1-7 リアって、意外とやり手?
街の商店街? を歩きながら、オレたちは今日のクエストについて打ち合わせをしていた。てか、オレがずっと質問してばっかなんだけど。
「今回は十三階だろ? 前より戦闘も増えるのか?」
「ああ、大丈夫だよ。目的地まではなるべくモンスターと遭わないようにするから」
「そんな事できんのか?」
「だって私、盗賊だし」
そう言えば、『デモグラ』だと盗賊って隠密スキルがあったな。あれを使うって事か。
「てか、だったらこの前もそうすればよかっただろ!」
「ダメだよ、前回はルイのレベル上げも目的だったし」
「あ、そっか」
「それにルイが逃げながら歌うの、見てて楽しいし」
「結局そこかよ!」
やっぱコイツオレの事ナメてるわ! 今朝のも絶対そうだ! コイツマジで油断ならねえ!
「今日はツインリザードが相手だから、ルイは距離を保って歌ってれば問題ないよ。あいつら移動スピードは遅いし」
「それは信用していいんだな?」
「今まで私がウソついた事あった?」
いや確かにウソついた事はないけどさ! いろいろと信用ならねえんだよお前は!
「ところでツインリザードの皮とか、どうやって持ち帰るんだ?」
「そりゃあ、その場で皮を剥ぐんだよ」
「お前、そんな事もできんの?」
「だって私、盗賊だし」
そんなスキルもあるのかよ。おいおい、盗賊、なんだか万能じゃねーか。てかリアって、やっぱ結構凄腕の冒険者なんじゃねえの? 何が悲しくて詩人なんかとつるんでるんだ? 前とは逆の意味で。
「まあ、盗賊のいないパーティーだと一時的に盗賊雇ったりする事もあるね。私も手伝う事ちょくちょくあるよ」
「なるほど、実は盗賊って結構お得な職業だったりするのか」
「かもねー。今回みたいな仕事だと、盗賊いないと最悪ツインリザードをそのまま持ち帰るしかないしね」
「それは効率悪すぎだな……」
「でしょ? 一回で持っていけるのなんて一人一匹か二人で一匹だから、今回みたいに八枚持ってこいなんて依頼だったらもうアウトだよ」
「すげえな、盗賊」
「でしょう」
でしょう、ってお前。 コイツは謙遜ってものを知らないのか?
「それなら皮剥ぐ手数料だけでも結構稼げるんじゃね?」
「そうだよ。大体10%から15%くらいが相場かな」
へー。高いんだかどうなんだかよくわからんな。
「まあ、私みたいな凄腕美少女盗賊だと20%や25%もらえるんだけどね」
コイツ、恥ずかしげもなくよく言えるな。
「あ、着いたね」
そうこうしてるうちにオレたちはギルドの前に着いていた。ま、今回は竪琴もあるし、いっちょいいとこ見せてやるぜ!
「おはよー、アンジェラ」
「あら、いらっしゃい」
ギルドの受付に行くと、赤毛のアンジェラが書類に目を通していた。この人、多分二十歳そこそこくらいの年だよな。いいとこ見せればフラグ立つかな?
「今日のクエストだけど」
「はいはい、十三階でツインリザードの皮集めね。ルイ君にムリさせちゃダメよ?」
「大丈夫大丈夫。私が全部片付けるから」
「相変わらず面倒見がいいのねえ」
いや、それって面倒見いいって言うのか? それに、この前は面倒どころか完全に遊ばれてたし。
「報酬はいくらだっけ?」
「えっと、八枚で320リル、そこからは一枚30リルね」
「っておい! 前とあんま変わんねーじゃねーか! 七階も下に進んでるのに!」
「だから、前のは特別っていったでしょ?」
「いや、そうだけどさ!」
十三階ともなると危険も増すし、それなりに命がけだと思うんだけど? この報酬は割に合うのか?
「十三階なら、向こうの十一階ゲートを使うといいわ。ルイ君は気をつけてね」
「大丈夫だって、それじゃまたねー」
アンジェラに手を振って、オレたちはゲートに向かった。
ゲートを抜けると、前見たのとは違う部屋に出た。やはり何人かがテーブルに集まって雑談したりしている。
「こんにちはー」
「おう、リアじゃねーか」
「ここ来るの久々だな」
「そっちのは新顔か?」
リアってやっぱ人気者なんだな。部屋に来ただけでみんな声かけてくるわ。
「今日は何するんだ?」
「ツインリザードの皮集めだよ」
「ああ、盗賊向けの仕事か」
「今度オレのパーティーも手伝ってくれよ」
「いいけど、私は高いよ」
「いっそ、うちのパーティーに入ってくれないか?」
おいおい、コイツどんだけ人気なんだよ! てか、なんかみんなが向けるオレへの視線が痛いんですけど。
「で、この兄ちゃんは誰なん?」
「まさかリアの男とかじゃないよな?」
「まっさか、そんなわけないでしょー」
どっと笑いが起こる。おい、そこはそんなに笑うとこなのかよ。
「ちげえねぇ、こんなヒョロ男がリアについてけるわけねえか」
「それもそうか、リアの相手なんて務まるはずないわな」
「ちょっとー、アンタら私を何だと思ってんのよー」
いや、その前にオレの事を何だと思ってんだよお前ら! ゲラゲラ笑ってんじゃねえ!
「おいリア、さっさと行くぞ!」
「ちょっ、何はりきってんのさー」
「兄ちゃんは早くリアとふたりっきりになりたいんだとよー」
「誰もいないからって襲ったりするんじゃねーぞー」
「返り討ちにあうだけだからな!」
「ギェャハハハハ!」
うっせえ! てめえら後で憶えてろよ!