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4-6 なんだよ、あのお嬢サマ!






 突如として現れ店の貸切を宣言した超タカピーお嬢サマ、エリザベートとその一味。大貴族サマのご登場に、店内の客が慌てて道を譲り、あるいは帰り支度を始める。

 ご満悦な表情でツカツカと店内に入ってくるお嬢サマご一行であったが、店の真ん中で敵意をむき出しにしているオレたちに気づき、お嬢サマがその整った眉をつり上がらせた。オレたちを指差して甲高い声で叫ぶ。

「お前たち! そこでいったい何をしているのです!」

 そのケンカ買った、とばかりにリアが勢いよく立ち上がった。その勢いでイスが派手にすっ転ぶ。

「何って、誕生日パーティーに決まってるでしょ? 見ればわかるじゃん!」

「そんな事はわかっています! なぜ立ち去らないのかと言っているのです!」

「はぁ? そんなの私たちが先に予約してたからに決まってんじゃん。後から来たクセに席取れると思ってるとか、あーあ、これだから世間知らずのお嬢サマってゆーのは……」

 わざとらしくリアが肩をすくめてため息をつく。まさか逆らう者がいるとは思っていなかったのか、お嬢サマの顔がみるみる赤く色づいていく。それにしてもリアの煽り、相変わらずムカつき度満点だな……。

「こ、この無礼者! わたくしはエリザベート・ド・ベルフォールですよ! そのわたくしに、このような無礼が許されるとでも思っているのですか!」

「はぁ~、二言目には『私は偉いから』ですか。はいはい、エラいでちゅね~。お貴族サマってのは少しは自分で物事考えられないの?」

「山猿風情が生意気な! わたくしはお前などと違って、王立中等学校を優秀な成績で卒業しているのですよ?」

「はん! あんなのお貴族サマが仲よしこよししてるだけのお友だちクラブじゃん! 私は冒険者養成学校を首席で卒業してるんですよーだ!」

 へぇ、この国にも学校ってあったんだ。てかリア、いくら人が多いからってこんな場所でまでミエ張らなくてもいいだろうに……。

「そんなもの、所詮山猿どもの飼育所ではありませんか! でも確かに、あなたのようなお猿さんにはお似合いですわね!」

「そっちこそ、成績優秀なんて言ってるけどホントはベルフォール公の七光りで仕方なく先生たちがマルをくれただけなんじゃないの?」

 そう言うと、突然リアが腹を抱えて笑い声を漏らし始める。

「あ、案外ホントにそうだったりして……。どー見ても落第点なのに、公爵様が怖いからって……。ぷぷっ、そんな事とは露知らず、アンタはその成績を真に受けてるとか……あっはは、もうダメ! ケッサクすぎる~! みっじめ~! チョーウケる~!」

 ついには爆笑し始めたリア。お、女の戦いえぇ……。

 てか、リアっていつもはオレに手加減してたのか……。いつもこんな調子だったら、オレ確実に心折れてるわ……。

「こ、このわたくしをここまで愚弄するとは……」

 お嬢サマも、顔を真っ赤に染めて全身をプルプルさせてる……。こんな事言われたの、多分生まれて初めてなんじゃねーか?

「お前! お前は絶対に許しませんよ!」

 あ、キレた。リアを指差すと、人目もはばからず絶叫する。

「お前たち! この者どもを少し懲らしめてやりなさい!」

「承知いたしました。おいお前ら、やるぞ」

「待ってましたぁ!」

 お嬢サマの命に、取り巻きが歓声を上げる。ああ、やっぱこうなるのね。まあ、話し合いでどうにかなるとは思っていなかったけど……。なるべく穏便に……てか、最小限の被害ですむように頼むぞ……?

「この者たちはベルフォール家の傭兵の中でも特に手だれの者! 全員がレベル35以上のCランク上位プレイヤー、それを指揮するジョンはBランクプレイヤーなのです! お前たちのような山猿どもがどうあがこうとかなうような相手ではありません! 今さら赦しを乞うても無駄ですよ!」

 ああ、そうなんすか……。それはケガしないように気をつけないといけないね……おたくの部下たちが。

「へぇ~、上等じゃない。そっちこそ、人の誕生日パーティー台無しにしちゃって……」

「謝るのなら、今のうちですよ?」

 そう言いながら、リアとステラが前に出る。てかリア、指をバキバキ鳴らすなよ……。こっちが超悪役みたいじゃねーか。なんか他の客も帰らないで壁際で事のなりゆきを見守ってるし。

 手下のひとりがひゅうと口笛を吹く。

「やっべぇ! 超巨乳ちゃんじゃねえですか! ねえ隊長、こいつらこの場で好きにしていいんですかい?」

「好きにしろ」

「いやっほぉぉぉい!」

「上玉ゲットォォー!」

「今日はいろいろヤリまくりだぜぇぇぇえ!」

「……ほどほどにしなさいよ」

 男どもの下卑た笑いに、お嬢サマが露骨にイヤそうな顔をする。その指示を聞いてるのかどうなのか、手下どもは性欲丸出しな顔でオレたちと対峙する。こちらが丸腰だからなのか、連中も武器を手に取りはしない。女相手なら力づくでどうにでもなるとか思ってるんだろ。ま、普通ならそう思うわな、普通なら。

「ルイ、一応演奏よろしくね」

「おう」

 オレも竪琴を取り出して応援歌の演奏を始める。今回はインストのみでいいだろう。あんまりがんばりすぎるといろいろ後が怖いし。なんせこの二人、もう人間ヤメてるからな……。見物してる客の記憶にトラウマ残してもマズいだろ……。

 男どもはリーダーを除く四人が前へと出てきた。どいつもこいつもだらしねえツラしやがって……。ステラの胸ばっか見てんじゃねーぞ。てか、喫茶店に鎧着たまま入ってくんじゃねーよ。




 しばしにらみ合った……てか向こうが一方的にこっちの品定めを終えた後、歓声とともに男どもが突っこんできた。行く先をさえぎる高そうなテーブルを片っぱしからなぎ倒してやがる。食器もガッチャンガッチャン割れてるし。あーあ、こりゃ店内メチャクチャだな……。






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