5-2 クエストの下準備
ギルドの受付。ここもやっぱりいつもより混んでる気がする。とりあえず受付に行ってアンジェラとあいさつを交わすと、さっそくステラがマントを脱ぎ始めた。キレイな鎖骨、次いで大きな二つのスイカが露わになる。おお……エロい、エロすぎる!
マントを脱ぎビキニアーマー姿になったステラが、アンジェラに今脱いだばかりのマントを手渡す。
「それでは、これをお願いします」
「はい。それじゃお預かりしておくわね」
マントを受け取ると、アンジェラが受付の奥へ一旦引っ込む。戻ってきた彼女の手のひらの上には、何やら豆粒みたいなものが六つ乗っかっていた。
ステラの横から顔を出したリアが、手のひらの上の物体を不思議そうに覗きこむ。
「ねえ、それなーに?」
「国から支給された鼻栓よ。ニオイが凄いでしょうから、忘れずにね」
鼻栓……。なんか出来損ないのコルクか何かにしか見えないんだが。まあしかし、この前は風が吹いただけで鼻が曲がりそうになったし、こんなんでもありがたいか……。
「一応聞くけどよ」
「何かしら?」
「これ、使用済みじゃないよな?」
「ちょっ、ヘンな事言わないでよ、想像しちゃったじゃん」
顔を歪めたリアがオレを小突く。痛てえっつうの。
「もう、さすがに新品よ。安心して」
苦笑しながらアンジェラが言う。そりゃそうだよな。
「参加者は詰所の前で現地集合よ。係の人がいるらしいから、行けばわかると思うわ」
「了解。他には何かあるかな?」
「そうね、これも持っていく?」
そう言うとアンジェラは、手ぬぐいを三つ取り出した。ああ、それで汚れを取れって事か。そう言えば、さっきミーナちゃんも服が汚れるからどうのとか言ってたな。
「おお~、さっすがアンジェラ、気が利くね」
「ステラちゃんもどうぞ」
「ありがとうございます」
「ルイ君も念のため持っておく?」
「ああ、サンキュ」
オレもアンジェラから手ぬぐいを受け取り、懐にしまう。
「詳しい説明は現地であるはずよ。ゲートは三十一階行きを使いなさい。気をつけてね」
「おっけーおっけー。それじゃ行ってくるね」
ひらひらと手を振ってゲートへ向かうリア。オレたちもあいさつを済ませてリアの後を追う。そうだ、忘れないうちに、っと。
「おーい、ステラ」
「はい、なんでしょう」
「これ、お守り。幽霊から身を守ってくれるんよ。ステラにもあげるわ」
「あ……ありがとうございます」
お守りを受け取ったステラが、物珍しそうに目の前につまみ上げる。やっぱこっちの世界にはお守りってないんだな。
「こんな、いただいていいんですか?」
「いいっていいって。リアにもあげたし」
「ほーら、おそろいだよー」
リアが胸元からお守りを取り出す。だから、その仕草エロいって。
「どうも、ありがとうございます……」
頬を染めながら、遠慮がちにステラがお礼を言う。ヤバい、かわいい。やっぱ作ってよかったわ。
しっかしリアといいステラといい、なんでお守りくらいでそんなに喜ぶのかねえ……。あ、そっか。女ってスピリチュアルな物に弱いもんな。なるほど、リアがやたら喜んでたのもそのせいか……。
そんな事を考えながら、オレたちは三十一階へのゲートへと向かった。
ゲートを抜け、ギルドから三十一階の詰所へ。広間に出ると、見知った面々がテーブルを囲んで談笑していた。
「お、お前ら、今日もクエストか」
「今日はゾンビ討伐があるみたいだぜ」
声をかけてくるおっさん連中に、リアが答える。
「知ってるよ。てゆーか、私たちも参加するし」
それを聞いて、詰所の連中がにわかにざわつき始めた。まあ、こいつらはこの前のリアを見てるわけだし、当然の反応だわな……。
「え……おい、お前大丈夫なのか?」
「この前あんなに泣いて……」
「泣いてない!」
連中のセリフにかぶせるように大声を上げるリアに、部屋が静まり返る。
「ま、まあ、それならいいんだけどな」
「ちぃーと心配だったからよ」
逆鱗に触れたと思ったのか、顔を強ばらせながらも空気を読む男たち。
「ステラちゃん、リアの事よろしくな」
「は、はい」
まあ、この前がこの前だったからな……。コイツらもコイツらなりに心配してんだろ。
「それじゃ、行ってくるからね」
「おう、気をつけてな」
「兄ちゃんもがんばれよ」
なんかいかにもとってつけた風だった気もするが、その言葉ありがたく受け取っておくよ。さて、今日もがんばらないとな。




