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2-13 今日は一日、大変だったぜ……





 外はすっかり暗くなり、あちこちに火がくべられている。王城から出たオレたちは、朝より人数の増えた衛兵さんの間を通り、城門をくぐり抜けた。ふぅ、ようやく元の世界へ戻ってきたぜ……。

「つ、疲れたぁ……」

 ぐったりとうなだれるリア。そりゃそうだろうな。オレも早く帰って寝たいもん。普段タフなステラも、今回ばかりは相当まいってるようだし。

「皆様、晩餐会は楽しまれましたか?」

 そう言いながら、ウェインさんが笑顔で聞いてくる。ああ、まだこの人がいるんだよな……。うかつな事は言えないぜ。リップサービス、リップサービスっと……。

「も、もちろんっすよ! 王様とも話せたし! な?」

「う、うん! 剣聖様にも会えたし!」

「リ、リシュリュー様にもよくしていただきましたしね!」

 必死になってよかった事を思い出すオレたち。ま、その人たちのせいでこんだけ疲れちゃってるんだけどな……。愛想笑いを浮かべながらしゃべるオレたちに、ウェインさんが大層感銘を受けたように言う。

「さすがはルイ様! あれほどの方々を前にしながら、物怖じ一つする事なく堂々と振舞われるとは! 私など、リシュリュー様の前に立ったらもうそれだけで震えが止まりませんよ!」

 ああ、黙ってたらスゲえ怖そうだもんな、あのオヤジ……。それはともかく、この人ギュス様と違った意味でやっかいなんだよな……。ギュス様は勝手に勘違いしてく系だけど、この人の場合はどうもオレを崇拝してるっぽい。なぜ? しかもギュス様よりテンション高いから、今も夜の街中だってのに大声で叫んじゃってるし。晩餐会では貴族っぽいと思ったけど、やっぱ気のせいなのかな……。




 人通りも少なくなった王城前の大通りを歩きながら、オレたちは次のクエストについて話し合う。ウェインさんも、さすがに仕事の話には口を差し挟んでこない。しかしこの辺りって、結構早い時間に店閉まるんだな……。まあ、都心の丸の内とかも店閉まるの早いみたいだしな……。

 モンベールの前を通りすぎ、やがて大通りが交差する広場の噴水の物影が見えてくる。

「それじゃ、ギルドにはあさって向かうという事でいいでしょうか」

「さんせ~。もうクタクタだから、明日はゆっくり寝させてぇ~」

「オレも、それで頼む……」

「ギルドに行く前に、モンベールでお昼という事でいいですね?」

「うん、それでお願い……」

 そんなわけで、明日は一日休んでギルドへはあさって行く事に決めた。お願い、リアじゃないけど一日くらいゆっくり休ませて。


 やがて、広場についた。

「それじゃウェインさん、すいませんけどステラを送ってってあげてください」

「おまかせを! このウェインがいる限り、ステラ様には指一本触れさせません!」

 いや、家まで送るだけなんだからさぁ……。別に何も起こらないって。仮になんかあったとしても、ステラなら一人で片づけちゃうだろうし。ほら、ステラも様なんてつけられて困ってんじゃん。

「それじゃステラ、またギルドで」

「またねぇ~」

「はい、それでは失礼します」

 オレたちにペコリと頭を下げると、ウェインさんにも「よろしくお願いします」と一礼して帰っていくステラ。オレたちは、その反対側へと向かって歩いていく。

 はぁ、やっとウェインさんから解放されたよ。いや、別に嫌いとかでは全然ないんだけどさ。二日酔いの次の朝にメガ盛りトンカツは食いたくないって言うか……。しかし二人きりになっちゃって、ステラ大丈夫かな。主にテンション的な意味で。









 真っ暗になったいつもの道を、無言で歩き続けるオレとリア。コイツが全然しゃべらないとか、槍でも降るんじゃないか……? なんか声かけにくいな……。

「なあ、オレ、いろいろ聞きたい事あるんだけど……」

「ごめん、今日はもうカンベンして……。あさって聞くから……」

「ああ、わかった……」

 こりゃホントにまいってるわ……。オバケの時とはまた違ったヤラれ方だな……。

 そうだよ、全てはあの幽霊が元凶なんだよ! おとなしくギュス様にやられてくれればこんな事にはならなかったってのによ! 誰もVIPとのコネとか求めてねーっつの! あ、でも、王女様とはまた会いたいな……。

 ん? なんかリアがジト目で見てる。

「ルイ、今女の子の事考えてたでしょ……」

「え!? い、いや別に!?」

「どーせまた、あの王女様の事でも考えてたんでしょ……」

「い、いや!? そんな事全然考えてないぜ!?」

 なんだよ、なんでわかるんだよ!? エスパーか!? コイツエスパーなのか!?

「ふーん、どうだかねー」

 超低いテンションでリアが言う。てか、別にオレコイツに弁解する必要ないじゃん! いや、もうつねられたくないからさ……。




 やがて、いつもの交差点についた。さすがにこの時間にベンチに座っている人はいない。しかし今日のリアの疲れっぷりはさすがに心配だな。

「なあリア、今日は送っていこうか?」

「え……? いやいいよ、ルイも疲れてるんだろうし」

 なんか今日はずい分しおらしいな……。いつもなら「何ー? 送りオオカミー?」くらい言うってのに。ちょっとホントに心配になってきた。

「遠慮しなくてもいいって。でも、ホントに大丈夫なのか?」

「大丈夫大丈夫。それにどうせルイがいても、襲われたらなんの役にも立たないって」

 うっせーよ! 確かにそうだろうけど! でも、言葉にいつものキレがないな。やっぱ疲れてるのか。ま、でも、こんな口が聞けるなら大丈夫だろ。

「それじゃ、またね」

「おう」

 そう言って家へと帰ろうとしたリアは、言い忘れた事があるかのようにこちらを振り返って言った。

「心配してくれて、ありがと」

 それだけ言うと、リアはさっさと行ってしまった。……あれ? 今日はマジで素直じゃないか? 明日、マジで槍が降らなきゃいいんだけど……。



 家についたオレは、そのまま次の日の昼まで眠りこけた。






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