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1-6 リアの応援歌、初披露





「ルイー、来たよー」

 クエスト当日。オレがメシを食い終わって一息ついていると、リアが扉をドコドコ叩いてオレを呼んだ。えー、オレまだゆっくりしたかったんだけど。

「おう、入れよ」

 とりあえず中に招き入れる。

「おじゃましまーす」

 遠慮なくうちに入ってきて椅子に座るリア。てか、コイツとオレは結局どういう関係なんだ? 少なくとも付き合ってるって感じではないが。

「とりあえず、お茶でもしようよ」

 え? お前がそれ言うの? いくら何でも、オレ舐められすぎじゃね? 

「へいへい、わかったよ」

 そんなわがままにも文句ひとつ言わず従うオレ。人間できてるぜ。お湯を沸かしながら、リアのどうでもいい話を聞き流す。




「ところでさー」

 ついだお茶に口をつけながら、リアが竪琴を指さした。

「できた? 私の応援歌」

「ああ、できたぜ」

 そう言いながら、竪琴を手に取る。

「お前にはもったいないくらいの曲がな」

「えー、なにー? ルイのくせに生意気ー」

 少しムッとした様子で頬杖をつくリア。

「ご大層な事言っておいて、変な曲だったら容赦しないからね。鼻水たらすまで酷評してやるんだから」

 サラリと恐ろしい事言ってくれんな、この女。オレこう見えて結構豆腐メンタルだから、わりとマジでヘコむかも。

「ま、ルイの曲でマトモなものなんて今までなかったけどねー。これはもう土下座確定かな?」

 そんな言ってられんのも今のうちだ。いいか、聴いて驚けよ、オレの渾身の応援ソング! 制作時間約二十分!

 そしてイントロをかき鳴らす! 聴け! ジャジャジャジャージャージャジャジャジャジャージャージャ……。

「え、ウソ……?」

 ん? イントロ聴いただけでなんか驚いてるな。だがまだ早いぞ! 驚くのはオレの歌を聴いてからにするんだな!


 風となって 大地駆け抜け

 放つ刃  闇を切り裂く

 音もなく 忍び寄って

 宝の山 その手につかむ


 さあ、ここからがサビだ! 凄すぎてチビっても知らねぇぞ、覚悟しろ!


 リア 美しき

 リア 謎の戦士

 その名は盗賊 リア


 どうだ! オレの歌唱力と歌詞センス! シビれたか? シビれただろ!




 ……なんだ、この間は……? 不安になるだろ、なんか言えよ。え、ウソ、これってダメなのか……? 永劫かとも思われた間の後。自信を失いかけてきたその時、リアが口を開いた。

「すごい……」

 リアが顔を赤らめて賞賛の言葉を口にする。え? そんなによかった?

「こんな激しい曲、初めて聴いたよ」

「ああ、こっちにはロックってないのか」

「ろっくって言うの? 今の曲」

 そうか、この世界は音楽も古いんだな。『デモグラ』のBGMには普通にロックもメタルもあった気がするんだが。

「いつもはオレどんな曲作ってたんだ?」

「えーとねえ、こんなの」

 そしてリアが歌いだしたのは……え、ナニコレ? どっかの民謡か? てか、そもそもこの世界の音楽ってどんななんだろな。もしかしてコードどころか和音もなかったりするのか? とりあえず音階が四七抜きとかじゃなくてよかったわ。

「そっかそっか。お前らってロクな曲聴いてなかったんだな」

「そりゃそうだよ、いつもルイの変な曲ばっか聴かされてたんだから」

「ぐっ……。ところで歌詞はどうだった? 斬新でカッコよかっただろ!」

「うん、あのね、最初のほうの歌詞は陳腐を通り越して、もはや子供のポエムかってレベルだったんだけど……」

「ぐはあぁぁぁっ!?」

 そこまでヒドかったのかよ!? てかコイツひでえぇぇ! そこまで言うか普通!?

「で、でもね」

 急にモジモジしだすリア。

「私の名前が呼ばれると、そのたびになんか顔がほてっちゃって……」

 顔をそらしながらボソボソとしゃべる。あれ、なんかフラグ立ってね?

「なんて言うか、すごく胸に響いちゃった」

 おいおい、なんだこの空気は! なんでコイツこんなに目が潤んでるんだよ? これってもしかしてフラグどころか、もうすでに落ちてね? ヤバい、調子が狂うぞ。

「ま、まあ、気に入ってもらえればいいんだよ」

「うん、ありがとね」

 なんだよ、やたら素直だな! 元がかわいいだけに、笑顔の威力がハンパねえぞ!

「ルイの事、ちょっと見直しちゃったかも」

 ぐうぅぅぅっ!? ダメ押しかよ!? これは惚れてもしかたない流れだぞ? い、いくか? このままいっちまうか?

 などと一人葛藤していると、ふいにリアが大きな声を上げた。

「さーて、そろそろ行きましょうか」

 え? なんだよケロッとしやがって! いくら何でも切り替え早すぎだろ! もしかして今のはオレをからかっただけか? チッ、期待して損したぜ!







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