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2-9 呼び捨てとか、どんな苦行だよ!





「皆さん、あちらです」

 そう言ってギュスターヴさんが示した先には、な、なんだか明らかに強そうな人たちが集まってる……。何アレ! あの辺、明らかに空気がおかしいだろ! ブルってるオレの隣では、リアとステラがやはり驚いた様子で声を上げている。

「け、剣聖レナード……!? ホ、ホンモノじゃん……!」

「ほ、本当です……! リシュリュー長官もいらっしゃいます……!」

「な、なんだよお前ら、あの人ら知ってんのか?」

 オレの問いかけに、二人が猛然とたたみかけてくる。

「あったり前じゃん! あの『剣聖』だよ!? 世界にたった二人しかいないSランクの剣士だよ!? この国で知らない人間なんていないよ!」

「リシュリュー様は王国の調査隊隊長にして、文化科学庁の長官も務められているお方です。レナード様と並ぶこの国の英雄です」

 そ、そんなにスゴい人たちなのか……。てか、Sランクってなんだ? 『デモグラ』にそんなランクあったか?

 あれ、そういやあの顔どっかで……。

「ギュスターヴ様、あの人たち、どこかで見た気がするんですけど……?」

「それはそうでしょう。式典の時、武官の列の二番目と三番目に並んでおられましたから」

「あ、そっか!」

 そういやそうだった! 一番前にいた人はもっとオッサンぽかった気がするけど、そっか、あの人たちもそこにいたんだ……って、ええええ!? 二番目と三番目って、つまりそんだけ偉いって事じゃん! ヤベえ、ギュス様の上司ってそんなにエラい人たちなのかよ!?

「あの、ギュスターヴ様……」

「はい、なんでしょう?」

「オレたち、ホントにそんなエラい人たちの所に行っていいんすか……?」

 オレが聞くと、ギュス様は驚いたようにオレの顔を見た。

「もちろんですとも! いえ、会っていただかねば困ります! ルイ殿と我々はこれから長いつきあいになるわけですし、今から顔を憶えてもらわねば!」

 ああ、この人すっごいノリノリだよ……。早く家に帰りたい……。





 ひとしきりビビり終え、さあいざテーブルへ、と一歩踏み出しかけた時、なにか思い出したかのようにギュス様がオレに話しかけてきた。

「ところでルイ殿」

「はい?」

「先ほどから私に”様”をつけておられますが、私の事はどうぞギュスターヴと呼び捨てていただきますよう」

「はぇ!? そ、そんな事できるわけないじゃないっすか! なあ、みんな!」

「そ、そうですよ! そんな、おそれ多いです!」

「ギュスターヴ様こそ、私たちに”殿”なんてつけないでください! ルイなんか、”コイツ”で十分ですから!」

 ギュス様のお願いに、全力でお断りするオレたち。てか、おいリア! さすがにコイツ呼ばわりされる筋合いはねーぞ!

「そんなわけには参りません! 皆さんは私の命の恩人なのですから! 呼び捨てなどとんでもない!」

 あー……。これは、話が進まないぞ……。これは、お互いの妥協点を示さないと……。

 よーし、ここは大学のサークル仕込みのオレのコミュ力を発揮するか……。

「じゃ、じゃあこうしましょう。オレたちはお互いに親しくなりたい。でもさすがにいきなり呼び捨てはハードルが高い。なので、オレたちはこれからあなたを親しみを込めてギュスターヴさんと呼びます。だからギュスターヴさんも、オレたちの事をさん付けで呼んでください。これなら、より一層なかよしな感じしますよね?」

 オレの提案に、しばしポカーンとするギュス様。あれ? てっきり心理的に近づくために呼び捨てを提案してきたんだと思ったんだけど、もしかして違った? ヤバい、オレ、調子に乗りすぎたか……? まさか、仕事だから仕方なくつきやってやってんのに、何勘違いしてんだとか思ってる……?

 ビクつくオレに、ギュスターヴさんが低くうめいた。

「素晴らしい……」

「……え?」

「さすがルイ殿、自らは決して驕らないのみならず、私の思いまで汲んでいただけるとは……。しかもこの柔軟な発想力、やはりあなたはただ者ではありません……!」

 えええぇ――っ! どこをどうすればそんな解釈になるんだよ! 普通だろ!? 至ってフツーだろ!? ギュス様、アンタ絶対思考回路おかしいよ!

 当のギュス様はと言えば、ほがらかに笑いながらオレたちにうなずいてみせる。

「わかりました、ルイさん! これからは私たちは友人です! 皆さんもどうかお好きな風に私の事をお呼びください!」

「は、はい! よろしくっす、ギュスターヴさん!」

 よ、よかった……。なんとか無事にまとまったぜ……。こういうところはものわかりがよくて助かるわ、ギュス様……。

 てか、本番はこれからなんだよな……。意を決して、オレたちはテーブルを囲むこの国のレジェンドたちに近づいていった。







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