表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/204

5-9 マジで、ヤバい!





 Aランクプレイヤーにして王国調査隊副隊長などという大層な肩書きをお持ちのイケメン剣士、ギュスターヴの神速の剣技を目の当たりにしてボルテージも最高潮に達する討伐隊の面々。勢いに乗って次々とゾンビを打ち倒していく。

 オレたちはと言うと、ステラとリアが雑草でも刈るかのようにゾンビを片づけてくれるので、オレは結構のん気に先頭の戦いを見物できるんだよな。ちゃんと歌ってるとはいえ、こんなにラクしていいのかね……。ま、気にせず見物見物っと。

 ところで、オレの歌って聞いてる人全員に効果あるのかと思ってたんだけど、そういうわけでもないらしい。オレたちと並んであの弓兵のミーナちゃんが戦ってるんだけど、リアがオレの歌についてミーナちゃんに話しかけても「え~? 別にいつも通りだよ~?」なんて言ってるし。単に歌が聞こえていれば効果があるってわけでもないみたいだ。てか、効果にしても有効範囲にしてもいちいちあいまいだな、オレの歌は。

 しっかし、あのギュスターヴってのはバケモノなのかねえ……。リアの動きも速いと思ってたけど、アイツに至ってはもはやワープしてんじゃないか? ってレベルだし。一太刀浴びせたと思ったら敵の首が二つ三つ飛ぶし。甲冑野郎ももう二十体くらい転がってるし、そろそろ終わりかね……。



 そんな事を思いながらギュスターヴの方を見ていると、霧の向こうから……出てきたよ、美人すぎる幽霊! 思わぬ敵の出現に、前線にも動揺が走る。ああ、あの幽霊の姉ちゃんもあいつらに退治されちゃうのね……。今のうちに目に焼きつけておこうとマッパの女幽霊をガン見するオレだったが、前線の様子がなんだかおかしい。

「な、なんだ!?」

「身体が……重い!?」

 さっきまでバリバリ戦ってたBクラスの人たちの動きが急に鈍る。おいおい、どうしたんだ? 一気に不利になったBクラスのチームにギュスターヴが加勢するが、そのギュスターヴもさっきより明らかに動きが鈍い。

「これは……いったい?」

 当の本人も戸惑っているらしく、仲間を守りながらなんとか踏みとどまっている。が……おいおい、まだまだ向こうから湧いてきやがるぞ、甲冑野郎が!

 ギュスターヴたちとは違う方向に石を投げていたリアも、その騒ぎを耳にして彼らの方を振り向く。

「ちょっと、どうしたの……いやぁぁぁぁああ、オバケぇぇぇぇええぇ!」

 うっせえええっ! すぐそばで大声出すんじゃねえぇぇぇ!

「ちょっと! なんでまたオバケ出るのさ! このお守り全然効いてないじゃん!」

 ヒステリ起こすなよ! だから言っただろ、お守りなんて気休めだって! 応援歌を歌いながら、オレは目で無実を訴える。と、隣のミーナちゃんがギュスターヴ隊の周りを指さした。

「ねえ、あそこ! なんか黒いのがもやもやしてない?」

「やだ、私見ない! ルイが見なよ!」

 いや、自分で見ろよ! って、確かに黒いと言うか、濃い紫のもやもやがギュスターヴたちを取り巻いている。その煙みたいなのを辿ると……あ、やっぱり。あの美人すぎる女幽霊の仕業か。あの煙のせいで動きが鈍ってるのかね? しかし……素人目に見ても、こいつはマズいんじゃないか? ギュスターヴ隊が後退してる影響で、徐々にあの甲冑軍団が迫ってきてるぞ!?

「み、皆さん! ここは一旦後ろに下がってください!」

 幾分慌てた様子で、ギュスターヴがオレたちに後退の指示を出す。いや、後退しろって言われてもよ! ヤバい、ステラの所にも一匹来やがったぞ、甲冑野郎が!

「ねえ! こっちまで来たよ! ねえってば!」

 わかってるよ、そんな事! オレは歌ってるからしゃべれないんだって!

「ってルイ、いつまでも歌ってないで少しはしゃべってよ! アンタ忘れたの? 別に歌わなくても、竪琴だけでも効果は十分でしょ!」

 あ、そう言えばそうだった。さっそくインスト曲に変更してリアをにらみ返す。

「わかってるよ! でも、どうしろって言うんだよ!」

「だから、それを考えるんじゃん!」

 必死に石を投げてステラを援護しながら、リアが金切り声を上げる。いや、そう言われてもよ! そうしてる間にも、最前線はずるずると後退してオレたちに迫ってくる。女幽霊は妖しい微笑を浮かべたまま、ギュスターヴたちへと紫の煙をのばし続けている。いやいや、その脇を抜けてこっちに甲冑野郎が何匹も寄ってきてるぞ! オレたちの方にも甲冑野郎が二体向かってきた。ヤ、ヤバい! 周りの連中が逃げ出す中、その間に割って入ってきたのはステラだった。

「ルイさん! リアさん! ここは私が時間を稼ぎます! お二人は先に後退を!」

 っておい! ステラさん、マジな顔だよ! さすがのリアも、その様子にひどくうろたえる。

「ちょっと、ルイ! ヤバいって! ステラがあんな事言っちゃってる! 完全に死亡フラグだよぉ!」

 だからお前、なんでそういう用語は知ってるんだよ!? それはさておき、ステラに向かって叫ぶ。

「ダメだステラ! 大体、オレが後退したらステラの能力下がっちまうし! そしたらそいつらとも戦えないだろ! 逃げるならステラもいっしょに……」

「それではみんな追いつかれてしまいます! 大丈夫です、私、こう見えて結構強いんですよ?」

「うわぁぁぁあん! あんな事まで言っちゃってぇぇ! どんどんフラグが立ってくよおぉぉぉ!」

 だからお前はうっせぇよ! でもホント、これはなんとかしないと……。

 気づけばステラのすぐ前方には、ギュスターヴたちとあのエロ幽霊が迫ってきている。二人一組で甲冑野郎と戦ってる冒険者もあちこちで見かけるが、明らかにこちらの旗色が悪そうだ。これは、マジでピンチなんじゃないか……?


 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ←よければぜひクリックして投票お願いします! 『詩人』も参加中です!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ