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3-4 世紀末覇者、マジヤベえ……






 食事も終わったので、お茶とデザートを注文する。今日はみんなで果物のシロップ漬けを食べる事にした。オレはさっきの拳王さんの事が気になったので、もう少し聞いてみる。

「ちなみに、その拳王って人はどのくらい強かったの?」

「そりゃもうメチャクチャだよ。こーんなっきい岩をパンチ一発で真っ二つにできるんだってさ」

 リアが両腕をいっぱいに広げながら言う。おい! やっぱ世紀末覇者だろソイツ! ワンパンで岩真っ二つとか頭おかしいだろ!

「昔は中央ギルドに所属されていたそうです。聞くところによれば、遠く離れた岩も拳の衝撃波で粉々に打ち砕いたらしいですよ」

 ありえねーよ! それ、完全に人間ヤメてるだろ! 新型の人型兵器かなんかなのかよソイツ!

 隣では、リアが無邪気にはしゃいでる。

「すっごーい! そんな人がいたら、どんなクエストだって楽勝だね! そのうちステラもそのくらい強くなるんじゃない?

「そ、そんな事ないですよ……」

 ステラが少し赤くなってうつむく。てか、冗談じゃねーよ! そんなバケモノになられてたまるか! ステラさんは今くらいがちょうどいいんだよ!

「でも昔中央にいたんならさー、剣聖といっしょだった事もあるのかな……?」

「さあ、どうなんでしょう。人づきあいはあまりよくなかったと聞いてますけど……」

「話を聞く限りだと、孤高の一匹狼タイプっぽいもんな」

 てか、周りも関わりたくねーだろそんなバケモンと! いや、あの剣聖サマもバケモノらしいけどさ! そんなヤツに目をつけられた日にゃ、おちおち眠れもしないぜ……。






 しばらくして、お茶とデザートがやってきた。みんなで果物を口に入れる。

「おいしーい!」

「本当、甘くて……」

「甘いモン食えるだけで幸せだぜ……」

 甘いおやつとお茶の組み合わせは素晴らしいね、やっぱし。カップを口に運びながら、ステラがリアに話を振る。

「シティと言えば、元Sランクの方がいらっしゃいましたよね」

「あー、フサじいの事?」

「誰だよ、フサじいって」

「ああ、ルイは知らないか。フサノリさん。元Sランクの弓兵さんだよ」

 うん、知らないね。てか「フサノリさん」って、思いっきりジャパニーズな名前だな。リアが続ける。

「まあ、あの人いっつも修行に出かけてるからね~。てゆーか、ちゃんとクエストやってるのかな? あの人」

 さっきの拳王サマといい、自由なヒト多いなシティギルド! そんだけユルいから十五年かそこらでここまで大きくなったのかもしれないけどさ!

「でも、あの職業ってどういう意味なんだろう?」

「ん? そんな変な名前なのか?」

「うん」

 コクリとうなずくリア。珍しいな、いつもはムカつくくらいムダにオレにいろいろレクチャーしやがるってのに。

「それで、どんな名前なんだ?」

「えーとね、『ヨイチ』。なんだろね? ステラはわかる?」

 はあぁぁぁぁあ!? 「与一」ぃぃぃ!? 与一ってあの、那須与一なすのよいちの事かよ! 弓の名人の! なんでそれが職業名になってんだよ! 意味わかんねーよ!

「ごめんなさい、私にもなんの事かさっぱり……」

 そりゃそうだろうよ! んなモン日本人しか知らねーよ! オレだってたまたま知ってたってレベルだし!

 そんな事より、一つ気になった事があったので聞いてみる。

「なあ、”元”Sランクってどういう事だ? ランクって下がったりするのか?」

 質問するオレに、リアとステラが今日何度目かという呆れた表情になる。

「そりゃ、年取ったら下がるに決まってるでしょ……」

「え、そういうモンなの?」

「四十歳付近から、徐々に力は衰えてきますから。今の大将軍様も、そろそろBクラスに降格しそうなのでリシュリュー様に仕事の受け継ぎをしているというお話もありますし」

「大将軍はAランクが条件だもんね」

「大将軍って、軍のトップとか?」

「そうだよ。軍務大臣も兼任する超重要ポストだよ」

 へえ……。スゲえエラいんだな……。しかし大将軍と軍務大臣を兼務するって、大丈夫なのかそれ? よくわからんけど、制服組と背広組って言うの? キチンと分けとかないと大変とか聞いた気がするんだけど。

「じゃあ、ずっとレベルチェックしないでAランク~とか言い張るヤツもいたりすんのかな」

「んな事考えるのルイだけだって……と言いたいところだけど、そういう人は結構いるみたいでさ。だから各ギルドとも、年二回の健康診断の時にレベルもチェックするんだよ」

「そうなんだ……」

 てか、健康診断あるのかよ。意外と至れり尽くせりだな。

「でもそれだとよ、さっきの拳王サマは健康診断に来ないんだろ? もうとっくにBランクくらいまで下がってたりしないのか?」

「それはありませんよ。Sランクの降格は、巫女様のご神託によって知らされますから。そういう話は聞いてませんので、今でもSランクのはずです」

「マジか……」

 二十年経っても強いままって、マジでバケモンかよそいつ……。絶対に会いたくねえな、そんなヤツには。





 その後お茶を飲み終えたオレたちは、支払いを済ませるとモンベールを後にした。そのまままっすぐギルドへと向かう。あんな話の後だから、なんかヤだな……。頼むから、偶然拳王サマと鉢合わせとかはカンベンしてくれよ……?






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