ怖がってるんだよ。

 ま、でも気持ちはわからなくもないか。だってあの正門、デカい上に完全武装の兵隊さんが何人も見張ってるんだもんな。

 正門まで来ると、見張りの兵隊さんがふたりオレたちのところにやってくる。微妙に怪しいヤツを見るような視線を感じたが、冒険者の証明書を見せた途端、話が通っていたのかていねいな対応になって門を通してくれた。てか、さすがに末端の兵隊さんにまではオレたちの顔は知れていないのね。少しだけ安心したわ。

 担当を連れてくると言うので少し待っていると、やがてひとりの兵士がやってきた。あれ、この人なんか見覚えが……。

「これはルイ様! ふたたびお会いできて光栄です! お城までは私がご案内いたします!」

 声デケえええ! 思い出した、この人うちに式典の案内にきた超声デカい兵隊さんだよ! 名前憶えてないけど! 後ろの二人がその声量にビクつくのにも構わず、「こちらがルイ様のお仲間ですか! お二人ともお美しい! さすがルイ様!」とか大声で言ってる。いや、意味わかんねえよ! 何がさすがなんだよ! 二人ともちょっと引きぎみじゃねーか!

 ひとしきり話し終えると、「さあ皆さんこちらです」と言いながらずいずい正門の中へと入っていく。ちょ、置いてくな! オレたちも慌てて後についていく。

 正門をくぐると、そこは大きく開けた空間になっていた。馬車が動きやすいようにって事なのか、道が駅前ロータリーのように楕円状になっている。こうして見ると、正門から城までってまだ結構距離があるんだな……。街中に比べて緑も多いし、ちょっとした公園みたいだわ。

 兵隊さんがゴキゲンに城の解説をするのを聞きながらさらに数百メートルほど歩く。城の入り口まで来たところで、兵隊さんがビシッと姿勢を正して言った。

「それでは皆さんはここで少々お待ちください! これから担当の方を呼んでまいります!」

 あ、城の中はまた別の人なの? なんか結構面倒なんだな。まあでも、この人から解放されるのは助かるわ……。リアなんか緊張の上にこの人のテンションで二重にやられちまってるからな……。

 そんなわけで、城の入り口で待つ事しばし。やがて城の中から、さっきの兵隊さんともう一人の男性が現れる。貴族らしい衣装を身にしたその若い男性が、オレたちに親しげに語りかける。

「お久しぶりです、皆さん。今日は私が城内をご案内いたします」

 そう笑顔で語りかけてきたのは、オレたちもよ~く知ってる人物、王国騎士のウェインさんだった。ああ、一難去ってまた一難、さらにやっかいな人が出てきたよ……。






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