3-7 この腕輪、おかしくないか!?
アンジェラのテンションにすっかりヤラれてしまったオレたち。幾分ぐったりしながら、ゾンビ討伐の報酬を受け取る。
「やったー! 1000リルだよ、1000リルーっ!」
銀貨十枚が入った袋を受け取り、子供のようにはしゃぐリア。ついさっきまでぐったりしてたってのに、まったくゲンキンなヤツだねえ……。
続いてオレ、そしてステラも袋を受け取る。いやー、しっかし一人1000リルとは気前がいいねえ。オレまで上機嫌になってくるぜ。
「それじゃ、レベルチェックも終わらせましょうか」
そう言って、アンジェラが棚から腕輪を取り出す。ああ、そういえばゾンビ退治以来まだチェックしてなかったっけか。
「さて、誰からやるのかしら?」
「はいはーい! 私、やるやるー!」
リアが右手を高々と挙げて申し出る。なんかコイツ、金もらってからやたらテンション上がってないか?
「そう言えば、リアはこの前レベルアップ目前だったわね。次は32だったかしら?」
「へへーん、あれだけの強敵をやっつけたんだし、レベルアップは確実だね」
ああ、そういう事か。相変わらずレベルアップ好きだな、コイツ。鼻歌交じりに腕輪を受け取ると、ゴキゲンな様子で腕に装着するリア。
「さーて、いっくよー」
かけ声と同時に、腕輪が光り出す……って、
「ええええええええ!?」
「キャ――――ッ!」
な、何事だ!? ものスゴい勢いでゲージがグルグル回って、どんどん珠に明かりがついてくぞ!?
驚くオレたちを尻目に、まばゆい光を放ちながら、あっという間に腕輪の全ての珠が点灯した。
「な、何、いったいどうなってんの……?」
「バ、バグったのか……? 壊れてんじゃねーの、それ……?」
「そ、そんなはずは……」
そう言いながら、リアの腕輪を調べるアンジェラ。しばらくして、オレたちの顔を見る。
「やっぱり、どこにも問題ないわ……」
「て事は、レベル41になったって事……?」
にわかには信じがたい話に、とまどうリア。いや、オレだってわけわかんねーよ! いきなり10レベルアップって、レベル1でメタルス○イムでも倒したのかよ!
アンジェラが、受付の奥からもう一つ腕輪を持ってくる。
「一応、こっちもはめてみてくれる?」
「う、うん……」
言われるがままに腕輪をつけるリア。すると、珠は光らずにゲージが少し伸びた。
「やっぱり、レベル41になってるわね……」
信じられないといった様子で言うアンジェラ。あまりの事に、オレたちも声が出ない。いつもならレベルアップの度にはしゃぐであろうリアも、呆然と腕輪を見つめている。いったい、どうなってるんだ……?
「さ、さあ、次は誰の番かしら?」
しばし訪れた沈黙を破り、ぎこちない調子でアンジェラが言う。そ、そうだな、チェックしようか……。
「次は私でいいですか?」
お、珍しいね、ステラ。てか、オレがずっと黙ってたから手を挙げたんだろうな。
「そう言えば、ステラちゃんもそろそろレベルアップだったわね」
「は、はい」
そうか、ステラもうレベル38になるんだな。てか、まだリアがレベル41になったって事を受け入れる事ができずにいるんだけど……。
ステラは一歩前に出ると、リアが最初にはめた方の腕輪を受け取り装着する。さて……。
「きゃっ!?」
「うおおぉぉっ!?」
さっきと同じだよ! またスゴい勢いでゲージも珠も満タンになっちまった! これ、ホントに壊れてんじゃないか!?
「そ、それじゃこっちもはめてみて?」
「は、はい……」
アンジェラから腕輪を受け取ると、さっそくつけ替える。するとゲージがグルグル伸びて、珠が三つ点灯した。
「ステラちゃん、レベル44ね……」
「は、はい……」
アンジェラに告げられるも、当の本人はまだ半信半疑なのか、おろおろとオレたちの顔を見てる。いや、不安になる気持ちはなんとなくわかるよ……。てか、レベル44って普通に上級プレイヤーだろ……。
「それじゃ、最後はルイ君ね……」
「お、おう……」
緊張を隠せないまま、アンジェラに返事する。てか、オレが一番ヤバそうじゃん、この流れ……。どうか、またおかしな事にならないでくれよ……?




