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5-7 お昼くらい、楽しく食おうぜ……






 三十三階を探索した後、昼食タイムとなる。なんて言うか、ホント遠足だな……。

 このフロアはさっきの階とはうってかわって、丈の低い草が一面に生えてゆるやかな丘が続いている。天井も高く明るい。この明るさはどこから来てるんだろうな……。座りやすいポイントを見つけると、そこにみんなで腰を下ろす。今日の弁当はリアがパンになんかしなっとしたサラダ、ステラがマッシュポテトや干し肉とかのサンドイッチか。オレはリンゴとオレンジのジャムをはさんだパンを用意した。それを見たリアがオレの肩をツンツンとつっつく。

「ねえ、おかずがないならこれ食べる?」

「お、いいのか? てか、これなんなんだ?」

「何って、私のオリジナルマリネだよ」

「ああ、マリネなのか、それ」

 そう言うと、玉ねぎとニンジンのスライスを手のひらに少し乗せてもらう。ああ、確かに酢のにおいがするわ……。そのまま口に入れてみる。

「あ、結構うまいじゃん」

「え、ホント?」

「ホントホント。これ、どこで売ってたんだ?」

「売ってないってば。さっき言ったじゃん、私のオリジナルマリネだって」

 やや不機嫌そうに、リアが口をとがらせる。

「あ、そうだっけか。いや、リアって結構料理うまいのな」

「ホントにそう思う?」

「ホントだって」

「えへへ……」

 いやー、まいったなー、とか言いながら、後頭部をかいて照れるリア。なんだコイツ、そんなにメシマズ女扱いされてるとでも思ってたのか?

 そんな事を思っていると、今度はステラが近寄ってきた。

「ルイさん、私のサンドイッチも少しどうですか?」

「お、これもうまそうだな。もらっていいの?」

「ええ、いっぱい作ってきましたから」

「それじゃ遠慮なく……」

 そう言ってサンドイッチを受け取ろうとすると、少しもじもじしながらステラが口を開いた。

「あ、あの……」

「ん、どうした?」

「よければ、その……あ~ん、しますけど……」

「ああ、どうぞどうぞ、あ~んし……て……?」

 言葉の意味を理解し、しばし思考が止まる。あ~ん、だと……? リアが慌てた様子で割って入る。

「ななな、何言ってるのステラ! ダメだよそんな事!」

「ど、どうしてダメなんですか?」

「え、どうしてって、えーと……」

「理由がないなら、別に構いませんよね?」

「えーっと……う~ん……」

 お、ステラが一歩も引かないぞ。てか、この人意外と頑固な所あるからな……。リアもなんだかしどろもどろになってるし。

「いいですね?」

「う、うん……わかった……」

 あ、ついに折れたか。てか、そんなにあ~んしたいのか……? もちろん、オレは嬉しいけどな!

 舌戦を制したステラが、オレに近づいてくる。

「そ、それでは……ルイさん、お口を開けてください」

「お、おう」

「はい、あ~ん……」

 こ、これは恥ずかしい……だか、最高だ! サンドイッチもマッシュポテトと干し肉の塩加減、そして食感が素晴らしい!

「うまい、うまいよステラ! これは店開いてもいいレベルだ!」

「そんな、褒めすぎです……」

「ぶー……」

 オレのお世辞に照れるステラ。そしてあ~んするオレたちを横からジト目で見つめるリア。なんか地面の草をぶちぶち引き抜きだしたし……。そんなにヘソ曲げるなよ……。


 この後、すっかりふて腐れてしまったリアのご機嫌もとりながら、妙な緊張感が漂う昼食タイムは過ぎていった。







 昼食後、三十四階の探索を始めるゾンビ退治のご一行。しばらく探すもやはりゾンビは見つからず、いよいよ三十五階へと向かう。

「うぅ~、三十五階かぁ~」

 沈んだ声でつぶやくリア。

「どうした、怖いのか?」

「だから怖くないってば! ちょっとヤだなって思っただけだよ!」

 言い返してこれるって事は、多少はマシになってきたのかもな。

「でもさ、やっぱりこれだけ大勢いるからどっかに隠れてんじゃない?」

「いや、むしろ三十五階に集結してるかもしれないぜ?」

「ちょっと! ヘンな事言わないでよ!」

 リアがオレの背中を平手で叩く。痛ってえ!

「でも、集合するとなると統率する者が必要になりますから。ゾンビさんたちでは難しいんじゃないでしょうか」

「そーだそーだ! へへーん、ルイ、バッカでー!」

 コイツ腹立つな! 全部ステラの受け売りじゃねーか!

 でも確かにステラの言うとおり、みんなで集まるなんてゾンビにできるわけないか。あいつら脳ミソ腐ってるし。


 洞窟内の階段を下っていると、ステラがオレたちを振り返る。

「ここを抜けると三十五階ですよ」

「つ、ついに来ちゃったね」

「ああ」

 暗がりを抜け、三十五階に足を踏み入れる。目の前に広がるのは――いや、墓場だろコレ! どう見ても洋風の墓石にしか見えない石があちこちに突き立ってんぞ! やたら暗いし! てか、あちこちで燃えてる松明みたいなのはなんなんだよ!

「――!」

 リアが顔面蒼白になって固まってしまう。いや、確かにこれはきっついわ……。

「何コレ! 墓場じゃん! 超暗いし! 霧も濃いし! 絶対出るに決まってるじゃん!」

 パニくったのか、早口でまくし立てるとステラの胸に飛びこむ。くっ、ナチュラルに抱きつきやがって、羨ましいぜ……。オレもオバケ怖いキャラで行くべきだったか?

「もうヤだぁ……」

 ステラの胸に顔をうずめながらベソをかくリア。くっそ、やっぱ羨ましいぜ。ステラがリアの頭をなでながら背中を優しく叩く。なんだか赤ちゃんを寝かしつける母親みたいだな……。

「大丈夫ですよ。ほら、ルイさんのお守りもありますし」

 そう言いながら、ステラが自分のお守りを取り出してリアに見せる。リアも少し落ち着いてきたらしい。

「うん、そうだね……ありがと」

 自分の胸に手を当てながら、リアがステラから離れていく。てか、なんかオレのお守り、エラく効果を期待されてない? そんな大したモンじゃないんだぞ?

「よし、私、がんばる!」

 頬をパンっと叩いて気合を入れるリア。おお、その調子だ。お前が働いてくれないと、その分オレが確実に危険な目にあうからな。よっし、じゃあ探索がんばるか。







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