3-3 Sランクってなんだ?
しばらく三人で晩餐会の料理について話しこんでいると、注文の品がやってきた。
「晩餐会の料理もおいしかったけどさ、やっぱモンベールのスパゲティだよねー!」
「はい!」
相変わらずここの料理となると、テンション高いな二人とも……。てか、ここのパスタがどうこうってより、晩餐会は緊張しすぎで味がわかんなかっただけじゃないのか?
奮発して買ったカルボナーラをフォークに巻きつけながら、オレはこの前から聞きたかった事をリアに質問してみた。
「なあ、Sランクって何なんだ? Aランクの上があるのか?」
「……ルイ、冒険者ならせめてそれくらいは知っておこうよ」
ため息混じりに、リアがオレを憐れみの目で見てくる。おい! なんでそんなカワイソーな人を見るような目をするんだよ! ステラが説明してくれる。
「Aランクの上にはSランクがあるんですよ。現在Sランクの方で有名なのは、『剣聖』レナード様とテンプルギルドの『聖騎士』グザヴィエ様ですね。自由連盟の『槍帝』セザールさんも有名です」
ん? セザールって奴の名前を聞いた時、一瞬リアの顔が歪んだような? 気のせいか? それよりも、気になった事があるので聞いてみる。
「さっきから『剣聖』とか『聖騎士』とか中二な称号ついてるけどさ、それなんなの? 自称?」
オレの発言に、二人は顔を見合わせ、ついで同時にため息をつく。だからなんなんだよ、そのあきらめきったような態度!
「自称って……。それは巫女様がつけるに決まってるでしょ」
「巫女様?」
「教会の巫女様ですよ。Sランクというのは、巫女様のご神託で決まるんです。その時に、称号も告げられるんですよ」
へー……。そういう仕組みなのか。てか、巫女様ってのがいるんだな。
「巫女様はSランクなの?」
「巫女様は巫女様だってば。小さい頃から教会で育てられて、前の巫女様から受け継いでいくんだよ」
「そうなんだ……」
そんな奴『デモグラ』にはいなかったからな。てか、この世界いろいろと『デモグラ』と違うから憶えるのも一苦労だよ! オレ勉強得意じゃないのに!
「中央ギルドにはSランクはいないの?」
しばらくカルボナーラをすする事に集中していたオレだったが、再び質問を始める。てか、いちいちリアにバカにされるのがなんだか納得いかないんだが……。オレにはそもそもこの世界の情報があんまりないわけだし。
「今は王国の軍に所属されてますが、レナード様は元々は中央ギルドのご出身だったそうですよ」
「へー、そうなんだ」
「スゴいよねー、己の剣のみを頼んであそこまで出世するなんてさー」
確かにな。もっとも、さっきの話からすれば、それも今の王様だからこそなのかもしれないね。
「それにしても、そうなるとうちのギルドだけSランクがいなくて、なんかちょっと寂しいな」
「え、いるよ? シティにも」
何気なくオレが言うと、スープスパゲティを食べる手を止めてリアが反応する。
「そうなん?」
「うん。いるってゆーか、シティを作ったメンバーの一人なんだけどさ」
「シティギルドができたのは、今から十五年くらい前でしたよね」
「へー、そんな最近なのか」
なんか意外だな。結構立派な建物だったから、それなりに歴史あるのかと思ってたよ。
「ところで、そのシティのSランクはどんな人なの?」
「うん、格闘家からSランクになった人なんだってさ。メチャクチャ強かったんだって」
「格闘家からSランクというのは、記録上ではその方ただ一人らしいですね」
「そりゃスゴいな」
そういや格闘家って、斧兵ほどじゃないけどあんま見ないな。ま、素手で戦うらしいしな……。好き好んで選ぶヤツなんてそうそういないか。
「で、その人にもイタい二つ名が付いてるのか?」
「イタいって言うな。それとあれは職業の名前だってば。えーとね、その人の職業は、『拳王』って言うんだよ」
おいいいいぃぃぃっ! なんだよその世紀末を制覇しそうな名前は! デカい黒馬に乗ってんじゃねーだろうな、ソイツ!
「二十年ほど前に活躍されていた方だそうですが、性別不詳でいつもフードやマスクをしていたので姿を知る人は少ないそうですね。噂では昔は燃えるような赤毛の少年だったとか」
「へー、謎が多いんだな」
「そうみたいだよ。シティができてすぐに、修行の旅に行ったらしいし。今でもギルドの役職に就いてるらしいんだけど、本人が会議とかに出席する事はなくて、たまに使いの人が来てるんだってさ」
「修行の旅っすか……」
なんか奥義でも極めに行くつもりなんかな。てか、会議出なくてもいいとかどんだけVIPなんだよ。ま、設立メンバーならそういうモンなのかもしれないけど。オレも起業目指そうかな……。




