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1-4 胃、胃が痛む……





 オレたちを乗せた馬車は、昼が近づき人が増え始めた街の中を王城目指してゆっくりと走っていく。ああ、みんな道の端に避けていくよ。なんかすいません……。

 しっかし馬車なんて初めて乗ったけど、思ったよりずい分目線が高いんだな……。地面が遠く感じるぜ。もっとガタゴトいう乗り物かと思ってたんだが、この街の道は結構整備されているせいかそれほどでもないな。ま、ステラのお胸がほどよく揺れるくらいには振動あるよ。

 てかステラもさる事ながら、リアの奴、ずい分と緊張してるんじゃないか……? ヒザをぴったりくっつけて、その上に両手をグッと握って乗っけてるよ。腕なんて、ピーンと伸びちゃってるし。

「リア、お前すっごいガチガチだな」

「は? 違うもん、私緊張なんかしてないもん!」

 神経質と言うか、若干ヒステリックに返すリア。しかし、そこにいつもの覇気はない。

 てか、自分が緊張してるって自覚はあるのね。コイツがあんまりガチガチだから、かえってこっちは緊張が解けちゃったよ。

「ステラは大丈夫?」

「は、はい……。お城なんて初めてなので、凄く緊張します……」

「皆さん、そう緊張しないでください。何、すぐに慣れますよ」

 オレたちの様子を見て、ウェインさんがさわやかスマイルで場をなごませようとする。

「王族や貴族の方々の中には気さくなお方も多いですから。きっとお気軽にお声をかけてくださりますよ」

 おい! それが緊張するってんだよ! 見ろ! 二人とも縮み上がっちゃったじゃねーか! もちろんオレもだよ!

 そんなオレたちの様子を見て、イケメン騎士がさらに声を張り上げる。

「それになんと言っても、皆さんは我が国をお救いくださった英雄なのですから! その武名はもはや上層部のみならず我々の所にまで轟いておりますよ! ですからどーんと胸を張っていてください!」

 ダメを押すんじゃねえ! アンタ少しは空気読めよ!

 てかその虚名、もうそんなに広まってんのかよ! ギュス様、どこをどう説明すればオレたちが国を救ったって話になるんだよ!

「ダメだ……腹痛はらいてぇ……」

「おお、そんなに私の話が痛快でしたか! 喜んでいただけて何よりです!」

 げぇよ! 緊張でトイレ行きたくなってきたんだよ! どう見たってわかるだろ! ヤバい、なんだか意識まで遠のいてきた……。

 向かいの女子二人はと言えば、もう完全にカチンコチンになっちゃってる。ステラはともかく、リアって案外権威に弱かったのね……。てっきり今日みたいな日は「貴族の息子に逆タマだー!」とか言ってはりきるタイプなのかと思ってたけど。




 そんな事を思っているうちに、いよいよ王城が近づいてきた。同じく王城へ向かっているのか、オレたちの前にも一台馬車が走っている。

 さすがに城へと続く大通りはえらく広いが、その分人出も多い。その人込みをかき分けながら、馬車はオレたちが足しげく通う喫茶モンベールの前を通過していく。そういやいつもモンベールで待ち合わせの時に王城は眺めてたけど、これ以上近づいた事はなかったな……。

 そんなどうでもいい事を考えていると、徐々に迫ってくる城の正門。デ、デケえ……。うちの大学の正門より二回りくらい大きいな、多分。

「い、いよいよだな……」

「うん……」

「はい……」

 いつになく言葉少ななオレたち。開け放たれた門をくぐり、城の手前で馬車を降りる。

 周りにはオレたちが乗ってきたのに負けず劣らず立派な馬車がいくつもあり、メチャクチャ高そうな服を着た人たちがうろうろしてる。もしかして、この人たちみんなオレたちの事祝いに来た人たちなの……? ウソだろ、マジかよ……。オレ、ただの詩人なのに……。

「あの、ウェインさん」

「はい、なんでしょう?」

 オレの声色に、やや驚いた様子のウェインさん。ただならぬ気配を察したのか、彼のイケメンフェイスが引き締まる。

「大事な話が、あるんです」

 これだけは、今はっきり言っておかなければならない。早く言わないと、きっと手遅れになる。




「……トイレ、どこっすか?」







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