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5-5 開会式、マジ長い……






 ギュスターヴのあいさつが終わり、再びざわつく冒険者たち。もちろん、オレたちもだ。

「ねーリア、なんでギュスターヴさんほどの人がこんなクエストに参加してるんだろうね?」

 ミーナちゃん、だっけ? 今朝の弓兵のコがこちらに来て、リアに話しかける。

「あー、多分アンジェラが報告したからじゃないかな」

「そうなの?」

「うん。てゆーか、そのオバケに遭遇したのって、私たちなんだよねー」

「ウソ、ホントに出たの?」

 ミーナが少し驚く。このコもオバケ嫌いなのかね?

「そ。だからかなり強く訴えたんだけど、思いのほか効果があったみたいだね……」

 確かにあの甲冑野郎どもは見た目からして強そうだったからな。それにしても、アンジェラの発言ってそんなに影響力あんのかよ。それとも単に副隊長サマがヒマだっただけか?

「以上、ギュスターヴ副隊長のご挨拶でした。えー、それでは続きまして……」

 って、まだ続くのかよ! 早くクエストに行かせてくれよ!

「教会よりフレデリクス司教猊下げいかにお越しいただいておりますので、ここでお言葉をいただきたいと思います。では、猊下を……」

 そう言うと、まとめ役が係に指示を飛ばす。それを聞いて詰所の方へと走っていく係員。と、リアが露骨にイヤそうな声を上げた。

「えー、アイツ来るのー? いいよ、もう行こうよー」

「なんで司教が来るのよ、ねー?」

 リアに同調する弓兵のコ。なんだか、ギュスターヴの時とはエラい違いだな。

「司教って、そんなにイヤなヤツなのか?」

「イヤってモンじゃないよ。いっつも威張りちらしてるしさ。なんでパウロス司祭様じゃなくてアイツが先に司教になるのさ」

「ホントだよ、司祭様はいい人なのにね」

「大体アイツ、司教って言っても司教座一つ任されてないじゃん。名ばかり司教のクセになんでこんな所まで来てんの? ヒマなの?」

「ホントホントー」

 うっわ、ひっでぇ言われようだな……。司教座とかなんなのかよくわからんけど、とりあえずそのなんとかって司教はお飾りみたいなモンって事か。ステラも苦笑してるところを見ると、評判の悪さはホンモノのようだな。

 お、なんか神経質そうなおっさんが出てきたぞ。っておいおい、なんだあの台は? さっきはあんなのなかったぞ? 


 スタンバイが済んだのか、台に上ったおっさんに進行役の人が声をかける。

「それでは猊下、よろしくお願いいたします」

「うむ」

 あ、こりゃダメだわ……。台の上でうなづくその仕草がすでに偉そうだ。てか、あんな台にいちいち上がる時点でどうかと思うんだけど。あれってわざわざ用意させたのか?

 じろりと周りを見下ろすと、おっさんは神経質そうなやや高めの声でしゃべり始めた。

「汝等神の戦士達よ、我等が神のご威光を穢す不浄不逞の輩を滅せんが為ここに集いし勇者達よ、誠に大儀である!」

 はあ? なんだコイツ、いきなり「大儀である」とか何サマなんだよ? オマエはどっかの将軍様かっつーの。

「此度の戦は、我等が神の定め給う理よりはずれ、死してなお現世をさまよう邪悪を打ち滅ぼし、もって神の栄光をこの穢土にもたらさんが為の聖戦である! 故に、神の戦士たる汝等には、必ずや神の御加護と祝福があろう!」

 ヤバい、ヤバすぎる……。何言ってんのかわからん、いや、わかりたくない。教会ってこんなヤバい所だったのか……? なおもゴキゲンな様子で熱弁をふるう司教サマはスルーする事にし、リアたちに話しかける。

「おい、教会の連中ってみんなあんななのかよ?」

「まさか、そんなわけないでしょ。あんなのばっかだったら、教会なんてとっくにつぶれてるよ」

「あの方はちょっと特別なんです」

「パウロス司祭様の説法はあんなにありがたいお話なのにねー」

 なるほど、アイツがイッちゃってるだけなのか。てか、さっきから司祭様人気あるな。イケメンなのか?


 司教サマのありがた~い説法は、まだまだ終わりそうにない。









 かれこれ十分ほども経っただろうか。我らが司教サマは、いまだゴキゲンな様子で話し続けている。弓兵のミーナちゃんもパーティーの所へ戻り、オレたちはいよいよ本格的にヒマに悩まされてる所だ。

「そもそも神の愛とは、我等人間のそれとは性質を異とし……」

 てか、話がもうゾンビ退治と関係ねえじゃねーか! 校長先生の話よりタチりぃわ!

「あー、早く終わんないかなー」

 あーあ、とうとうリアが足で地面に絵を描きはじめちゃったよ……。コイツ、ヒマになるとすぐにこれだよな……。

 てか、その四本足の生き物(?)は一体何なんだ? オレもヒマすぎるんで、勇気を出して聞いてみる。

「なあリア、それ、何描いてんだ?」

 リアが不満げに眉をひそめる。

「何って、見ればわかるでしょ」

 いや、わかんないから聞いてんだけど。てか、コイツはまさか本気で、これがなんなのか他人に通じると思ってんのか……?

「ステラはこれ何かわかるか?」

「ええと……かわいらしいワニさんですね」

「え!?」

 ステラの答えに、驚愕の表情を浮かべるリア。文字通り目が点になる。

「うそ、これのどこがワニなのさ!?」

「ち、違うんですか? す、すみません」

 リアの勢いに、申し訳なさそうにステラが謝る。いや、そりゃそんな絵じゃムリもないだろうによ。

「てか、オレもワニかと思ってたんだけど」

「えええ!? ちょっと、二人ともおかしいよ!」

「すみません……」

 てか、コイツには自分の感性がおかしいって発想はないのかね……。

「だったらそこの人に聞いてみろよ」

 そう言いながら、リアの左斜め前の槍兵の背中を指さす。

「あ、そうか! すいませ~ん、この絵、何だと思いますか?」

「え? あ、うーん……ギガントアメーバ?」

「ええええ!?」

 目に見えてショックを受けるリア。これはさすがに現実を見たか?

「うそ……そんな……」

「え、え? 違いました? なんかすいません……」

「いやいや! こっちこそコイツが変な事聞いてすいませんっス!」

「ど、どうかお気になさらずに」

「え? あ、どうも……」

 頭をかきながら、槍兵の兄ちゃんが頭を下げる。いやなんていうか、ホントすいません……。

「ほら、わかったろ? オレらのが普通なんだって」

「がーん、がーん……」

 あらら。よっぽどショックだったのか、擬態語を口で言っちゃってるよ、コイツ……。

「あ、あの、それで答えはなんだったんですか?」

 必死にフォローしようとするステラ。いや、それは傷口を大きく広げてしまう気が……。しばしの沈黙の後、リアが口を開く。

「……ワンちゃん」

「……」

「……」

 ごめん、なんにも言えない……。言葉って、肝心な時に全然役に立たないんだな……。時が解決してくれるのをひたすら待つことにするわ……。





 オレたちを再び沈黙が、それもとびきり重いのが支配してからさらに十分。ようやく司教サマのありがたい説法が終わり、ゾンビ退治のクエストが始まった。






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