2-12 頼むから、フツーに帰らせてくれよ……
晩餐会も終わりに差しかかっているようで、会場から退出していく人たちもちらほらと見かける。オレたちもそろそろ帰ろうと、王様にあいさつしに行く。テーブルには、貴族たちと談笑する王様ファミリーの姿があった。皇太子様ご夫妻は、ピピン王子様が寝ちゃったからなのか、もう退場したようだ。しかし他の貴族と話し中だと、ちょっと話しかけにくいな……。と思ってたら、王様がオレらに気づいたようだ。
「あ、ルイ君! 戻ってきてくれたの?」
相変わらず王様声デケえ! 気づいてくれて助かったけどさ!
「あの、オレたちそろそろ帰ろうかと思って……」
「えええええええええ!?」
だから声デケえよ! てか、なんだよそのリアクション! オレら帰っちゃいけないのかよ!
「みんな、泊まってくんじゃなかったの!? お部屋ももう用意してあるんだよ?」
「そ、そんな事! そこまで迷惑かけられないっすよ!」
「えー! そんな事気にしなくていいのにー! ゆっくりしていってよー!」
いや、そう言われましても! それに、もうクタクタなんだよオレたち! 王様もどうやら察したらしく、オレたちを引き止めるのをあきらめる。
「そっか~。残念だけど仕方ないね。それじゃ、これから馬車用意するからちょっと待っててね」
「いやいやいやいや! 歩いて帰りますから! お気を遣わずに!」
カンベンしてくれ! ただでさえ近所の目が気になるってのに、こんな真夜中に馬車なんかで帰ったら何言われるかわかんねえだろ!
「そっかぁ……。それじゃせめて、見送りにお供だけでもつけさせてよ」
「だから大丈夫ですって! 家に帰るだけなんだし!」
「ダメだよ、ルイ君がよくても、女の子もいるんだから。ルイ君が二人とも送るわけじゃないんでしょ?」
う……確かにその通り……。これは断りにくいし、ありがたく受けておくか……。いやさ、オレら以外の人がいると、気を遣っちゃうんだよ……。
「それじゃ決まりだね! 誰がいいかなぁ……。そうだなぁ……よし! ウェインくーん!」
王様が呼ぶと、すぐにイケメン騎士のウェインさんがやってくる。いや、ギュス様といいこの人といい、そんなパシリみたいに使っていい人たちなの?
王様に呼ばれ、こっちに来るやひざまずくウェインさん。ギュス様といい、なんか今日はオレらのために、いろいろすいませんね……。
「ウェイン君、みんながそろそろ帰るって言ってるから、いっしょに歩いて送ってってあげてよ」
「御意。しかしおそれながら陛下、それならば馬車を用意させた方がよろしいかと……」
「僕もそう思ったんだけどさー、ルイ君、どうしても歩いて帰りたいらしいんだ。女の子もいるし、悪いけど送ってあげてもらえるかな?」
「御意! このウェイン、身命を賭してお守りいたします!」
王様の頼みに、めっちゃ元気に答えるウェインさん。いや、家まで送ってくだけなんだからさ……。なんでこんな大げさな話になるんだよ……。
さよならのあいさつをするオレたちに、王様が名残惜しそうに言う。
「あーあ、明日の朝食、楽しみにしてたんだけどなぁ……。今度はちゃんと泊まっていってね?」
王様、そんなにオレらが泊まるの楽しみだったんすか……。なんかホントすいません……。王様が、王女様の方を見ながら言う。
「マリちゃん、残念だったね。明日はルイ君と気兼ねなくお話できると思ったのに」
「な!? お、お父様!? ですから私はそのような事、一度も……」
「それじゃみんな、今日はおつかれさまでした。気をつけて帰ってね~」
王女様の抗議をスルーし、オレたちに手を振る王様。話が通じないと思ったのか、王女様も抗議をやめてオレたちに手を振ってくれる。ヤベ、マジでカワいい……。
そのまま後ろ歩きで王女様を見続けていたかったが、そんな事してリアにつねられちゃたまらないので、一礼して会場を後にする。てか、泊まっていれば明日は王女様とお話できたのか……。これは多少ムリをしてでも、お城に泊まるべきだったんじゃないのか……? ちょっと、いや、メチャクチャもったいない事をしてしまったかもしれない。
一度貴賓室に戻り、女性陣が着替えるのを待った後、オレたちはウェインさんと共に王城を後にした。てか、今日は朝から一日中、いろいろありすぎだろ……。いやホント、マジで長い一日だったぜ……。




