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3-14 もう、あの頃には戻れないな……





「あ~、リア~」

「あ、ミーナ」

 薬草を採り終え帰ろうとしていると、弓兵のミーナちゃんのパーティーと出くわした。

「リアたちはこれから帰るところ?」

「うん。ミーナは?」

「ウチらは三十九階のクエストにチャレンジするところ~」

「そうなんだ、がんばってね」

 三十九階ってスゲえな。このパーティー、意外とレベル高かったのね。

「そう言えば、リアのとこってもうBランクなんでしょ? まだこんな所でクエストしてるの?」

「あ~、まあね……」

 サラッと傷をえぐってきたな、この姉ちゃん。リアのテンションが一気に急降下する。

「リアもやっぱりスゴい強くなったの?」

「ああ……うん……」

 ますます落ちこむリア。まあ、それはオレたちもさっきまでのクエストでさんざん思い知らされたわけで……。暗くなっていくオレたちに気づいていないのか、ミーナちゃんが無邪気に聞いてくる。

「へー、スゴーい! ねえ、ウチにも詳しく教えてよ!」

「え~……うん、わかった……」

 いかにも渋々といった調子で、リアがうなづく。

「じゃあ、ちょっと索敵するね……」

 そう言うと、リアがしゃがみこんで足輪のスイッチを押す。あ、あの足輪、隠密だけじゃなくて索敵機能もあるのか。地味に便利なアイテムだな。十秒くらいして、リアが立ち上がる。

「じゃあ、あっちにモンスターがいるからちょっと行こうか」

「うん、いいよ」

 リアが指さす方向へと、二人が歩き出す。オレたちも後に続いた。






 ちょっと歩いて、木陰で立ち止まるリアとミーナちゃん。リアが木陰の向こうを指さす。

「あそこに強そうなのが二匹いるでしょ?」

「あ、コボルドエースじゃん。結構強いよ?」

「じゃあミーナ、とりあえずあいつに攻撃してみてよ」

「え、いきなり無茶ぶるね。いいよ、よく見てなよ~」

 そう言うと、ミーナちゃんが意外とデカい弓を構える。こうして間近で見ると、弓兵って結構カッコいいな。

 目を細めて的を狙うと、ミーナちゃんの弓から放たれた矢は右側のわんこ人間の脚に見事命中した。おお、ウメぇ! わんこが絶叫しながら敵を探してる。

「どう? ウチの腕前! これで実質敵は一匹になったよ!」

 リアに負けず劣らず薄い胸を張るミーナちゃん。ぺったんコンビは仲がいいな。でもホントいい腕してるよ。

「おお、さすがミーナ。また腕を上げたね」

 そう言うと、リアが足元の石ころを二つ拾い上げる。あ、まさかアレをやるのか……。暗い表情でリアが言う。

「じゃあ、次は私の番ね。ルイ、一曲お願い」

「お、おう」

 なんかオレまで暗い気分になってきたんで、努めて明るい曲をチョイスする。リアは立ち上がると大きく振りかぶり、咆哮を上げて突進してきた魔物たちに向かって手の中の小石をふたついっぺんに投げつけた。

 小石は空気を切り裂きながら魔物たちの頭部に命中すると、その頭蓋をいとも容易く打ち砕いた。まるでスイカが爆ぜるかのようだ。惰性で走り続けるわんこどもの体が、やがてもんどりうって倒れる。

 そんな悪夢のような光景を、呆然と見つめるミーナちゃんとそのパーティー。我に返ったのか、ミーナちゃんがリアの両肩をつかんでまくし立てる。

「ちょっと!? 何今の!? あいつら結構強いんだよ!? なんであんな石ころ一発で頭が吹っ飛ぶのさ!? しかも二ついっぺんに投げて同時に当てるとか! どうやってコントロールしてるの!?」

「はは、はははは……」

 ミーナちゃんの詰問に、なかばあきらめたような笑いを浮かべて目をそらすリア。あー、こりゃあきらめてるわ。自分が人間である事をあきらめてるわ……。隣ではステラが口元に手を当てて嗚咽を漏らしている。ああ、この人はもう完全に人間ヤメてるもんな……。

 ミーナちゃんのパーティーの皆さんも顔面蒼白になってるよ。あーあ、こりゃ明日にはウワサに拍車がかかってそうだな……。よく強すぎるヒーローは孤独とか言うけれど、オレもなんか少しだけそれがわかってきた気がするわ……。






「じゃ、じゃあウチら、そろそろ行くね……」

「うん……がんばってね……」

「うん、ルイ君とステラちゃんもおつかれさま……」

 木陰から出てきた後、なんだか気まずい感じのまま別れたオレたち。いや、別に嫌われたとかいうんじゃないけどさ。まあ、そりゃあんなの見たら、普通は引くよなぁ……。

 心の壁を感じたのか、ミーナちゃんたちを見送るリアの表情が暗い。またひとり友だちを失った、みたいな顔してる。ま、なんだ、そんなに落ちこむなよ……。

 そんなわけで、オレたちは足取りも重く詰所へと戻っていった。






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