2-8 もしかしてオレ、モテ期到来!?
王様との食事を終え、ギュスターヴさんと共に晩餐会場を回るオレたち。みんな立ち上がっていろいろしゃべってる。なるほど、立食パーティーみたいなノリなんだな。
もっとも、パーティーの作法なんてまるでわからないオレは、ギュス様にいろいろ質問する。ま、作法の質問なんてしないんだけどさ。
「あの、このお姉さんたち、式典にいましたっけ……?」
「こちらの方々は、式典の間はそれぞれのお部屋にいらっしゃったのですよ。式典には武官と文官のみが出席してましたからね。ご家族の方は、晩餐会のみのご出席なのですよ」
あ、なるほど……。じゃ、このお姉さんたちもみんな貴族のお嬢様なわけか……。あ、あのショートのコかわいいな……。目なんかキレイな緑色だし。オレの様子に気づいたのか、ギュス様が教えてくれる。
「あの方はベルフォール公のご息女、エリザベート様ですね。狩りがご趣味だそうで、その弓の腕には目を見張るものがあるのですよ」
「へえ、スゴい人なんすね」
「ただ、ずい分と気の強いお方らしいです」
「はぁ……」
確かにそんな感じするわ。鼻っ柱超高そうだし。カワイイのに、もったいないな……。声かけるのはやめとくか……。新たな出会いをあきらめてこちらを振り返ると、リアとステラがカチカチになりながら歩いてる。ステラはまだしも、リアは完全にロボット、いや、油の入ってないブリキのオモチャだよ……。
ギュスターヴさんも気になったのか、女性陣卒倒モノのさわやかイケメンスマイルで優しく声をかける。
「リア殿、大丈夫ですか?」
「ひゃい!? リ、リア殿は至って健康です!」
なんだそれ……。誰もそんな事聞いてねえよ……。てか、自分で「リア殿」って……。いや、そもそもなんでギュス様オレらを「殿」付けで呼んでんだ? マジで違和感しかないんだけど。
そうやって歩いていると、高そうなドレスやら宝石やらで着飾った女の子の一団がオレたちの方へと近づいてきた。けっ、どうせギュス様目当てなんだろ? はいはい、どうせオレは非モテですよーだ。
心の中で毒づいていると、女の子たちがキュンキュンした声で話しかけてきた。
「ねえねえ、ルイ様よ!」
「うそっ、思ったよりカワイイ!」
「ルイ様、先ほどのお歌、とっても素敵でしたわ!」
え、オレ!? オレの方なの!? てか、ルイ「様」って! 何コレ! 夢か!? 夢なのか!?
そんなオレの心中にはお構い無しに、女の子たちが口々に質問してくる。
「ルイ様はぁ、彼女とかいるんですかぁ?」
「もしかして、そちらのどちらかとつきあってたりとか?」
「それとも、まさかお二人とも……!?」
そう言って、キャーッと盛り上がるお嬢様三人組。おい、勝手に盛り上がんなよ! リアが慌てて否定する。
「いやいやないない! そんなの全然ないですって!」
いやそうだけどさ、そんな全力で否定しなくてもいいだろうによ……。微妙に傷つく……。
「えー、そうなのー?」
「では、私たちがアタックしても問題ありませんわね!」
「ルイ様ぁ~、私とデートしてくださ~い!」
ちょっ!? ホントに告ってきた!? 気分的にはぜひOKしたいけど、女性陣の視線が痛い! 誰か助けて! オレのアイコンタクトに気づいてくれたのか、ギュス様が間に入ってくれる。
「失礼いたします」
「きゃあ! ギュスターヴ様よ!」
「キャア――――ッ!」
女の子たちの黄色い悲鳴が会場に響き渡る。なんだよ、結局ギュス様の方がいいのかよ! てか、貴族の娘さんがそんなはしたない声上げていいのかよ!
「ルイ殿はこれから、私の上官の席へとごあいさつに向かわれるところなのですよ。申し訳ありませんが、ご了承いただけますでしょうか」
「はい! ギュスターヴ様がそうおっしゃるのなら!」
「今度私とも踊ってください!」
「私たちのテーブルにも来てくださ~い!」
そう言って、きゃぁ~! と向こうに行く三人組。ギュス様と約束しちゃった~、とかなんとか言ってる。なんだよ、オレは当て馬かよ! 人生初のモテ期が到来したかと思ったのによ! まあとりあえず、助かりはしましたわ……。
「どうもありがとうございます」
「どういたしまして。しかし、勝手に決めてしまいましたがよろしかったでしょうか?」
「はい? 何が?」
「私の上官たちのテーブルですよ。まあ、話しやすい方たちだとは思いますが……」
そ、そうだった! てか、ギュス様の上司って、超エラい人しかいないじゃん! いやまあ、さっきまで一番エラい人たちと食事してたけどさ! ホラ、リアとステラもチョー青ざめてる! でも、さすがに断るわけにもいかないし……。
「も、もちろんOKっすよ、な、みんな!」
「は、はい……」
「だ、大丈夫、大丈夫でしっ!」
……うん、こりゃダメだね。覚悟を決めて、ギュス様の後についていく。よ、よーし、第二ラウンド、気合入れていくか……。




