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5-4 王国調査隊の副隊長






 まさかの開会式スタートとなったゾンビ討伐クエスト。圧倒的ヒマな予感に、オレたちの雑談も止まらない。

「大体よお、こういうのって軍とかがメインでやるモンなんじゃねえの?」

「そりゃあ、ギルドは内務省の管轄だからねー」

「軍が動く場合は普通のギルドには話が回ってきませんよね」

「ああ、いろいろあんのな」

 いわゆる縦割り行政ってヤツか? よくわからんけど。

「その点、中央ギルドは有利なんだよね」

「え、なんで?」

「ほら、あそこはそもそも軍が気軽に兵隊雇うためのギルドって側面があるからさ」

「そうですね。中央の時は軍がらみの求人が増えたと思ったら、数日後に軍が動くという事もよくありました」

「ギルドからの派遣だとクエスト終わったら契約終わりだから、コストも安くあがるんだよね」

 それ、完全に現実世界の派遣や日雇いバイトじゃねえか……。まあ、確かに今日のクエストのノリも日雇いのバイトっぽいもんなあ。



 そんな事を話していると、突然後ろの方から歓声が上がった。

「おおおおおお!」

「きたあああああ!」

 な、なんだ? すげー盛り上がってんだけど? そう思ってると、騒ぎの方を見たリアも絶叫した。

「わああああ! ギュスターヴ! ホンモノ! ホンモノだー!」

 リアの視線を追うと、詰所から出てきた一団がオレたちの脇を通りすぎる所だった。あの先頭のイケメンがギュスターヴってヤツか。茶髪でちょい涼しげな髪型しやがって……きっとアイツはオレらの敵だ。その割には野郎どもも歓声に沸いてるけど。

「えー、それではここで、王国調査隊のギュスターヴ副隊長からお言葉をいただきたいと思います」

 前の方でなんかずっとしゃべってたまとめ役が、イケメンに場所を譲る。かわってイケメンが口を開いた。

「今回皆さんの支援を担当する事になりました、調査隊副隊長のギュスターヴです。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします」

 うおおおおおおっ! ともはや怒号に近い歓声が沸き起こる。てかコイツ、絶対オレらの敵だ! こういうキャラはもっと高飛車でクッソ偉そうな態度取って、思いっきり大衆の反感買うべきだろ! なにこの好青年ぶり? 憎みづらいところがまた憎らしいぜ!

 盛り上がる冒険者たちを、右手を上げて制するイケメン野郎。こういう所がいちいちキザったらしいな。 

「今回のクエストは皆さんであれば安全にクリアできるものと思いますが、一部で未確認のモンスターに遭遇したという情報も我々の耳に届いております。ですが万が一不測の事態が起ころうとも、私をはじめとする各ギルドの精鋭が必ず皆さんをお守りいたします。どうぞ安心してクエストに望んでください」

 ちっ、ケチのつけようがないあいさつだぜ。「オマエらみたいなクズどもが、いちいちオレの手を煩わせるな」とか言ってくれれば、何時間でもデイスりまくれるっていうのによ。

「カッコいい……」

 あーあ、リアまでまいっちゃってるよ。実にチョろいというか、コイツ、今日は別の意味で使いモンになるのか……? お、そろそろ話が終わりそうだ。

「それでは皆さん、良きクエストを!」

 剣を抜き放ち、天高く突き立てながらシメのセリフを言う。それに合わせて周りの連中も次々と武器を空に掲げた。

「うおおおおお!」

「やってやるぜえええええ!」

「ギュスターヴ様ぁぁぁぁ!」

「こっち向いてぇぇ!」

「ギュス様ぁ――――ぁぁっ!」

「私を食べてえぇぇぇぇ!」

 なんか全然関係ない声も混ざってないか? その場を後にする副隊長どのに、拍手のかわりにガチャガチャと武器をぶつける音が送られた。

「すげー人気だな……」

「そりゃそーだよ、カッコいいし」

「人格者としても知られてますからね、子供たちにも人気ですよ」

 まあ、そりゃそうだろうな……。野郎どもも、あらゆる面で格が違いすぎてもう腹も立たないってレベルか……。

 人ってなんで二物も三物も天から与えられるんだろうな。一つくらいオレに分けてくれよ。








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