3-5 なんか、オレたちメチャクチャウワサになってる……?
モンベールを出て、人ごみの中大通りを行くオレたち。おととい歩いた時と違って、日中は人多いわ……。
三人で道を歩きながら、次回のクエストの候補日や希望階を話し合う。オバケが大嫌いなリアチャンは、相変わらず三十二階と三十五階を強硬に拒否ってるわけだが。ま、でもオレもしばらくは三十五階はご勘弁願いたいわ……。今回は三十階あたりでまったりやりたいね。薬草採取の仕事とかないかな……。
そうこうしてるうちに、ギルドの正門が見えてきた。相変わらずデカいな、あの扉……。てか、なんで扉の紋章剣と盾にしたんだろうな。このギルド、Sランクの剣士いないのに。拳王サマが作ったギルドなら、でっかく拳でも描けばよかったんじゃないか?
まあ、そんな暑苦しい紋章だったら、少なくとも女の子は激減しそうな気がするけど。
ギルドに近づいていくと、正門のあたりでたむろしていたパーティーの兄ちゃんが一人、リアに声をかけてきた。どうでもいいが、あいさつの時に初めにオレに声をかけてきた奴は、まだほとんどいない。
「よう、お前のとこ、なんか凄い事になってるみたいだな」
「へ? なんで?」
「なんでって、それを聞きたいからこうして聞いてるんだよ。お前ら、いったい何やらかしたんだ?」
怪訝そうな顔をする剣士の兄ちゃん。これはなんか、そこはかとなくイヤな予感がするぞ……。
「ここ二、三日の間、アンジェラがずっとお前らの話ばっかしてんだよ。なんかずい分活躍したらしいけど、ホントなのか?」
あー……。やっぱり……。この前ギルドで目覚めた後アンジェラに会った時に、フラグの気配は感じてたけど……。なんかオレたち、徐々に追い詰められつつないか? リアがなんとかごまかそうとする。
「べ、別に? フツーだったよ?」
「でもお前ら、おととい王様に呼ばれたそうじゃん。アンジェラが言ってたぞ、お前らがついに王様に認められたって」
「ぶっ!?」
そんな事まで言いふらしてんのかよ! あの姉ちゃん、見かけによらず節操ねえな! 思考が停止したリアにかわり、オレがテキトーな事を言う。
「いや、オレらちょっとがんばったから、お城でお偉いさんに褒められただけだって! そんなデカい話じゃないから!」
ホントはメチャクチャデカい話ばっかだったんだけどな! どうせ城の中の事なんかわかんねーだろうし、これでごまかせるだろ。兄ちゃんも納得したみたいだ。
「ああ、そりゃそっか。お前らみたいなヘンテコなパーティーが王様に褒められるわけないもんな! まったく、アンジェラも大げさだな」
うっせ! なんかそう言われるとムカつくな! それでもなんとかごまかせたらしく、兄ちゃんのパーティーは笑いながら立ち去っていった。もしかして、これからこんな質問がどんどんくるのか……? カンベンしてくれよ……。てか、ギルドの中に入るのが怖いわ……。
ギルドに入ると、ああ、やっぱり、いつもより明らかに注目されている気がする……。オレたちが来たと気づくや、広間のあちこちで話してた冒険者たちがオレたちの方を見る。ここでもウワサを確かめようとみんなが話しかけてくるよ。どんだけ言いふらしてんだ、アンジェラは……。
「なあお前ら、王様に呼び出されたとか本当か?」
「クエストでギュスターヴより活躍したらしいじゃん」
「あー、はいはい。私たちこれからアンジェラの所に行くから、話は後でね~」
明らかに興味本位で集まってくる連中を、用事があるからと追い払いながらウワサの元凶の所へと向かう。しっかし、リアはこいつらの扱い慣れてるよな……。
その元凶さんはと言えば、オレたちの姿を認めるや満面の笑顔で手を振ってくる。ヤバい、イヤな予感しかしない……。もう頭痛くなってきた……。




