4-4 女の子からの誕生日プレゼント!
メインも一通り食い終わり、お茶を飲みながら一息つくオレたち。この後デザートが来るらしいので待っていると、ステラが遠慮がちに声をかけてきた。
「あ、あの、ルイさん……」
「ん? どうした?」
「受け取ってほしい物があるんですけど……」
「あ、もしかしてオレへのプレゼント?」
「は、はい……」
顔を赤らめながらステラがうなずく。くっそ、かわいいぜ! 女の子から誕生日プレゼントもらうとか、マジで生まれて初めてなんだけど。何がもらえるのかな、わくわく、わくわく……。
そんなオレの視線を浴びながら、ステラがおしゃれなカバンから包みを取り出す。おお、ラッピングもかわいいぜ。
「つまらない物ですが、どうぞ受け取ってください……」
「おう、サンキュー」
おずおずと差し出された包みを、オレはありがたく受け取る。う~ん、何が入ってるんだ……?
「これ、開けてもいい?」
「は、はい、どうぞ」
恥ずかしそうにステラがうなずく。リアも興味しんしんの様子だ。それじゃ開けますよっと……。
「おお!?」
中から出てきたのは、なんだか高そうなクシと小さな手鏡だった。横からのぞいていたリアが驚きの声を上げる。
「ええ!? ガラスを使った手鏡なんて、すっごい高級品じゃん! こっちのクシだってすごい立派だよ!?」
そ、そうなのか? いやでも確かに、ステラの事だから必要以上に気を遣いすぎてる可能性はあるぞ……。
「そんなに高級なものなのか? オレなんかにいいのか?」
「いえ、そんな事! この前のクエストの報酬を使っただけですので……。いかがでしょうか……?」
「いや、嬉しいよ! マジでサンキューな!」
「前のクエストって、あの600リル? ステラ、ちょっとフンパツしすぎじゃない……?」
なぜか冷や汗を流しながらリアが言う。しっかしこいつはまた下世話な方向に行くね。ステラが申し訳なさそうに答える。
「いえ、その前の1000リルです……」
「1000リル!?」
「高っか!」
想像を遥かに上回る値段にオレとリアが思わず席から立ち上がる。
「せっかくのプレゼントなのに、少ないかとは思ったんですが……。既製品ですし……」
「いやいやいやいやいや! 十分すぎるから! てか、別にもっとちょっとした物で全然構わないから!」
「そ、そうだよ! ステラってば、ハードル上げすぎだよ!」
なぜか申し訳なさそうなステラにオレたちが口々にツッコむ。まったく、どういう金銭感覚してるんだよ! ついこないだまでEランクパーティーだったオレらには理解できん感覚だぜ!
「とにかくありがとな、さっそく使わせてもらうよ」
「あ、ありがとうございます……」
オレがイスに座ってお礼を言うと、ステラもうつむきながらお礼を言う。耳まで真っ赤にしちゃって、まったくかわいいぜ。
ん? なんかリアが黙りこんでるな……。
「なあリア、お前はどうなんだ?」
「ふぇっ!?」
声をかけると、ビクッとしてリアがオレの視線を避ける。いや、なんでだよ。
「お前もプレゼントあるんだろ? 見せてくれよ」
「え~……。私のは、いいよぉ……」
わけわかんない事を言いながらうつむく。
「ステラと違って安物だし、てゆーか、手作りだからヘンなのだし……」
なんだ、そんな事気にしてたのか。意外とコイツもナイーヴなヤツだよな。
「何言ってんだ、手作りなんてスゲえじゃん。早く見せてくれよ」
「そ、そうですよ! こういうのは気持ちが大事です!」
「う~ん……。そ、それじゃ、出すね……」
オレとステラに励まされ、渋々ながらリアがカバンに手を入れる。
「絶対、笑わないでよ……」
「笑わない笑わない」
そう言いながらカバンから取り出したのは、手縫いの小さな人形だった。
「おお、これ手作りなのか?」
「わぁ、かわいいですね」
「もう、あんまり見ないでよ……」
恥ずかしいのか、人形を両手で握って胸元に寄せる。ヤバい、リアのクセにかわいい。あれ、でもこの人形って……。
「これ、もしかしてオレ?」
「あ、本当です。ルイさんなんですね」
「う、うん……」
顔を真っ赤にしながらうなずくリア。
「あ、あんまりジロジロ見ないでよ……」
「いやいいだろ、オレへのプレゼントなんだから。でもなんでオレの人形なんだ?」
「ほら、この前お守りくれたじゃん。だから私も、そんな感じの物作ってみたんだよ」
オレとは目を合わせず、ふてくされたように口を尖らせてリアが言う。
それから、すごいしょんぼりしながらつぶやく。
「でもいいよ……なんか子供っぽいし。ステラがちゃんとしたプレゼント買ってきたんだから、私もちゃんとしたの買ってくるよ……」
「いやいや、そっちをくれよ。手作りとか超嬉しいに決まってんじゃん。せっかく作ってくれたんだろ?」
「そうですよ! そちらの方が気持ちがこもってます! かわいいお人形さんです!」
「そ、そうかな……?」
少しは元気が出たのか、もじもじしながらリアがオレの方を向く。
「じゃ、じゃあさ、この人形、もらってくれるかな……?」
「ああ、もちろん。サンキューな」
「えへへ……」
オレが人形を受け取ると、リアが嬉しそうにはにかむ。ふう……、なんとか機嫌を損なわずに済んだようだな。それはそれとして、こいつはありがたく受け取っておくぜ。
てか、地味によくできてるな、この人形……。
「さーて、プレゼントも渡した事だし、後はケーキだね」
「そうですね」
「お、ケーキがあるのか」
オレの質問に、ふたりが答える。
「誕生日のオプションでつけられるんです」
「そうそう。私たち二人でフンパツしたんだから、ありがたくいただきなさいよ~」
「へぇ、そりゃ楽しみだな」
どんなのが来るんだろうな。ステラの事だから、またとんでもないモノを……いやいや、リアといっしょに頼んだなら大丈夫か。
バースデーケーキを待ちながら、オレたちはしばしお茶を楽しむのだった。




