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3-2 マジで、あの王様が!?






 一通り注文を終えたオレたちは、水を飲みながら話し込む。

「それにしても、馬車はカンベンしてほしいよな……」

「あ、私もそれ思った。朝急に外が騒がしくなって、びっくりしたもん」

「私、最初一人でしたから凄く緊張しました……」

「あ、そっか……」

「オレ、最近ご近所を歩きにくいんだけど……」

「あ、私も……」

 なぜかしゃべればしゃべるほどテンションが下がっていく。普通こういうのって、成り上がりとかサクセスストーリーとして語られて、どんどんテンション上がってくところだと思うんだけど……。オレたちって、想像以上に小市民だったのね……。




 王城での出来事を語るほどに、今まで暮らしてきた現実とのギャップに不安を覚えるオレたち。ため息をつきながら、つい一言こぼしてしまう。

「オレら、これからどうなっちゃうんだろうな……」

「ルイ、ずい分王様に気に入られてたもんね……」

「またお城に呼ばれたりするんでしょうか……」

「だろうな……」

 呼ぶ気まんまんだったもんな、王様。

「お前ら、あの王様のノリ、どう思う……?」

「え、えーと……親しみやすくていいんじゃない?」

「そ、そうですね」

 二人ともしどろもどろになりながら答える。そりゃ、あんなの見ちゃあな……。しかし、次のオレのセリフへの反応は、予想外のものだった。

「あんなバカ殿で、この国は大丈夫なのかねぇ……」

「はぁ?」

「え?」

 二人が、何言ってんだコイツ? って顔でオレを見る。え、なんで?

「バカはアンタでしょ。アンリ四世陛下と言えば、建国の英雄ルイ一世、中興の祖フィリップ大帝以来の名君と名高いお方じゃん。ルイ、冗談にしても言っていい事と悪い事があるんだよ?」

「長年の宿敵だったワグナイゼン帝国と電撃的な講和を成し遂げ、周辺諸国との緊張関係を和らげた一連の外交政策は『外交革命』とまで言われています。おかげで大陸の通商も活性化し、我が国の経済も飛躍的な成長を遂げたんですよ」

「マジで!?」

 ウソだろ、あの王様が? 詳しい事はよくわからんけど、そんなスゴい王様だったのかよ? オレ、ただの頭のユルいエロオヤジだとばかり思ってたぞ? ステラが説明を続ける。

「あのサイモン様も、陛下によって見出されたお方なんですよ? 元々王国宰相の椅子はベルフォール公爵家を筆頭とする三大貴族の持ち回りだったんです。当時高級官僚とは言え平民出身だったサイモン様が宰相に選ばれたのは、有為な人材を積極登用するという陛下の方針の最たるものなんです」

「ルイさぁー、頭が弱いのはわかるけどさぁー、最低限の事くらいは勉強しておいてもらわないと、こっちもフォローのしようもないよ?」

 うっせ! あんだけ王様の前で醜態晒してたオマエに言われたかねーよ! しかし、そうか、あの王様、そこまでスゴいお方だったのか……。てか、どっちかってと王様のやってきた事のスゴさより、コイツらみたいな庶民にもここまで尊敬されてる事にびっくりするわ……。

「ま、それだけにあのノリの軽さにはびっくりしたけどね……」

「まさか、希代の名君にちゃん付けで呼ばれるとは思いませんでした……」

 ああ、コイツらが異様に緊張してたのは、相手がスゴすぎる王様だからってのが大きかったのか……。確かに、そんな話を先に聞いてたらオレだってどうなってたかわからんな。知らぬが仏とはまさにこの事だわ……。

「ルイが王様の話全然聞かないで王女様ばっか見てたのには、さすがに殺意が湧き上がるのを抑え切れなかったけどね……」

「陛下も、ずい分と気に病んでおられたようですしね……」

「ご、ごめんなさい……」

 女性陣の危険な目つきに、自然と身体が縮こまってしまう。だって、そんなスゴいお方だとは思わなかったんだよう……。


 今度王様に会った時は、もうちょっとだけ気をつけるようにしよう。







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