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3-10 オレ、誕生日なのかよ!





「それじゃ、かんぱーい……」

 ギルド近くの、冒険者行きつけの居酒屋。すっかり精魂尽き果てたオレたちは、ぐったりしながら乾杯していた。

「もう、完全に広まっちゃったね……」

「はい……」

「ギルド、行きたくねえな……」

 そんなオレたちの横を、今入ってきたパーティーが通りすぎる。オレらに気づくと声をかけてきた。

「おっ、リアか! 聞いたぜお前ら!」

「王様に褒美もらったんだってな! オレにも見せてくれよ」

 ああ……。今日何度目だろ……。さっきギルドでみんなに説明してからというもの、ずっとこの調子だ……。リアが愛想笑いしながらメダルを見せてる。ひとしきり話し終えると、げんなりした様子でリアがテーブルに突っ伏す。

「もう、ギルド移ろうかなぁ……」

 まあ、これだけ大事になっちまったら、気持ちはわからんでもないけどな……。

「移るって、どこに行くんだよ……」

「う~ん……。テンプルは入れるわけないし……。自由連盟は雰囲気悪いしなぁ……。やっぱ中央ギルド?」

 口元に指をあて、首をかしげながらリアが言う。微妙にかわいいのがムカつくな。

「でも、中央にはギュスターヴさんがいますよ?」

「あ……」

 ステラの一言に、オレとリアが絶句する。あ~……あの人、中央の人だっけか……。

「正直、こちらの比じゃなく大変な事になると思うんですが……」

「ああ、また救国の英雄とかなんとか言われるんだろうな……」

「うう、ダメかぁ……」

 なんか今、リアの口からエクトプラズム的な何かが出て行ったような気が……。しっかし、全然打ち上げってフインキにならないな……。







「じゃ、そろそろ帰ろっか……」

「ああ……」

「そうですね……」

 結局、まるでテンションの上がらないままお開きになる事になった。この店に入ってから、いったい何組のパーティーにメダル見せてやったんだろ……。すっかり冷めた焼き鳥をついばみながら、オレはため息をついた。

「ステラ、そんなに食べても太らないよねぇ……。いいなぁ……」

「そ、そんな事ないですよ……」

 どうでもいいガールズトークを始める二人。食った分は全部胸に行ってんじゃないのか、とか思いながら残りの果実酒をグイッとあおる。食った食わないのトークを続けていると、ふいにリアが思い出したかのように大声を上げた。

「あ――っ!」

「なんだよ! 急にデカい声出すな!」

 ここ店の中なんだぞ!? どうせみんな酒入って気にしてねーだろうけど! 

「忘れてた! ルイ、誕生日! 誕生日だよ!」

 え、そうなの? そういやこの前そんな事言ってた気が……。

「てか忘れんなよ、そんな大事な事」

「はぁ!? なんで私がアンタの誕生日なんか憶えててあげなきゃなんないのさ!?」

 ひっ!? 逆ギレされた!? てか、オレが誕生日憶えてない事が問題か。

 ステラが聞いてくる。

「あの、ルイさんお誕生日なんですか?」

「ああ、そうらしい」

「らしいって何さ、らしいって。てゆーか、どうしよ? 誕生日昨日だったね。今日のモンベールとこの店でチャラ……はさすがに寂しいよねぇ……」

「それは、ルイさんが少しかわいそうです……。私もプレゼント、用意してませんし……」

 うう、優しいよぅステラ。てか、誕生日昨日だったんかい。

「それじゃ、次回のクエストの後にお祝いしよっか。来週くらいかな?」

「そうですね、モンベールは夜行くなら予約しておいた方がいいですね」

「りょーかーい。それじゃステラ、明日予約ついでに買い物つきあってよ」

「はい、喜んで」

 なんか、オレを差し置いてどんどん話が進んでる……。ま、オレは祝われる方だし、準備は二人に任せるか。



 ……女の子に誕生日を祝ってもらえるなんて、オレも出世したモンだねぇ……。






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