5-3 アイツ、マジでムカつく!
詰所を出ると、もうすでに結構な人数が集まっていた。コイツらがゾンビ退治のご一行か……。全員武装してるから、メチャクチャ物騒ったらないわ。オレらもとりあえず後ろの方へ並ぶ。
「ギュスターヴさん、いないね」
「後からいらっしゃるのではないでしょうか」
「あ、テンプルギルドの僧兵さん結構来てるね」
「ゾンビさんに噛まれたら大変ですからね」
この二人、仲いいよなあ。その様子をぼーっと見ていると、突如男の声が割りこんできた。
「よお、ステラじゃねえか」
ん? なんだコイツ? 見たところ剣士みたいだが、なんだかゴロツキ臭ハンパねえ野郎だな……。ステラの知り合いか?
「ガストンさん……」
「お前、パーティー組めたのかよ。お、そっちの姉ちゃんもカワいいじゃねえの」
なんだコイツ……なんか無性にイラッとくるぞ。
「ちょっと、アンタなんなのさ」
「おおっと、そんな怖い顔すんなって。なんなら二人まとめて相手してやってもいいぜ……もちろん夜の相手もな! ウヒャヒャヒャ!」
ダメだコイツ、クッソうぜえ!
「おい! テメェなんなんだよ!」
「あぁ? なんだクソガキ? 殺すぞ?」
ヤローがオレに思いっきりガンを飛ばす。こ、怖ええ……。デカいし金髪刈り上げてるしやたらデコ広いし! オレもタンカを切ったはいいものの、あまりの怖さにビビって固まってしまう。
そんなオレを押しのけ、怒り心頭な様子でリアが何か言おうとしたその時、いつもより低いステラの声が聞こえてきた。
「ルイさんに手を出したら、許しませんよ?」
その声と迫力に、男が明らかにたじろぐ。ケッ、とオレを一瞥すると、ステラの耳元に臭そうな口を開いてささやいた。
「そんなヒョロ男とつるんでねえでオレと組めよ。夜もたっぷりかわいがってやるからよ」
下品極まりないセリフを吐いて、クソ野郎は向こうへ行ってしまった。くっそ、アイツなんだったんだよ……。
ガラの悪い金髪刈り上げ野郎にからまれてしまったステラ。野郎が去るや、リアが怒りの声を上げる。
「もー、なんなのさアイツ! マジでムカつくー!」
「す、すみません……」
「なんでステラが謝るのさ! アイツ、知り合いなの?」
リアの剣幕に、ステラが申し訳なさそうに説明する。
「あの人、ガストンさんは中央ギルドのプレイヤーで、度々ああやってお誘いを受けてたんです」
「お誘いって、まさか、よ、夜の誘いってヤツ!?」
「え、ええ、それもありましたけど……」
「なあにぃぃぃっ!?」
オレとリアは思わず絶叫してしまった。周りの人が何事かとこちらを振り向く。
「あ、いえ、もちろん断ってますよ?」
「そ、そうだよね」
「野郎、ぶっ殺す……」
しかし、やっぱステラに声かけるヤツもいたんだな。それがあの最低クソ野郎だとは……。ステラもホイホイくっついていかなくてよかったぜ。
「あのさ、ああいうヤツに、その、襲われたりって事はなかったの?」
「はい、ガストンさんには一度襲われた事があるんですけど……」
「ええええっ!?」
「殺す! 絶対殺す!」
てか、ありえねーだろ! そういう事ホントに実行に移すバカがいんのかよ! 許されねーよ!
「さすがにこれはと思って応戦したら、倒れたまま動かなくなって……」
「ああ……」
「なるほど……」
返り討ちでフルボッコか……。だからステラさん、アンタどんだけ強いんだよ。
「あれ以来、私への風当たりが強くなったんです」
「ま、それはそいつの自業自得だね」
「ざっまあああぁぁぁあ! 返り討ちにあって逆ギレしてんじゃねーよ!」
へっ、スゴんでおいてそのザマなのかよ! おとといきやがれ!
「弱えぇクセに強ぶってんじゃねーぞ、この口先野郎!」
「ま、それに関してはルイも似たようなモンだけどね」
「おい! なんでそこでオレが出てくるんだよ!」
リアの不意打ちにキレるオレを見て、ふふっ、とステラが微笑む。よかった、少しは気が紛れたか? さて、オレらがヒートアップしてる間に人も集まってきたな。お、あれは今朝の弓兵のお姉ちゃんの所のパーティーか。やっぱウチのギルドのヤツが多い気がするわ。
「えー、諸君、静粛にー」
しばらくして、クエストのまとめ役らしき人物が前に出る。周りを見れば、係の人かなんかがパーティーの出欠を取っていた。なんて言うか、学校や学生とかのイベントみたいなノリだな……。
「それでは、内務省・教会共催、ゾンビ討伐クエストの開会式を始めたいと思います」
てか開会式あんのかよ! 完全に学校行事じゃねーか!




