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4-5 バースデーケーキ、スゲぇ!






「お待たせいたしました、こちらバースデーケーキになります」

「きたぁぁぁぁぁあ!」

「うおっ、スゲぇぇぇぇぇええぇっ!」

「わぁ…………!」

 お待ちかねのバースデーケーキのご到着に、三者三様の声を上げるオレたち。てかスゲぇ! フツーにケーキじゃねえか! ホットケーキとかそういうのを予想してたんだけど! こっちにも生クリームとかあんのか!

「すっごいキレイ……」

「はい、とってもおいしそうです……」

 女性陣が目を輝かせてる。てか、ステラの発言が完全にただの食いしん坊のそれだな……。てかオレ、完全に忘れ去られてね……?

「あー、ごほん。これって誰のお祝いでしたっけ」

「あ! ご、ごめんなさい!」

「ちょっとー、現実に引き戻さないでよー」

 頭を下げるステラとブーたれるリア。え? コイツの反応おかしくね? 

「ま、それはさておき……」

 気を取り直したようにリアがステラにアイコンタクトを送る。

「せ~のっ……」

 大きく息を吸いこむ二人。

「ルイ、誕生日おめでと~!」

「ルイさん、誕生日おめでとうございます!」

 とびきりの笑顔でそう言うと、二人がオレに拍手を送る。誕生日祝いだと聞いてか、周りの席の人まで拍手を送ってくれる。ああ、なんかすいませんね。てか、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……。でも、スゲえ嬉しいわ。

 ひとしきり拍手を浴び終えると、再び席につく。

「どうも、サンキューな」

「そんな、とんでもないです。こちらこそいつもお世話になってますから」

「まあ、たまにはルイにもいい思いさせておかないとね~。飼い犬に手を噛まれても困るし?」

 コイツはいちいちフインキをぶち壊してくれるな! まあいいけど!

「それじゃ、さっそく切り分けていきましょうか」

「私、バタークリームのケーキなんて食べるの久しぶりです……」

「私なんか生まれて初めてだよ。冒険者やっててよかったぁ……」

 なんか二人ともしみじみ語ってるな。てか、生クリームじゃなかったのね。バタークリームってオレも食った事ないんだけど、どうなんだろ? 昔生クリームの替わりに使われてた安物って聞いた事があるんだけど……。いや、別に不満なわけじゃないけどさ。

 そうこう言ってる間に切り分けが終わった。それぞれの前に八等分されたケーキが一つずつ置かれていく。

「さーて、それじゃあいただきましょうか」

「おう、いただくぜ」

「いただきます」

「いっただっきま~す!」

 みんなであいさつをすませると、オレもケーキにかじりつく。どれどれ……ぬおおおぉぉぉおっ!?

「ウメぇ!」

「ウソ、超おいしい!?」

「…………!」

 ウメぇ! マジウメぇ! 誰だよバタークリームがマズいとか言ったヤツ! 超ウメぇじゃねーか! 生クリームとはまた違うバターのうまみと言うか……。

「素晴らしいです……! バターの豊かな風味がお口の中いっぱいに広がって鼻を抜けていきます……!」

 そう、それだよそれ! 超ウメぇ! てかステラさん、グルメリポーターもビックリなくらい語ってんな!

「おいしい! おいしいよぉルイー! 私たち、生きててよかったねー!」

 うおっ!? リアのヤツ、なんか泣き出してんぞ!? そこまで感動してんのかよ!? いや、確かにめちゃくちゃウメえけどさ! いやでも、マジウメぇわ。恐るべしだぜ、喫茶モンベール。









 そんな調子で一つ目をまたたく間に平らげ、次のケーキに手を伸ばそうとしていた時、入り口の方がにわかに騒がしくなった。ん? 何事?

「お前たち、そこをどきなさい!」

 耳に突き刺さるような甲高い声とともにモンベールに入ってきたのは、やたらと豪華なドレスを身にまとった金髪ショートの女の子と、彼女を取り巻く五人の男どもだった。野郎ども、剣やら槍やらで武装してやがる。どう考えてもこの場に似つかわしくないだろ、少しは空気読めっての。てかあの姉ちゃんの顔、どっかで見覚えあるな……。

 そんな事を考えていると、ショートの女の子が店内の客に向かってとんでもない事を言い放った。

「聞きなさい! この店はたった今よりこのわたくしが貸し切ります! お前たちはただちにここから立ち去りなさい!」

 はぁ!? 何言ってんだアイツ!? 予約もナシで何勝手な事ほざいてんだよ! オレの他にもムカついたヤツは多かったらしく、あちこちから怒声が起こる。

「黙りなさい、愚民ども! わたくしをベルフォール公爵が嫡子、エリザベート・ド・ベルフォールと知っての狼藉ですか!」

「よいか貴様ら! エリザベート様にたてつくのはそれすなわち、ベルフォール公爵家にたてつくという事! 貴様らにその覚悟はあるか!」

 女の子と一番エラそうにしてるオッサンの言葉に、客たちが一斉にざわめき出す。モンベールの店員さんもおろおろしてる。てかどっかで聞いたな、エリザベート、エリザベート……あ! 王様のところにいた姉ちゃんだ! 超鼻っ柱高そうだったから、声かけずにスルーしたんだっけ。

 隣でリアが怒りの声を上げる。

「ちょっとー! 何よアレー! 貴族サマだからってエラそうにさー! 誰がアンタの言う事なんか聞くもんかー!」

「ちょっ、リア、さすがに今回は相手が悪いんじゃないか……?」

 珍しくオレがリアをなだめる形になる。いくらなんでもマズいだろ、確かギュス様でさえ”様”づけで呼んでた気がするし……。

 しかし意外な事に、てっきりオレといっしょにリアを止めてくれるものだとばかり思ってたステラまでもが怒りを露わにしている。

「リアさんの言う通りです。私たちが引く理由など、微塵もありません」

「え……? あの、ステラさん……?」

 ちょっ……ええぇぇぇぇえ! リア以上に怒ってるんですけど!? なんか周りに闘気オーラみたいなのが見えてるし!

「ルイさんの誕生会を邪魔する者には、鉄槌を……!」

「そうだそうだー! せっかくの誕生会をジャマするなー!」

 ヤバい、二人とも超ヒートアップしてる……。オレには到底止められそうにもないわ……。

 でもまあ、あの女の傲慢さにムカついてるのはオレも同じだ。よーし、腹はくくったぜ! このまま「はいそうですか」って引き下がってたまるかよ!







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