3-13 あれ、めっちゃ強い?
なんとも珍妙なタケノコ型のモンスターを見るや、鬼気迫る表情で前方に飛び出したステラ。こんな怖いステラ見るの、初めてだな……。
あのリアが、少し遠慮ぎみにステラに問いかける。
「ねえステラ、どうしたの? 急に……」
「あの魔物、この前の甲冑騎士と同じくらい強いです」
固い声で答えるステラ。え、ウソ、マジかよ? あの甲冑野郎、メチャクチャ強かったじゃん!
「昔一度だけ、一対一で戦った事があるんです。あの皮がもの凄く硬くて、同じ箇所を何度も狙わないとダメージになりません」
マジかよ! あのステラの攻撃が全然効かないのか! そんなヤバいヤツが四匹もいるんだぞ! 悲壮感溢れる声で、ステラがオレたちに言う。
「皆さん、ここは私が抑えます。一旦引いて、詰所で助けを呼んでください」
ついこないだも聞いた気がするな、そのセリフ。助けをなんて言ってるけど、ホントは死ぬつもりなんだろ。
もちろん、オレたちの答えは一つしかない。
「そんな事言って、はいそうですかなんて言うオレたちだと思ったか?」
「そうだよ! 三人でチャンス作って、みんなで逃げるよ!」
オレたちの声に、ステラがわずかにほほえむ。
「ふふっ……。そう言えば、そういう方たちでしたね……」
言ってステラは、オレに向かい叫んだ。
「ルイさん! 応援歌を! 私が、なんとしても血路を開きます!」
「おう! わかったぜ!」
竪琴を構えると、オレは全力で歌を熱唱する。ステラのためのオリジナル応援歌だ! うおお、やってやるぜ!
曲が始まるや、オレたちの周辺の空気が揺らめき始める。一拍置いて、ステラが魔物へと突進した。
「私は――護る!」
絶叫しながら、ステラが空高く飛翔する。
「私の――大事な人たちを!」
魔物の頭上へと、ステラが大斧で渾身の一撃を叩きこむ。斧は魔物の頭部を切り裂き――そしてまるで笹の葉を左右に割くかのように、いとも容易く魔物の体を両断した。
「まだまだぁ!」
さらに一歩踏み出すと、力任せに斧を水平に繰り出す。二体並んでいた魔物が、仲良く上下真っ二つに切り裂かれる。そして、あのギュスターヴもかくやというスピードで最後の一体に迫ると、敵に何もさせる事なく袈裟斬りのような格好で仕留めてしまった。
この間、わずかに五秒ほどの出来事だった。
鬼神の如き強さで、あっという間に四匹のタケノコを始末してしまったステラ。そのあまりの強さに、オレたちも言葉が出ない。
「はぁ、はぁ……」
ステラはと言えば、斧にもたれかかるようにして息を荒げている。なんかエロい。しばらくの間を置いて、ようやくリアが話しかける。
「ねえ……あのタケノコ、ホントに強かったの……?」
うん。それ、オレも思った。ようやく落ち着いたのか、ステラが反論する。
「ほ、本当です……。少なくとも、あのタケノコさんはこの前の甲冑騎士レベルの強さでした……」
「まさかとは思うけどさ……ステラ、一人でタケノコ狩りしたかっただけじゃないの?」
「ち!? ち、ちちち違います!」
リアの思わぬ疑問に、うろたえながら否定するステラ。うん、さすがにそれはないわ。
「でもステラ、さっきの動きはいったいどうなってたんだ? この前のギュス様ばりにスゴかったぞ?」
「あー、確かに確かに~」
「ど、どうしてなんでしょう……」
オレたちの疑問に首をかしげるステラ。かわいい。
「やっぱり、レベルが上がったって事なんでしょうか……?」
「うーん、そうなるよねぇ……」
「あれ、ホントにマジなのか……」
確かに、それくらいしか原因が思いつかないんだよなあ……。でも、いまだにあの結果信用できてないんだよな、オレたち……。
そんな疑念はしかし、クエストを進めているうちにどこか彼方へと吹っ飛んでしまった。この後オレたちは、イヤってほど自分たちの成長を思い知らされる事になる。




